有機ー無機ハイブリッド型紫外線光検出器【次世代PET応用へ向けた技術シーズ】

2022.09.16 By 鳥取大学 工学研究科

電気・電子工学

技術概要

紫外線の高感度光検出が可能で、集積化により撮像素子にも応用可能です。

用途・応用

紫外線の高感度光検出

背景

 <有機-無機半導体のハイブリッド構成での受光素子の従来技術>
 有機半導体薄膜によるEL発光素子の進展に伴い、有機半導体薄膜の合成や薄膜形成技術が高度化してきている。この技術背景には、有機半導体薄膜でのホール輸送型または電子輸送型の伝導型制御が着実に進展していることがあげられる。なお、ホール輸送型の有機 半 導 体 薄 膜 を 「 p*型 」 、 電 子 輸 送 型 の 有 機 半 導 体 薄 膜 を 「 n*型」と記載するものとする。

 有機-無機ハイブリッド構造の光起電力型の光電変換素子開発では、有機太陽電池や全有機半導体薄膜による受光素子の研究も進展してきている。一方、有機-無機ハイブリッド接合型の光電変換素子の研究も基礎研究段階ではあるが着実な進展を見せている。これら従来の有機-無機半導体複合素子においては、有機半導体薄膜の役割は、半導体機能よりは、透明な有機導電薄膜として利用され、無機半導体とのショットキー接合が多く使用されている。

 つまり有機-無機複合素子では、有機薄膜の役割は窓層としての優れた透過性と無機半導体との良好なショットキー接合の役割を果たしている。実際、近年、紫外—可視域で透明な有機導電性薄膜とワイドギャップ化合物半導体との接触による良好なショットキー接触 ( 整 流 性 ) が 見 い だ さ れ て お り 、 こ れ を 利 用 し た ZnOな ど の 有 機 半 導 体 無 機 ワ イ ド ギャップ半導体のショットキー接合型・紫外受光素子も東北大学の研究グループなどから提案されている。

 上記の有機-無機半導体のショットキー接合を原理として動作させる半導体受光素子は、 吸 収 損 失 の 大 き い 無 機 半 導 体 窓 層 、 例 え ば p+窓層を吸収損失の少ない有機半導体薄膜で置き換え、外部からのバイアス印加で形成されるショットキー接合界面に形成される高電界・空乏層領域を利用して動作させるものである。

 言い換えれば、今までの有機-無機ハイブリッドでの受光素子は、通常の金属—半導体接触でのショットキー接合を透明な有機・薄膜に置き換えたショットキー型受光素子ということができる。

 現在までに提案されている有機-無機半導体によるショットキー接合型受光素子の問題点は、電流の信号利得Gが発生しないことである。つまり、従来の無機半導体で構成してい る p‑i ‑n型 受 光 素 子 な ど と 同 様 に 、 シ ョ ッ ト キ ー 接 合 型 の 有 機 - 無 機 複 合 型 受 光 素 子 の受光感度を支配する外部量子効率η e xの限界値は、有機窓層の吸収や反射損失を完全に制御してもη e x<100%であり、この制限のために飛躍的な高感度化に限界があった。 

 <信号利得を有する従来の半導体受光素子 原理と課題>
 受光感度の飛躍的な向上には、量子効率の上限である100%を超える信号増倍型の受光 素 子 が 要 求 さ れ る が 、 こ の 信 号 利 得 G を 発 現 す る 光 起 電 力 型 の 半 導 体 受 光 素 子 に は 、 Si 、 Geな ど の 無 機 半 導 体 で 構 成 し た p‑n‑p型 、 あ る い は n‑p‑n型 の フ ォ ト ト ラ ン ジ ス タ 素 子や雪崩増倍型のAPD素子がある。

 Si な ど に よ る フ ォ ト ト ラ ン ジ ス タ 型 の 受 光 ダ イ オ ー ド の 接 合 構 造 は 、 p‑n‑p接 合 あ る いは n‑p‑n接 合 で あ る 。 そ の 動 作 原 理 は 、 n‑p‑n型 で は 、 素 子 外 部 か ら 入 射 し た 光 に よ り ベ ース領域に微小な少数キャリアである電子が注入され、これらの電子が拡散効果によりベース層からエミッタ側へ流入し、それと同時に、増倍された正孔電流がエミッタからベースに流入し、ベース層を拡散しながら通過し、コレクタへ向かう大きな電流を生じるこ と となっている。所謂、バイポーラトランジスタの電流増倍動作を利用するものである。

