宇宙の全ての物質が掲載されたチャートが作成される! 図の見方を細かく解説!

2023.10.27

宇宙の全ての物質のチャート解説 サムネ

(画像引用元番号②)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、宇宙の全ての物質を網羅したチャートについて詳しく解説するよ!

 

普段解説しているニュースと違って、この論文は何か新しい科学的発見とかそういう話じゃないけど、全てを網羅した結果、宇宙そのものに関して中々面白い事実が分かってきた、というユニークな研究でもあるよ!

 

宇宙の全ての物質を語れる理論は存在しない

私たちの宇宙には素粒子、原子、ウイルス、生物、惑星、恒星、銀河、ブラックホールなど、実に多種多様な物質が存在するよね?物質はどのように誕生したのか?というのは物理学の究極の課題の1つだよ。

 

また、それと関連する話題として、宇宙を正確に記述する物理学の理論が未完成だという問題もあるよ。現在の物理学は、「一般相対性理論」と「量子力学」の2本柱で構築されているけど、課題も存在するよ。

 

例えば、一般相対性理論は宇宙や銀河くらいのマクロスケールの世界で、量子力学は素粒子や原子のミクロスケールの世界で、それぞれかなり確実に正しいことが証明されているね。

 

しかしこれを逆にすると、つまり一般相対性理論をミクロスケールの世界で、量子力学をマクロスケールの世界で、それぞれ使おうとすると、これが全く行かないんだよね。

 

この問題は、どちらの理論も物理学として完璧な理論ではないことを示していて、完璧にするには両方を統合した「量子重力理論[注1]を完成させないといけない、ということになるよ。

 

特にこれは、ブラックホールや誕生直後の宇宙といった、一般相対性理論も量子力学も必要な場所において重要になってくる問題で、未だにブラックホールや宇宙の完全な理解ができていない原因にもなっているよ。

 

ただ、これは世界中の科学者が何十年も取り組んでいる課題であるにも関わらず、理論的な困難が大量に存在するせいで全然理論が完成しないんだよね。パズルで言うなら、未だに外枠すら完成してないほどだよ!

 

そんなわけで、宇宙の全ての物質を網羅した理論というのは未だに完成が見通せず、物質そのものの本質の課題と共に、現代物理学の究極の課題として転がっているんだよね。

 

 

宇宙を表すチャートを作ってみた!

ところで自然科学というのは、実験や観測を通じてデータを集め、そこから科学法則を導く、という行為の積み重ねだとも言えるよ。その過程ではデータを落とし込んだグラフやチャートがよく作成されるよ。

 

これは視覚的にデータが分かりやすくなるだけでなく、グラフやチャートから観られる傾向が新たな理論の構築に繋がるなど、科学者にとっても結構重要なんだよね。

 

そんな背景を元に、宇宙の物質を全て網羅したチャートを作ってみよう!と考えてみたのが、オーストラリア国立大学のCharles H. Lineweaver氏とVihan M. Patel氏の研究チームだよ。

 

まずはチャートを作る時の前提として、物質というのはそもそもどういうものか、どういう風に誕生したのか、という根本的な疑問について、改めてイチから考えてみたよ。

 

前提として、物質というのはどんなものであれ、現在の宇宙の平均密度よりずっと高い密度で存在するよ。そして、誕生直後の宇宙には存在しなかった、という事実が大事になってくるよ。

 

誕生直後の宇宙に物質が存在しなかったのは、簡単に言えば、宇宙自体があまりにも高温過ぎたせいだよ。そして宇宙が膨張し、温度が下がってくると、段々と物質が生まれるようになってきたよ。

 

宇宙の温度が下がってくると、宇宙そのものより高密度な物質が生まれるという過程って、これはまるで、高温で低密度な水蒸気が冷えると、より高密度な水や氷になるのと似ているよね?

