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寒い……。まだ12月に入ったばかりだというのに、寒い。
毎年「いつまで夏が続くんだ」と言われがちな秋だが、振り返ってみればちゃんと冬に向けての移行期間になっているのだから、地球の活動というのは大雑把で正確だ。近づいてきた冬の足音に、暖房器具を引っ張り出して使い始めたという人も少なくないだろう。
暖房器具の王道といえば、やはり炎の熱で空間を温めるストーブだろう。
しかしながら、炎ばかりが暖房器具ではない。コタツやハロゲンヒーター、カーボンヒーターなど、赤外線を使った暖房器具というのも世の中には広く普及している。
炎を使用しないのに、なぜこれらの装置は体を温められるのだろうか? そこで今回は、赤外線でどうして温められるのかについて解説していく。
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そもそも熱が伝わるとはどういうことなのだろうか?
こんな方向から考えてみよう。皆さんはビリヤードをプレイしたことがあるだろうか? 様々なルールがあるビリヤードだが、最も有名なのはナインボールという9番の球を落とすルールだろう。
ナインボールは、ピラミッド状に配置したボールを自球で一気に弾くことから開始する。力強く突かれた白球によって、それまで静止していた9つの球が一気に弾き出されるのは少し心地よい[注1]。
このブレイクショットの様子が、熱が伝わる様子を説明するのに役立つ。
原子や分子などの粒子は、外部からのエネルギーを受けて振動する。この振動に使われるエネルギーが、私たちが熱と呼んでいるものの正体だ[注2]。
振動している粒子が別の粒子にぶつかったりすると、そのエネルギーは伝搬し、別の粒子を振動させる。ちょうど、ブレイクショットで球があちこちに弾き出されるのと同じだ。エネルギーが伝搬することにより振動させられた粒子は、動いた先で静止している粒子を新たに振動させる。
このように、あるエネルギー源から供給されたエネルギーにより、原子や分子などの粒子の振動が連鎖することこそ、熱が伝わるということだ。

粒子の振動が連鎖することが、熱が伝わるということだとわかった。それではなぜ、赤外線で原子や分子が振動するのだろう?
続いて、赤外線が熱を伝える仕組みについて解説していく。
寒くなってきたというのに恐縮だが、海や波の出るプールのたとえをする。
皆さんは、こんなことをした経験はないだろうか?水中で底面を蹴ってピョンピョン跳ねてみる。水面が穏やかな時、高さはそんなに高くならない。しかしながら迫ってくる波にタイミングを合わせてみると、軽く跳ぶだけで驚くほど高く跳べる。
波と共に、一気に体が持ち上げられる感覚は、軽い絶叫アトラクションのようでとても楽しい。
このとき、なぜ大きく跳ぶことができたのだろうか? 皆さんすでに体感的には理解していることだろうが、改めて説明するとこうだ。
波の性質の一つに、干渉という性質がある。二つの波の山と山がぶつかるところでは一層高く、谷と谷がぶつかるところでは一層低くなり、山と谷がぶつかるところでは打ち消しあうのだ。今回の例の場合、一つ目の波はもちろん海やプールだ。
それではもう一つの波は、なんだろう? 何を隠そう、水中で跳ねていた私たち自身だ。タイミングよく跳ねたことで、私たちは波として振舞っていたのだ。
そう、波の干渉は波と波がぶつかることで生じるが、この波とは水面のように連綿と続くものでなくとも良いのだ。
赤外線ヒーターに話題を戻そう。
赤外線は不可視光の一種だ。光は波動性、すなわち波の性質を持つため、山と谷を作りながら進んでいく。この波に空気の分子が巻き込まれるとどうなるだろうか?
空気の分子はもともと、外気のエネルギーを受けてわずかに振動している。したがって、赤外線の作る波と空気の分子の振動が一致すると、波の干渉によって分子の振動は大きくなる[注3]。ちょうど私たちが海やプールで高く跳んだのと同じ具合だ。
これこそが、赤外線によって粒子が振動する理由であり、熱が伝わる理由だ[注4]。

