磁気を使って細胞を任意形状に配置する

2022.08.17 By 信州大学

バイオ

技術概要

磁気アルキメデス効果を利用することで、ラベルフリーで磁場により細胞を操作し、細胞パターニングを実現する。具体的には、培養液に磁性化合物を添加し、細胞を擬似的に反磁性粒子とする。この状態で、容器の底面から磁石アレイや磁石の走査により磁場を印加することで、細胞を操作しパターニングを行う。

用途・応用

再生医療、細胞培養

背景

 再生医療,創薬スクリーニングやガンなどの病理研究においては、細胞を培養する技術はきわめて重要な基礎技術である。従来の細胞培養は、単純に培養容器の底面で平面的に行われてきたが、それらの細胞は、生体内の細胞と比べ機能発現が低く、振る舞いも異なる こ と が 分 か っ て き て い る 。 そ こ で , 細 胞 機 能 が 高 め る た め 、 ゲ ル 内 で の 3次 元 培 養 や 異種細胞との共培養などより生体内に近い状態で培養する技術が必要となる。
スフェロイドは細胞が多数個凝集して塊状となった細胞の凝集体であり、細胞のスフェロイド培養は,従来の平面での培養に比べ、細胞の機能発現を促進することが知られており、,新しい細胞培養方法のスタンダードとして注目されている。
 本発明者は、培養液中において細胞を特定のパターンのスフェロイドの形態として作製する方法として、磁性化合物を添加した培養液に細胞を加え、培養液と細胞とを収容した容器に外部から磁場を作用させることにより特定のパターンのスフェロイドを作製する方法を提案した(特許文献1)。

 特許文献1に示したスフェロイド作製方法は、磁性化合物を添加した培養液に細胞を加えることにより、細胞が磁性的に反磁性体として作用すること(磁気アルキメデス効果)を利用してパターンニングする方法である。溶媒中の粒子が受ける磁力は、溶媒と粒子との磁化率の差によって決定される。培養液に磁性化合物を添加したことにより、培養液中で細胞が反磁性体として作用する理由は、細胞の磁化率が溶媒の磁化率よりも小さくなり、外部磁界に対して細胞は相対的に反磁性体として作用する。

 特許文献1においては、培養液と細胞とを収容した容器を、平面形状が矩形で厚さ方向に着磁された永久磁石をN-S面が交互となるように格子状に配列した上に配置することにより、各々の永久磁石の頂点部分に細胞が凝集させ、スフェロイドを格子点配列とするスフェロイドの作製方法が示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2012-65555号公報

課題

 磁界を利用して細胞を非接触でハンドリングする従来方法は、細胞を磁性粒子により標識する方法である。磁性化合物を添加した培養液を使用し細胞を反磁性体として作用させてスフェロイドをパターニングする方法は、細胞から磁性粒子を取り除くといった必要がなく、完全にラベルフリーであり、非接触で大量の細胞を扱うことができるという利点がある。

 しかしながら、細胞培養技術をより広範囲に適用できるようにするには、従来のような静的なパターニングではなく、様々な組織形態に対応して細胞をパターニングすることができる、いわば動的なパターニングを可能にする必要がある。
 本発明は、3次元的なパターニングを含めた様々な形態に細胞をパターニングすることを可能にする細胞パターニング装置及び細胞パターニング方法を提供することを目的とする 。

手段

 本発明に係る細胞パターニング装置は、磁性化合物を添加した培養液と細胞とを収容する容器と、該容器に収容された前記細胞を含む培養液に磁力を作用させる磁場印加手段とを備え、前記磁場印加手段は、磁力を発生する手段と、該磁力を発生する手段により前記細胞を含む培養液に磁力を作用させる位置を制御する制御手段とを備え、前記容器は、前記培養液に上方から播種された前記細胞が、該培養液の表面側から重力の作用によって徐々に底面に向けて沈降するように収容されるものであり、前記磁力を発生する手段は、 前記 容 器 の 底 面 の 下 方 に 、 複 数 の 板 状 の 磁 石 が 、 N 極 と S 極 と が 交 互 に 配 置 さ れ る よ う に 並列 さ れ る と 共 に 、 該 複 数 の 板 状 の 磁 石 の 長 手 方 向 の 長 さ が 、 該 容 器 の 底 面 を 横 切 る 長 さ に設 け ら れ る こ と で 、 細 胞 が 並 列 し た 列 状 に 凝 集 さ れ る よ う に 、 前記容器内の平面領域内で磁力の強さの勾配を発生させるものであり、前記制御手段は、前記磁力を発生する手段を、前記容器に対し相対的にパターン移動させ、前記平面領域内での前記磁力の強さの勾配を パ ターン変化させることで、前記容器内を重力によって沈降する細胞の凝集に係るパターニングがなされるように、位置を制御するものであることを特徴とする。

 容器に収容されている細胞を含む培養液に対して磁力を作用させる位置を制御する制御手段とは、容器と磁力を発生する手段との間の相対的な位置を制御する手段であって、容器を固定した状態で永久磁石や電磁石といった磁力を発生する手段を移動させてもよいし、磁力を発生する手段を固定した状態として、容器を移動させてもよい。また、原理的には容器と磁力を発生する手段の双方を移動させることにより、細胞に作用する磁力の作用位置を移動させる(変化させる)ことも含む。

 前記磁場印加手段としては、前記磁力を発生する手段を、単一または複数組からなる永久磁石または電磁石とし、前記制御手段を、前記永久磁石または電磁石を前記容器に対し相対的に移動させる移動手段とすることもでき、前記磁力を発生する手段を、複数個の電磁石を整列して配置して構成し、前記制御手段を、整列して配置した電磁石のうちの単数または複数の電磁石を選択的に通電する操作を制御することにより、電磁石が配置された領域内における磁力の発生位置を制御する構成とすることもできる。

効果

 本発明に係る細胞パターニング装置及び細胞パターニング方法によれば、さまざまな形態に細胞をパターニングすることができ、細胞を培養する種々の用途に利用することができる。

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特許情報

特許6781363

JPB 006781363-000000