 

物質チャートの前提条件

次に出てくるチャートを組む前提として、このチャートが組まれていたよ。このチャートは要するに、宇宙は時間が経つほど温度と密度が下がり、その結果物質が生まれたことを改めて振り返っている感じであり、この前提だけ覚えておけばOKだよ! (画像引用元番号①)

 

そう考えると、最初に重要になってくるのは、宇宙の時間経過と、時間経過に伴って下がる温度や密度なんだよね。論文の1つ目ではそのようなチャートが作成されているよ。

 

ただ、これは次のチャートを作るために必要な前提みたいな感じだね。実際このチャートだけでは、単に宇宙の歴史を通じた温度や密度の変化を改めてグラフ化したもので、あまり目新しい事実はないよ。

 

ただし、宇宙の全ての物質を網羅したチャートを作成するには、いわばこのチャートで "復習" することが大事なので作ってみた、という感じにはなるね。

 

それでは、次から実際にチャートを観てみよう!

 

宇宙の全ての物質を網羅したチャートが完成!

物質チャート

今回作成された宇宙の全ての物質のチャートについて、私が訳したモノだよ。かなり細かいのでクリック推奨!そして主要な改変内容については記事の最後にまとめているよ。

 

まずは上のチャートを観てみて!これはLineweaver氏とPatel氏が作成したチャートを元に、私が日本語訳や色の塗り分け、意味が通じやすいように多少意訳したものになるよ!

 

一応、これは日本語訳をする際にある程度の改変をしている部分もあるので、主要な改変内容は記事の最後にまとめたよ。元の画像を見たい時には原著論文のFig2を見てね!あるいはこのリンクからも飛べるよ!

 

これはかなり細かくて、パッと見で理解するのは難しいって人もいるかもしれないから、この後からは一部を拡大しつつ、見方を解説していくよ!

 

また、元の図がゴチャゴチャして言いたいことが分からんという人のために、この記事の最後にもう少し簡易的にしたチャートを掲載しておくね!

 

まず、縦軸は物質の質量、横軸は大きさに対応する軸だよ。数字は書かれているものではなく指数なので、例えば0、10、-10はそれぞれ100=1、1010=100億、10-10=100億分の1に対応するよ。

 

そして、縦軸右側はエネルギーになっているけど、これはE=mc2の式[注2]で質量に換算できるよ。また、横軸の大きさとは、物質の物理的な半径で表されているんだよね。

 

このチャートでは物質の細かな形状は無視し、半径と密度の単純計算で質量が求まるようにされているので、例えばヒトは質量70kgで半径が50cmの球体という仮定で配置されているよ。

 

物質と宇宙の密度関係

冒頭で述べた通り、宇宙の密度が下がると、それより高密度な物質が生まれるよ。同じような構造の物質が一直線上に並んでいることと合わせ、このチャートは物質と宇宙に関する面白い関係性を示しているね!

 

こうして眺めてみると、いくつかの傾向が見えてくるね。まず、ヒトを含めた身近な物質は、原子そのものから主系列星[注3]まで、原子が固まってできた物質は狭い範囲に直線状に分布しているよね。

 

これらの物質はどれも原子でできているから、直線状に並んでいるのは当然だという言い方もできるけど、一方で別の見方をすることもできるよ。

 

原子が固まってできた物質の密度は、宇宙で原子核が作られた「ビッグバン元素合成」の頃の宇宙の密度と等しいよ。この原子核、原子そのものよりもずっと高密度なものだというのがポイントになるよ。

 

では、原子核と同じくらいの密度の物質はどうなるかというと、それは「クォーク・グルーオン・プラズマ」[注4]という物質が存在する領域になるよ。これは人工的に合成可能な最も高密度な物質でもあるよ。

 

このクォーク・グルーオン・プラズマに匹敵する密度になるのは、原子核そのものや、「中性子星」[注5]という超高密度な天体になるよ。そして原子と原子核の間には、中間的な密度の「白色矮星」[注6]が入るよ。

 

では原子核の密度くらいであった時代の宇宙では何が起きていたのかな?これは、素粒子から陽子や中性子など、原子核の素となる粒子を合成していたんだよね。

 

原子の密度と同じ宇宙では原子核が、原子核の密度と同じ宇宙では原子核の素となる粒子ができていた、という関係性は中々面白いよね!