赤外線の波の性質が、原子や分子などの粒子を振動させる要因となっていることがわかった。それではその赤外線は、いったいどのように作られているのだろうか?
続いて暖房器具が赤外線を作る仕組みについて解説していく。
実を言うと、赤々と燃える炭や真っ白に光る溶けた鉄のそばにいるだけでも赤外線で温まる事はできる。炭や鉄を熱するのが面倒臭いから赤外線ヒーター使っとるんだろうが、という話になるので本末転倒ではあるのだが。あと、恐らくだがそんなに暖かくない。
一体どうして、炭や鉄から赤外線が出たのだろうか?
実は物体を構成する原子や分子には、温度が上がると電磁波を放出すると言う性質がある。赤外線もまた電磁波であるため、この性質により放出される。
温度が低い時は、波長の長い電磁波が放出される。これでは周期が一致しないため、粒子の振動はあまり増幅されない。しかしながら、温度が高くなるにつれ波長は短くなっていき、数千度を越えると粒子の振動と一致し熱が伝わるようになる[注5]。
ここで多くの人は「数千度にまで上げるなら別に赤外線に頼らなくても……」と思われたことだろう[注6]。
しかしながら、何も装置全体が加熱されるわけではない。装置全体のうち数千度にまで加熱されるのは、内蔵されたランプ内に取り付けられたフィラメントという細長い小さな部品だ。
赤外線放出の仕組みはこうだ。
スイッチをオンにすると、フィラメントに大量の電子が送り込まれる。フィラメントは細長いので電子の渋滞しやすさ、すなわち抵抗が大きい。そのためフィラメントは一気に加熱され、赤外線が放出されると言うわけだ。

ここまで、赤外線ヒーターが温まる理由について解説してきたが、いかがだっただろうか? 冬を乗り切る頼もしい味方ではあるが、反面、熱を発する器具には間違いない。火傷や火事で悲しい目に遭わないためにも、説明書に従って正しく利用してほしい。
最後に、記事の趣旨からは少し外れるが暖房の利用に関する研究について2つ紹介して、記事を締めさせていただく。
現代を生きる私たちにとって暑〜い夏や寒〜い冬を乗り切るには、それ相応の設備が必要だ。冷暖房設備の最たるものといえば、誰がなんと言ってもエアコンだろう。
ところで私たちが生活していると、少なからず移動が生じる。必然的に、その間冷暖房から離れることになるわけだが、皆さんはこの移動をどんな想いで過ごしているだろう? 快適?それとも我慢?
冷暖房器具をどのように使っているかを調べた調査がある。これによると、冷房は扉などの間仕切りを取り払って一台で広い範囲に、暖房は間仕切りを閉めて狭い範囲を暖かくする傾向があるようだ。
間仕切りを取り払えば広い範囲をカバーできるが割高に、間仕切りを使えばお得だが狭い範囲だけ。なんとも難しいトレードオフだ。
皆さんは、カーネーションといえばどんな時に買うだろうか?ただし、母の日以外でだ。
思い当たる人はあまり多くはないだろう。それもそのはずで、カーネーションは母の日以外の需要がほとんどない花だからだ。しかしながら、その需要に合わせるためカーネーションの生育は秋から行われ、冬を越し、春になるのを待つ。寒い冬をどのように過ごしているのだろうか?
出荷されるカーネーションは当然、暖房の効いた暖かい環境で冬を越す。しかしながら、冬の間中暖かさをキープしておくのは、なかなかお高くついてしまう。
そこで、LEDと併用することで暖房の設定温度を下げられないか調べた研究がある。従来の15℃から9℃程度にまで温度を下げる事は出来たようだが、従来の栽培方法と葉付きの様子が変わってしまっていたり、一筋縄ではいかないようだ。

[注1] 葉月も大学生の頃、友人たちとビリヤードをやったことがある。かっこよくショットを決めてやろうとしたが……うん、まぁ察してくれ。上手に突くのは結構難しいということが勉強になった。 本文に戻る
[注2] 絶対零度という言葉を聞いたことがないだろうか? 命中率30 %で氷タイプの一撃必殺技……ではなく、-273.15 ℃という理論的な最低温度を表現した言葉だ。なぜこの数字がわかるのだろう? 物質の振動が熱を作り、振動の大きさは温度と相関している。であれば、振動が一切ない時の温度を算出すれば良い。という訳だ。 本文に戻る
[注3] このように自由に振動する物体や物質が、周期的な外力により振動が増幅されることを共振という。共振を使えば、二つ並べた同じ周波数の音叉の片方を鳴らすだけで、もう片方も鳴りだす、というマジックのようなことも可能になる。理屈がわかっても少し不思議。 本文に戻る
[注4] 夏場に外に立っていると、当然だが暑いし日焼けする。どちらも太陽光に起因する現象だが、「暑い」は赤外線によるもの、「日焼けする」は紫外線によるものなのだ。紫外線カットの日焼け止めを塗っても暑いのは、つまりそういうこと。 本文に戻る
[注5] 炭や鉄を加熱して放出された赤外線では多分暖かくないと言うのは、つまり恐らく波長が長すぎるだろうということだ。 本文に戻る
[注6] 今回の記事では触れてこなかったが、赤外線を利用した暖房器具は実際に「赤外線を利用した熱」と「加熱の際に温められた空気」の双方を温めるために使っている。ただ、私たちの体は赤外線によって伝わった熱だろうが、熱源が温めた熱だろうが区別なく受容できるので、ありがたくあったかくなろう。 本文に戻る