記憶B細胞からIgE分泌細胞への分化経路の解明|白樺アレルギー患者さんの末梢血を用いた研究(2月7日 Science Translational Medicine 掲載論文)

2024.02.23

石坂先生によって発見された IgE によるアレルギー反応は詳しい解析が積み重なっており、IgE を分泌するB細胞から見ると、抗原により誘導された記憶B細胞が IgE へのスイッチを促す IL-4 により強く引っ張られた結果だと考えられている。

 

本日紹介する論文

今日紹介するカナダ・McMaster大学からの論文は、この IL-4 によって強く IgE 分泌へと引っ張られた細胞集団を、ヒトアレルギー患者さんで特定し、この誘導についてマウスモデルで解析した研究で、2月7日号 Science Translational Medicine に掲載された。

 

タイトルは「Type 2–polarized memory B cells hold allergen-specific IgE memory(2型に分極した記憶B細胞がアレルゲン特異的IgE記憶を荷っている)」だ。

 

解説と考察

T細胞は周りの環境により Type1 及び Type2 細胞へと分化する(勿論他にも様々なタイプのT細胞が定義されている)が、B細胞の IgE 分泌を誘導する IL-4 は Type2 T細胞が分泌する。

 

この研究では白樺シーズンに、白樺アレルギー患者さんの末梢血から記憶B細胞を分離、その中で Type2 細胞の作用を強く受け IgE 分泌へと分極化した細胞を探し、いくつかの表面マーカーで定義でき、IL-4 受容体を強く発現し、スウィッチ前の生殖細胞型 IgE 転写が検出できる細胞を特定している。

 

そして白樺アレルゲンに結合するB細胞を探すと、ほとんどがこのMBC2集団と一致することから、まさしくアレルギーシーズンに活発に活動してbIgEb分泌を行うのが、MBC2であると結論している。

 

次にMBC2と呼ぶ IgE への分化バイアスがかかった細胞をマウスでも探索し、卵白アレルゲンを用いるアレルギーも出るので、Type2 反応が誘導できるアジュバントを用いたときだけ、ヒトMBC2と同様の細胞が出現することを特定する。

 

その上で、この細胞の誘導条件を調べ、完全に IL-4 依存的に誘導されること、しかし従来示唆されていた血中 IgE の存在は必要ないことを明らかにしている。さらに面白いのは、この過程に胚中心が関わっていないことで、抗原から記憶B細胞までの過程と、IgE へ誘導する過程は全く別であることが示された。

 

最後に、白樺アレルギーのアレルゲンを舌下で暴露するSLIT治療の患者さんを選び、アレルゲンにより IgG1 を表面に発現する記憶B細胞が IgE 分泌細胞へと分化することを示している。

 

まとめと感想

結果は以上で、抗原で刺激され形成された一般的記憶B細胞が、Type2型T細胞とともに抗原でチャレンジされると、スイッチ前の IgE の転写が高まり、これが IgE へのスイッチを促すというシナリオで、IgE 型のアレルギーについて頭を整理することが出来た。

 

この論文に続いて、同じグループはピーナツアレルギーの子供を対象に、アレルゲン結合記憶B細胞を調べ、確認した論文を同じ Science Translational Medicine に掲載しているので、合わせて読んで欲しい。

 

著者紹介:西川 伸一

京都大学名誉教授。医学博士であり、熊本大学教授、京都大学教授、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長などを歴任した生命科学分野の第一人者である。現在はNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン (AASJ) 代表理事を務めながら、1日1報、最新の専門論文を紹介する「論文ウォッチ」を連載している。

【主な活動場所】 AASJ(オールアバウトサイエンスジャパン)
オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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