 

これとは逆に、チャートを低密度な方向に向かってみると、銀河や銀河団などの物質が現れ、これらも直線状に位置しているよね。これも原子でできているとはいえ、隙間が多いから低密度であると言えるよ。

 

そして、銀河などの大規模で低密度な物体が生まれるには、やはり宇宙も低密度でないといけない、という点で、今までの傾向と同じだと言えるよ!

 

しかも、銀河などが属する位置は、宇宙の歴史で物質の重力が支配的となった時代に関連しているよ。この点で、輻射 (エネルギーの放射) が支配的だった時代に関連している恒星以下の物質とは別物と見ることもできるよ。

 

なお、この大規模な物質には、比較用の参考として超空洞 (ボイド) が置かれているよ。これは物質というより、むしろ物質がない空間的領域なので、そこだけは注意してね。

 

こうした感じでこのチャートは、物質の密度と、宇宙の密度の関係性が見えてくるんだよね。個々の関係性は偶然ではなく、細かく掘り下げれば理由付けとなる物理法則があるけど、これはこれで面白いよね!

 

 

物質が存在できない境界線の1つはブラックホール!

さて、このチャートを眺めて見ると、物質が明らかに存在できない領域が出てくるよ。この領域を区切るのは2本の線で、宇宙に存在可能な物質は線で囲まれた三角形の領域に全て収まる、と言い換えることができるよ。

 

その2本の線は、それぞれ一般相対性理論と量子力学で導かれる性質を元に引かれるよ。これってどういうことなのかもここから説明していくね!

 

ブラックホールの線

チャートの左上は、重力の効果によって物質が存在できない領域だよ。詳しい理由は本文に譲るけど、とにかく物質がブラックホールになってしまう境界線からはみ出した領域は物質が存在できないとみなせる領域だよ!

 

まず、一般相対性理論の線は重力の性質を元に引かれるよ。つまり、この線を超えると、物質は重力によって完全に潰れてしまう「重力崩壊[注7]を起こしてしまうよ。

 

重力崩壊が起こるということで、つまりこの線は「ブラックホール」を示す線だよ。実際、理論的に予言されたものから観測で発見されているものまで、全てのブラックホールがこの線の上に乗っかることが分かるよ![注8]

 

では、なぜこの線より上で物質が存在できないのか?重力崩壊を起こした物体は、理論上無限に潰れてしまい、大きさがゼロになってしまうよ。ただ、これはいささか古典的で、違うんじゃないかと考えられているよ。

 

一応、量子力学的には大きさがゼロにならないかもしれないとは考えられているけど、とはいえそこはあまり重要ではなく、むしろ重力崩壊で生まれたブラックホールの実質的な大きさが重要となってくるよ。

 

ブラックホールからは光でも逃げ出せないとはよく知られているけど、その逃げ出せない境界である「事象の地平面」をブラックホールの "表面" と捉え[注9]、大きさのある高密度な物体として表すことができるんだよね。

 

事象の地平面は質量によって決まるから、仮に何らかの理由で重力崩壊しない高密度な物質があったとしても、それは事象の地平面の内側に隠れてしまい、見えなくなってしまうんだよね。

 

事象の地平面は、光だけでなく情報も一方通行で逃げ出さない境界だから、事象の地平面の内側に何があったとしても、それを語ることは現状の物理学では不可能になってしまうよ。

 

以上のことから、一般相対性理論で引かれる線にピッタリ乗っかる形でブラックホールが存在し、線より上の領域には対応する物質が存在しない領域だ、と言えるんだよね。

 

物質が存在できないもう1つの境界線は素粒子!

