イオン濃度計測装置

2024.08.08 By 静岡大学

電気・電子工学

技術概要

ISFET型pHセンサにおいて、ゲート電極をストライプ形状とし、電界方向を溶液⇒センサーに制御することで、イオン感応膜にOHーが浸透することによるドリフトを抑制し、土壌pHの連続計測を可能とする。

用途・応用

土壌pH計測

背景

水素イオン指数(以下「pH」と呼ぶ)は、農業分野及び水質検査分野において重要な
物理量である。pHを計測する手段として、リトマス試験紙を用いる手段、ガラス電極を
用 い る 手 段 及 び イ オ ン 選 択 性 電 界 効 果 型 ト ラ ン ジ ス タ ( Ion Sensitive Field Effect Tra
nsistor: ISFET) を 用 い る 手 段 が 知 ら れ て い る 。 例 え ば 、 非 特 許 文 献 1 は 、 I S F E T に
関する技術を開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】

【 非 特 許 文 献 1 】 タ ダ ユ キ マ ツ オ 、 マ サ ヨ シ エ サ シ ( TADAYUKI MATSUO, MASAYOSHI ESA
SHI) 、 「 ISFETの 製 造 方 法 」 ( METHODS OF ISFET FABRICATION) 、 セ ン サ ー ・ ア ン ド ・ ア
ク チ ュ エ ー タ ー ズ ( Sensors and Actuators) 、 オ ラ ン ダ ( Netherlands) 、 エ ル ゼ ビ ア
セ コ イ ア エ ス ・ エ ー ( Elsevier Sequoia S.A.) 、 1981年 、 pp.77-96。
【 非 特 許 文 献 2 】 シ ャ フ リ ヤ ー ル ヤ マ ス 、 ス コ ッ ト コ リ ン 、 ロ ー ズ マ リ ー エ ル ス ミ ス
( Shahriar Jamasb, Scott Collins, Rosemary L. Smith) 、 「 pH ISFETに お け る ド リ フ
ト の 物 理 モ デ ル 」 ( A Physical model for drift in pH ISFETs) 、 セ ン サ ー ・ ア ン ド ・
ア ク チ ュ エ ー タ ー ズ ( Sensors and Actuators) 、 1998年 、 pp.146-155。

課題

 例えば、農業分野においては、作物ごとに適した土壌のpHの値が存在することが知ら
れている。そこで、土壌などの細かな粒子が混在する対象物のpHを長期間に亘って連続
的に計測する技術が望まれている。リトマス試験紙を用いる計測手段は、連続的な計測に
は不向きである。ガラス電極を用いる手段は、ガラス電極と比較電極とを有する。比較電
極は、被計測液と電極との電気的接続を確保するための液落部を有する。この液落部は、
詰まりやすい。非特許文献2は、ISFETの出力が経時的な特性変動(ドリフト)を含
むことを開示する。従って、いずれの手段においても、イオン濃度に応じた信号を長期間
に亘って連続的に安定して得ることが難しかった。

 本発明は、イオン濃度を長期間に亘って連続的に安定して得ることが可能なイオン濃度
計測装置を提供する。

手段

 本発明の一形態のイオン濃度計測装置は、計測イオンと非計測イオンとを含む計測対象
に設置されて、計測イオンの濃度を得る。イオン濃度計測装置は、計測対象の電圧を制御
する計測対象電源と、計測イオンを選択的に捕捉して、捕捉した計測イオンの数に対応す
る電圧を生じさせる計測イオン感応膜を含む計測センサ部と、計測イオン感応膜の電圧を
制御する計測膜電源と、計測対象電源及び計測膜電源のそれぞれから出力される電圧の大
きさを制御する電源制御部と、を備える。

 このイオン濃度計測装置では、計測対象の計測対象電圧は計測対象電源から与えられる電圧に基づく。計測イオン感応膜の電圧は、捕捉した計測イオンに対応する電圧と計測膜
電源から与えられる計測膜電圧とに基づく。電源制御部は、計測対象電源が出力する電圧
と計測膜電源が出力する電圧との関係を制御する。例えば、電源制御部が計測対象電源及
び計測膜電源を制御することにより、計測対象電圧に対する計測膜電圧の極性を非計測イ
オンの極性と同じにすることができる。また、電源制御部の制御によれば、計測対象電圧
と計測膜電圧との差分を小さくすることもできる。このような計測対象電圧と計測膜電圧
との関係によれば、非計測イオンを計測イオン感応膜に引き寄せることがない。その結果
、非計測イオンが計測イオン感応膜に作用することで生じる計測イオン選択感応膜の出力
におけるドリフトを抑制することができる。従って、イオン濃度計測装置は、イオン濃度
に応じた信号を長期間に亘って連続的に安定して得ることができる。

 一形態において、イオン濃度計測装置は、計測膜電源に接続され、計測イオン感応膜に
埋め込まれた計測膜電極をさらに備えてもよい。計測イオン感応膜の内部には、電界が生
じる。この構成によれば、当該電界の勾配を大きくすることができる。電界の勾配が大き
くなると、非計測イオンが計測イオン感応膜により近づきにくくなる。その結果、非計測
イオンに起因するイオン選択性電界効果型トランジスタの出力が含むドリフトをさらに抑
制することができる。