 し か し 、 こ れ ら の Si や Geな ど の フ ォ ト ト ラ ン ジ ス タ 型 の 受 光 素 子 は 、 信 号 利 得 G は 発生するが、最大の欠点は、動作速度が遅いことである。また、暗電流が大きく、高速応答で の S / N 比 が 小 さ い な ど の 欠 点 も あ る 。 素 子 応 答 速 度 が p‑i ‑nや シ ョ ッ ト キ ー 型 と 比 較して極めて遅いことは、フォトトランジスタ素子の動作メカニズムに起因しており、本質的な欠点となっており、それらの応用は狭い範囲に限定されている。

 周 知 の よ う に 、 例 え ば n‑p‑n型 フ ォ ト ト ラ ン ジ ス タ の 応 答 速 度 を 決 定 す る 最 大 の 要 因 は、光による励起によってベース層で発生した電子などのキャリアがエミッタ層へ移動する移動速度や、また、それが増倍され、エミッタ層からベース層を通過してコレクタ層へ流入する正孔の移動速度が、ベース層での拡散速度で限定されることによる。この問題を少しでも低減するためにベース層を、極力、薄く設計したり、また不純物濃度に勾配をつけたりするなどの工夫がされているが、それらの改良においても数MHz程度が限界点とされている。また、前記したが、受光素子のS/Nを支配する暗電流が大きいという課題も克服されていない。

 <APD型の半導体受光素子>
信 号 利 得 を 発 現 す る も う 一 つ の 光 起 電 力 型 の 半 導 体 受 光 素 子 と し て 、 Si ,Geな ど の APD素 子 が あ る 。 こ の 素 子 で は 200V 以 上 の 直 流 バ イ ア ス を 印 加 し 、 光 電 変 換 層 の 電 界 強 度 をア バ ラ ン シ ェ 増 倍 が 生 じ る 電 界 強 度 ( > 106/cm) ま で 高 め 、 光 電 流 信 号 を ア バ ラ ン シ ェ 増倍させることにより2-3桁増倍して動作させている。しかし、この増倍機能を有するこの A P D 素 子 の 課 題 は 、 数 V - 数 10V で 動 作 さ せ る p‑i ‑n素 子 や シ ョ ッ ト キ ー 素 子 と 比 較して、高い動作電圧であること、またAPD素子の製作工程で、放電や暗電流を阻止するための、埋め込み型ガードリングの形成など複雑なプロセスが必要であり、素子の集積化が容易でなく、コストも高いため、APD素子の応用範囲は光通信システムの一部や科学光計測分野などの特殊な用途に限定されている。

 こ の よ う に 説 明 し て き た よ う に p‑i ‑n構 造 、 シ ョ ッ ト キ ー 構 造 、 A P D 構 造 、 お よ び フォトトランジスタなどの素子はそれぞれに長所と短所を持ち、それぞれの特性の限界値に向けて設計・製作されている。信号利得Gを有する半導体受光素子の課題は、信号利得Gを低減させず、且つ高速応答性、集積性、低コスト性などを可能にする新しい素子の開発であり、その一つが本発明の有機-無機ハイブリッド接合型の半導体受光素子である。

課題

 本 発 明 の 課 題 は 、 信 号 利 得 G を 有 し か つ 、 p‑i ‑nや シ ョ ッ ト キ ー 型 の よ う な 優 れ た 応 答性と低い暗電流性を備えた可視-紫外光波帯の高感度の有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子を提供することである。

手段

 本発明の有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子では、基本接合構造を、素子上部か ら 、 ホ ー ル の エ ミ ッ タ 層 兼 窓 層 と し て 機 能 す る 正 孔 輸 送 型 の 有 機 半 導 体 薄 膜 で あ る p*型有機半導体薄膜と、低キャリア濃度且つ高抵抗の無機半導体層であるi型無機半導体光電変 換 層 と 、 p型 無 機 半 導 体 コ レ ク タ 層 と か ら な る p*‑i ‑p対 称 接 合 構 造 と し て 、 数 V か ら 数十Vの直流あるいは交流のバイアス電圧を印加することにより、光電流の信号利得を発現することとした。

効果

 本発明によれば、信号利得Gを有し、かつ優れた応答性と低い暗電流性を備えた可視-紫外光波帯の高感度の有機-無機ハイブリッド接合型光電変換素子を提供することができる 。

問い合わせ・詳細資料閲覧

特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。

本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。

特許情報

特許第5688646号

JPB 005688646-000000