コンプトン限界の線

チャートの左下は、量子力学の効果によって物質が存在できない領域だよ。詳しい理由は本文に譲るし、やや説明が難しいのよね。簡単に言えば、物質が物質として存在するという説明自体が曖昧になってしまい、安定して存在できない領域と言ったらいいかな。

 

もう1つ引かれるのは、量子力学に基づいて引かれる「コンプトン限界」の線だよ。ブラックホールの時点で人によっては難しいかもだけど、コンプトン限界は正直もっと難しい概念なんだよね。

 

厳密性を省いて簡単に言えば、コンプトン限界とは "物質の大きさが定まらないので、物質の存在自体が曖昧になってしまう領域" ということになるよ。

 

もう少し詳しく言うとこんな感じだよ。量子力学によれば、全ての物質は粒子だけでなく波 (波動) の性質も持ち合わせていて、この波の性質は「コンプトン波長[注10]という波の長さで表すことができるんだよね。

 

大きな物質はコンプトン波長よりはるかに大きいので波の性質を意識することはないけど、原子より小さなスケールだと無視できなくなってくるよ。では、物質の大きさがコンプトン波長より小さくなるとどうなるのかな?

 

まず、物質の大きさを知るには、位置と運動量を正確に知ることが必要であり、光などの何かしらを照射して測定する「観測」という行為が必要になるよ。ただし観測行為はそれ自体が物質にエネルギーを与えてしまうよ。

 

物質があまりにも小さいと、観測行為自体が物質の位置や運動量を乱してしまい、意味がない結果しか出さなくなってしまうよ。そうならない下限が質量ごとに定められたコンプトン波長というわけ。

 

また、これは一段階難しい話だけど、コンプトン波長より小さな領域に物質を無理矢理押し込めた場合、物質と反物質のペアが生成されることによって測定が妨害されるという追加効果も発生するよ。

 

このペア生成は、元々存在した物質と新たに発生した物質の区別がつかなくなってしまうので、やはり位置や運動量の測定に限界が生じてしまうんだよね。

 

このような理由で、コンプトン波長を下限とする物質の線が引かれるよ。この線の上に乗るのは素粒子なんだよね[注11]。素粒子の大きさには議論があるけど[注12]、ここではコンプトン波長によって定められているよ。

 

また、このチャートでは光子も配置され、例として可視光線の場所がプロットされているよ。光子は質量ゼロの素粒子で、単純計算するとコンプトン波長は無限大になってしまうよ!

 

この問題を防ぐため、エネルギーと質量が等しいというE=mc2の式と、光子のエネルギーは光の波長でのみ決まるという関係性を利用して、工夫してチャートに配置されているよ。

 

以上な感じで、物質が物質として存在できるのは、ブラックホールの線とコンプトン限界の線の間に収まる三角形の範囲、ということになるんだよね。

 

現在の宇宙はブラックホールの線の上に置かれている意味は?

このチャートには、宇宙そのものも2つ配置されているよ。興味深いはその位置。まず1つ目は現在の宇宙で、宇宙の大きさを見た目の大きさであるハッブル半径[注13]で表すと、現在の宇宙はブラックホールの線の上に乗るよ!

 

これは単純な見方をすれば、私たちの宇宙全体はブラックホールそのものであり、観測可能な範囲の宇宙はブラックホールの内側に収まっている、ということになるね!

 

ただ、これはかなり単純な見方で、論文の著者であるPatel氏も「ちょっと怖い話だが、そうではないと信じるのに十分な理由が理由がある。」と言ってるくらいだよ。

 

"On the larger end, the plot suggests that if there were nothing – a complete vacuum – beyond the observable universe, our universe would be a large, low density black hole. This is a little scary, but we have good reason to believe that’s not the case."

「大きな側の端でのこのプロットは、もし観測可能な宇宙の外に何も存在しなかった場合 ―― つまり完全な真空だった場合、私たちの宇宙は大きくて低密度なブラックホールであることを示唆しています。これはちょっと怖いことですが、そうではないと信じる十分な理由があります。」

―― Vihan M. Patel, 元オーストラリア国立大学研修生 (Link)

 

宇宙全体がブラックホールであるという可能性は、確かに以前から複数の科学者が唱えているところであり、別にそれ自体がぶっ飛んだ発想って言うわけじゃないんだよね。

 

ただ、少なくともこのチャートにおいて宇宙全体がブラックホールであると主張するには、観測可能な宇宙の外側は真空である、つまり物質が何も存在しない (もしくは極端に少ない) 空っぽの空間である必要がなるよ。

 

現在の宇宙論は、観測可能な範囲の外側は、内側と変わらない宇宙が広がっているという考えが多数派なので、この前提は成り立っていない可能性が高いよ。となると、宇宙全体はブラックホールではないことになるね。

 

現在の宇宙がブラックホールの線の上に置かれるのは、細かい説明は注釈に譲るけど[注14]、簡単に言えばたまたまその位置にあるだけで、宇宙がブラックホールであることを意味しているわけではない、ということができるよ。

 

 

誕生直後の宇宙が置かれた位置は何を意味するのか?