 一形態において、計測膜電極は、複数の電極リッジを含んでもよい。この構成によれば
、非計測イオンの計測イオン感応膜への浸潤が抑制される。さらに、この構成によれば、
イオン濃度を計測することができる。

 一形態において、センサ部は、基板と、基板上に設けられた絶縁膜と、絶縁膜上に設け
られた計測イオン感応膜と、を有するイオン選択性電界効果型トランジスタであってもよ
い。この構成によれば、イオン濃度の変化を好適に捉えることができる。

 一形態において、電極リッジは、基板に形成されたソースとドレインとの間に流れる電
流の方向と交差する方向に延びると共に、電流の方向に沿って互いに離間してもよい。こ
の構成によれば、計測イオン感応膜が生じる電位差を好適に捉えることができる。

 一形態において、センサ部は、基板と、基板上に設けられた絶縁膜と、絶縁膜上に設け
られた計測イオン感応膜と、を有するイオン選択性電界効果型トランジスタであり、基板
の電圧を制御する基板電源をさらに備えてもよい。また、電源制御部は、基板電源を制御
してもよい。この構成によれば、計測対象電圧と計測膜電圧との関係を非計測イオンの計
測イオン感応膜への浸潤を抑制し得る関係に設定できる。さらに、イオン選択性電界効果
型トランジスタの閾値制御を行うことができる。

 一形態において、電源制御部は、非計測イオンの極性が負であるときに、計測イオン感
応膜の電圧が計測対象の電圧よりも小さくなるように、計測対象電源及び計測膜電源の少
なくとも一方を制御してもよい。この構成によれば、極性が負である非計測イオンに起因
するイオン選択性電界効果型トランジスタの出力が含むドリフトを抑制することができる
。

 一形態において、電源制御部は、非計測イオンの極性が正であるときに、計測イオン感
応膜の電圧が計測対象の電圧よりも大きくなるように、計測対象電源及び計測膜電源の少
なくとも一方を制御してもよい。この構成によれば、極性が正である非計測イオンに起因
するイオン選択性電界効果型トランジスタの出力が含むドリフトを抑制することができる
。

 一形態において、電源制御部は、計測対象の電圧と計測イオン感応膜の電圧との差分が小さくなるように、計測対象電源及び計測膜電源の少なくとも一方を制御することにより
、計測イオン感応膜への非計測イオンの浸潤を抑制する抑制動作と、計測対象の電圧と計
測イオン感応膜の電圧とが互いに異なる電位となるように、計測対象電源及び計測膜電源
の少なくとも一方を制御することにより、計測センサ部より捕捉された計測イオンの数に
対応する電圧を得る計測動作と、を繰り返し行ってもよい。この構成によれば、極性が正
又は負である非計測イオンに起因するイオン選択性電界効果型トランジスタの出力が含む
ドリフトを抑制することができる。

 一形態におけるイオン濃度計測装置は、計測イオンを選択的に捕捉して、捕捉した計測
イオンの数に対応する電圧を生じさせる補正イオン感応膜を含む補正センサ部と、補正イ
オン感応膜の電圧を制御する補正膜電源と、をさらに備え、電源制御部は、計測対象の電
圧と計測イオン感応膜の電圧との差分が小さくなるように、計測対象電源及び計測膜電源
の少なくとも一方を制御することにより、計測イオン感応膜への非計測イオンの浸潤を抑
制する第1の抑制動作と、計測対象の電圧と計測イオン感応膜の電圧とが互いに異なる電
位となるように、計測対象電源及び計測膜電源の少なくとも一方を制御することにより、
計測センサ部より捕捉された計測イオンの数に対応する電圧を得る第1の計測動作と、を
繰り返し行い、計測対象の電圧と補正イオン感応膜の電圧との差分が小さくなるように、
計測対象電源及び補正膜電源の少なくとも一方を制御することにより、補正イオン感応膜
への非計測イオンの浸潤を抑制する第2の抑制動作と、計測対象の電圧と補正イオン感応
膜の電圧とが互いに異なる電位となるように、計測対象電源及び補正膜電源の少なくとも
一方を制御することにより、補正センサ部より計測イオンの数に対応する電圧を得る第2
の計測動作と、を繰り返し行い、第2の計測動作は、第1の計測動作がn回(nは2以上
の整数)実行されるごとに行われてもよい。

 この構成によれば、補正センサ部は、第2の計測動作を第1の計測動作がn回(nは2
以上の整数)実行されるごとに行う。つまり、第2の計測動作を行わない期間は、第2の
抑制動作を行っている。そうすると、補正センサ部は、計測センサ部と比べて、抑制動作
を行う時間が長くなる。従って、補正センサ部によれば、ドリフトの影響がより抑制され
たデータを得ることができる。一方、計測センサ部は、補正センサ部よりも計測動作の回
数が多いので、補正センサ部と比べてより多くのデータを得ることができる。しかし、計
測動作の回数が増加すると、ドリフトの影響を含んでしまう。そこで、上記の構成では、
ドリフトの影響を含むがより多くの計測データが得られる計測センサ部の出力を、ドリフ
トの影響が小さい計測データが得られる補正センサ部の出力を使って補正することが可能
である。従って、長期間に亘って、ドリフトの影響が抑制された多数の計測データを得る
ことができる。 

効果

本発明によれば、イオン濃度を長期間に亘って連続的に安定して得ることが可能なイオ
ン濃度計測装置が提供される。

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特許情報

WO2019/230917

JPB 007391382-000000