チャート上の宇宙の位置

この物質チャートには宇宙そのものが2つの場所に置かれているよ!その意味するところは、1つは偶然である可能性が高いけど、もう1つは宇宙そのものがどの理論で描けるのかにも絡んでくる話だよ!

 

チャートに置かれた宇宙の2つ目は誕生直後の宇宙だよ。その位置はチャートの右側、ブラックホールの線とコンプトン限界の線が交差する位置になるよ。ここには「インスタントン (Instanton)」が配置されているね。

 

インスタントンの正確な説明はこの記事のレベルをはるかに超えてしまうので割愛するけど、重要なのはインスタントンが2つの線の交点に存在する点だというところだよ。

 

ブラックホールの線は一般相対性理論で引かれ、コンプトン限界の線は量子力学で引かれるので、インスタントンの位置は一般相対性理論と量子力学の両方が必要な究極的な領域であると言えるね!

 

そして論文中で行われたちゃんとした計算により、2つの線はインスタントンの場所で正確に交差することから、これは誕生直後の宇宙は有限の大きさで生まれた、ということを意味している可能性が出てくるよ。

 

誕生直後の宇宙がどのくらいの大きさであったのかは議論があり、「大きさゼロの1点から始まった」と「小さいけど有限なプランク長[注15]から始まった」という2つの説が対立している状態だよ。

 

このチャートのインスタントンはプランク長に置かれているので、宇宙はとても小さいけど有限な大きさを持って誕生した、ということが言えそうだね。

 

もちろん、これも現在の宇宙がブラックホールかどうかの話と同じく、偶然である可能性はあるよ。しかもこちらの場合、現代物理学で正確に議論することが不可能な領域になってしまうよ!

 

インスタントンという一般相対性理論と量子力学の交点、およびその左側にある線を伸ばした三角形の領域は、一般相対性理論と量子力学を組み合わせた量子重力理論の完成なしには何も語れない領域となるよ。

 

他にも「プランク長未満の物理学」とか「ブラックホールは1点には潰れないのではないか」とか、色んな議論や謎が転がっているので、全ての物質が配置された三角形以外の領域は未知な部分が多すぎるよ!

 

最後に、この話の要点のみを表した、もう少し簡易版なチャートを貼っておくよ。こうしてみると、物質って案外狭い範囲しか知られてないんだなぁってことが分かるね!

 

物質チャート簡易版

今回作成された宇宙の全ての物質のチャートについて、私が重要だと思った部分に絞ってまとめた簡易版だよ。それでもかなり細かいのでクリック推奨だね!これはオリジナルを元に独自に作ったものと考えてもらっていいよ!

 

チャートを眺めて見れば何か分かるかも?

今回のLineweaver氏とPatel氏の研究は、何か新しい発見があったとかそういうわけじゃないけど、物質のチャートを作った結果、宇宙の本質に迫っているかも?という点では、中々面白いものだよ。

 

実際、今回作成されたチャートは宇宙の物質を全て網羅することによる教育的な使い方を目的としているよ。これは宇宙の歴史や物体の大きさ比較のような、既に出回っている他のチャートと似ている部分があるよ。

 

今回のチャートの解説はまだまだ簡易的で、実際にはもっと複雑なことを掘り下げているけど、それはこの記事のレベルをかなり超えてしまうから、更に知りたい人はこの記事の下のリンクから原著論文を読んでみてね!

 

このチャートが何かスゴい物理学の発見に繋がるかどうかはわからないけど、眺めて見れば思わぬ発見があるのかもしれないよ!

注釈

[注1] 量子重力理論 ↩︎

この名称は、特定の理論の名称ではなく、一般相対性理論と量子力学の統合理論の形式を示しているだけであり、より具体的には重力相互作用の量子化に関する理論である。超弦理論、超重力理論、ループ量子重力理論、M理論などが具体的な理論の名称となる。

 

[注2] E=mc2 ↩︎

特殊相対性理論で予言される質量とエネルギーの等価性。この記事の内容で言うならば、特定のエネルギー値を持つ物質は、この計算式によってあらわされる質量を持つのと同等であるということができる。

 

[注3] 主系列星 ↩︎

恒星が誕生した後、寿命の最期に迎える膨張などが起こる前までの、活動が比較的安定している期間。太陽は主系列星の1つであり、ちょうど半分くらいの時間が経過している。

 

[注4] クォーク・グルーオン・プラズマ ↩︎

陽子や中性子を作る素粒子であるクォークとグルーオンが高密度で混ざった、超高温な物質の一形態。簡単に言えば物質が極めて高温な状態で生じる相の1つでもある。

 

[注5] 中性子星 ↩︎

太陽よりずっと重い恒星が寿命の最期に残す天体で、恒星中心核が潰れて高密度な状態となっている。主に中性子でできているため、中性子星は巨大な原子核であると例えられることもある。

 

[注6] 白色矮星 ↩︎

太陽と同じくらいの重さの恒星が寿命の最期に残す天体で、恒星中心核が潰れて高密度な状態となっている。原子の大きさが収縮した特殊な状態 (電子の縮退) となっており、普通の原子よりは高密度だが、原子核と比べると低密度な物質形態となっている。

 

[注7] 重力崩壊 ↩︎

重力によって物質が潰れてしまう現象。通常の物質は様々な力によって重力崩壊を防いでいるが、状況次第では重力崩壊を防ぐ力が存在しなくなる場合がある。こうなると物質は重力によって無限に潰れてしまう。こうして生じるのがブラックホールである。実際には、重力崩壊がプランク長で止まる可能性も示唆されているものの、この謎を解くには量子重力理論の完成が必須となる。

 

[注8] 全てのブラックホールがこの線の上に乗っかる ↩︎

このチャートでの最も小さなブラックホールは、ホーキング放射で蒸発する直前の原始ブラックホールが配置されており、これは陽子とほぼ同じ質量である。一方で最も大きなブラックホールはTON 618であり、実際の値には議論があるものの、太陽の407億倍という観測史上最も重いブラックホールである。また、天の川銀河の中心部にあるいて座A*は最も小さな超大質量ブラックホールとして掲載されている。3Kのブラックホールとは、宇宙μ波背景放射とホーキング放射が平衡しているブラックホールであり、実際にホーキング放射が始まると考えられるブラックホールの上限である。

 

[注9] 事象の地平面はブラックホールの "表面" ↩︎

これはやや語弊のある表現でもあるが、あえて採用している。事象の地平面は物理的に何かがある境界ではなく、空間としては地続きである。しかし事象の地平面を境に時空の性質が変化するため、ブラックホールの事実上の大きさとして扱われている。

 

[注10] コンプトン波長 ↩︎

プランク定数と光速度で定まる、粒子の質量を長さとして表した物理定数。

 

[注11] 素粒子の線 ↩︎

この線には、素粒子ではない陽子や中性子が乗っている。陽子や中性子は実際に大きさがあるが、コンプトン波長はそれとほぼ一致することが知られている。

 

[注12] 素粒子の大きさ ↩︎

古典的には、素粒子の大きさはゼロである。このためそのままではこのチャートにプロットできない。一方で現在の物理学では、素粒子は大きさがゼロではないことを予測しているが、それが具体的にいくつであるのかは判明していない。この図ではコンプトン波長を元に配置しているが、全ての素粒子はプランク長であるとする主張もある。

 

[注13] ハッブル半径 ↩︎

光が宇宙の年齢分だけ進んだ距離。観測可能な宇宙の見た目上の大きさと一致するため、宇宙の大きさを表す値としてよく使われる。

 

[注14] 現在の宇宙がブラックホールの線の上に置かれる理由 ↩︎

宇宙の膨張速度は物質の密度と関係しており、密度が高いほど重力が強くなるため、膨張速度が遅くなり、いつかは反転して収縮するようになる。膨張が収縮に転ずるかどうかの境目を「臨界密度」と呼び、現在の観測可能な宇宙は臨界密度にかなり近いことが知られている。そして、ブラックホールの大きさを事象の地平面とした場合、その密度は臨界密度と同じとなる。これは両者を表す物理の方程式の形式が似ているためである。従って、現在の宇宙がブラックホールの線の上に置かれているとしても、それはブラックホールであることを意味するとは限らず、全くの偶然である可能性もある。そして本文の通り、宇宙全体がブラックホールであるという主張が成り立つためには、観測可能な宇宙の外側が、少なくとも内側の密度より小さい必要があるが、現在の宇宙論はその考えに否定的である。

 

[注15] プランク長 ↩︎

現在の物理学、特に量子力学において、長さの最小単位として考えられている値。約1.616×10-35m。この長さより短い場合での物理計算は破綻するため、現代物理学では物理現象やその詳細を知ることができない。プランク長なものである可能性があるのは重力崩壊したブラックホール本体、素粒子の大きさ、そして誕生直後の宇宙である。

文献情報

<原著論文>

  • Charles H. Lineweaver & Vihan M. Patel. "All objects and some questions". American Journal of Physics, 2023; 91, 819-825. DOI: 10.1119/5.0150209

 

<参考文献>

 

<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

  1. 宇宙の時間経過と密度や温度に関するチャート: 原著論文Fig1

  2. 物質の直径と質量に関するチャート: 原著論文Fig2

 

<チャートの日本語訳に関しての主要な改変内容>

  • 全体的な日本語訳。必要に応じて直訳または意訳をしているが、そこから大きく外れている部分は下述。
  • 全体的な色の変更。領域の意味が異なる部分は色の違いがはっきりするようにした。
  • 原子や銀河などの楕円範囲の中にある黒点の削除。解像度の問題で点の位置がはっきりせず、何を表しているのかを読み解くのも困難なため。
  • 右辺のエネルギーに対応した横線の追加。
  • 右辺は「log (mass) [GeV]」となっているが、質量とエネルギーの等価性を鑑みて、および軸がエネルギーであることを強調するために「log エネルギー (GeV)」と訳した。
  • 「forbidden by gravity」は直訳や意訳では分かりにくいと判断し、「重力崩壊により存在できない ※事象の地平面の内側に隠される」とした。
  • 「quantum uncertainty」は直訳や意訳では分かりにくいと判断し、「量子力学的効果で存在の意味が曖昧 ※コンプトン波長以下」とした。
  • 上辺「nuclear」「atomic」は、実際にはそれぞれ宇宙の密度を表しているが、直訳では意味が分かりにくく、他のラベル宇宙の時代を表しているため、それにあたるものとして「核子合成」「原子核合成」と意訳し、本文で補足となる説明を追加した。
  • 上辺「recomb.」は宇宙の再電離を表しているが、原子が作られた時代であることが重要であるため直訳せずに「宇宙の晴れ上がり」とした。
  • 左下領域に「プランク長未満 (未知)」の追加。元図には左上にしかないが、同じであることを示すために追加。
  • 「いて座A*」、「TON 618」に当たる点の追加。追加位置は原著論文の言及内容に基づきプロット。
  • 「XボソンYボソン」に当たる点の追加。
  • 「光子 (可視光線)」の注釈の追加。
  • 「COVID virus」を「ウイルス」と訳した。正確に訳すならば「SARS-CoV-2」、「SARSコロナウイルス2」、「新型コロナウイルス」となるべきであるが、この図ではウイルスがこの点に置かれることが重要であり、SARS-CoV-2等の訳は単なるウイルスである以上の語弊を招く恐れがあると考えたため。また、SARS-CoV-2は特に重い又は軽いウイルスではない。

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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