47万6000年前の木造建築物の跡を発見? ホモ・サピエンス以外が作った世界最古の建築物かも

2023.09.29

47万6000年前の木造建築物の跡? サムネ

(画像引用元番号①)

 

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の彩恵りりだよ!

今回の解説は、世界最古の木造建築の跡かもしれない、47万6000年前の木組み構造の発見についてだよ!

 

これまでの記録がたった1万1000年前であったことを考えれば、その古さが際立つよね!それだけでなく、時代的には現生人類=ホモ・サピエンスがいない時代に加工されたモノだよ!

 

これは人類が非常に古い段階から複雑な加工をしていたとともに、旧石器時代の人類が定住または半定住生活を送っていたかもしれない重要な証拠でもあるよ!

 

道具作成の歴史を調べるのは人類史でとても重要!

人類が自然物をそのまま利用せず、加工して利用するという試みがいつ行われたのかという疑問は、人類の進化の歴史を考察する上では必須の課題と言えるよ。

 

道具の加工自体は、簡単なものは霊長類や鳥類にも観られる行動なので、それ自体は珍しいとは言えないよ。ならば、他の動物には観られない複雑な加工というのがいつ出現したのか、という点に関心がもたれているよ。

 

私たちがいかにして高度な知能を持ったのか、理由ははっきりと分かっていないけど、複雑な道具の作成は知能を向上させた可能性は否定できないので、そういう意味でも注目されているよ。

 

また、道具の作成がどの人類が行っていたか、という点も注目されるよ。つまり、現在唯一存在する人類であるホモ・サピエンス (Homo sapiens) 以外に道具の作成という行為があったかどうかだよ。

 

この疑問は、人類の進化の中でホモ・サピエンスがどのようなタイミングや理由で出現したのか、そしてどうして他の人類は滅びたのか、という疑問と答えにも絡むことから、解明する研究はとても重要だよ!

 

ただし、この研究にはどうしても遺物の種類に偏りがある問題があるよ。地層から発掘されやすいのは岩石や貝殻と言った無機物を加工したもので、木材などの有機物を加工したものは発見数がとても少ないよ。

 

これはとても簡単な理由で、木材などの有機物は地面に埋まると腐敗して無くなってしまうからだよ。腐敗しないような条件は、その地層が水没しているなど、特殊な環境条件を満たしている必要があるよ。

 

また、有機物は生物の本体で、無機物と比べて柔らかいので、偶然そのような形になったり、他の動物が加工した跡が人工的な加工の痕跡に見えるという問題を解決しないといけないから、証拠として提示するのが難しいよ。

 

そういった背景を踏まえて、木材の加工品に関するこれまでの発掘例を見ると、例えばヨーロッパ・中国・アフリカ (恐らく) で、約40万年前という記録があるよ。これは採餌や狩猟につかわれる道具と見られるよ。

 

世界最古の例は、イスラエルのGesher Benot Ya’aqov遺跡[注1]で発掘された磨かれた板の破片で、78万年前のものと見られているよ。ただ、これらはどれも小さなサイズの木材加工品だよ。

 

47万6000年前の木造建築物を発見?

カランボ川の遺跡群

カランボ川の周辺には、数十万年前の人類の活動の痕跡があるよ。今回の発掘調査ではいくつかの興味深い発掘物が見つかり、その中でも「オブジェクト1033」は非常に興味深かったよ! (画像引用元番号②③)

 

リバプール大学のLarry Barham氏などの研究チームは、この分野の研究におけるものすごい発見を報告したよ!場所はアフリカ大陸、ザンビアとタンザニアの国境にあるカランボ川 (Kalambo river) 周辺の遺跡群だよ。

 

この場所に古代人類の遺物があることは1950年代には既に知られていて、旧石器時代から現代まで人類が断続的に暮らしていたことが分かる遺物が見つかる貴重な場所として知られていたよ。

 

既にこれまでに、約40万年前の木材加工品のものと思われる木材や、他にもいくつかの木の破片が見つかっていたけど、年代が不確かだったり、人工的な加工という主張に異論があったりと、はっきりしない部分が多かったよ。

 

これほどまでに見つかるのは、近くにカランボ川があるという位置関係に理由があるよ。カランボ川はカランボ滝を終点にタンガニーカ湖に注いでいる川で、川の位置は昔からあまり大きく変わっていないと考えられているよ。

 

地層や過去の気候を調べる限り、川はほぼずっと水を湛えていたらしいので、その周辺に埋没したものは水の中に埋まり、酸素が遮断されて腐敗が停止するよ。このために本来腐りやすい木材が、数十万年も残ったみたいだね。

 

今回の研究は2019年の発掘調査中に見つかった発掘物を調査したよ。ザンビア側にある全部で4ヶ所の遺跡を発掘したところ、全部で6つの発掘物が見つかり、そのうち5つに加工したと観られる痕跡が見つかったよ!

 

オブジェクト1033の構造

オブジェクト1033は、もう1つの丸太と75度の角度で重なっているよ。その切り込みの形状は、別の丸太とピッタリ重なっているよ! (画像引用元番号①④)

 

その中で最も注目された発掘物は、BLB5遺跡で見つかった2本の丸太だよ。これは「コンブレツム・ツァイハーイ (Combretum zeyheri)」というシクンジの仲間の樹木であることが突き止められたよ。

 

オブジェクト1033 (Object 1033)」と名付けられたこの遺物は、もう1つの丸太に対して75度の角度で重なっていて、面白いことにその重なった部分に、木の年輪の断面が見えるへこみが見つかったよ!

 

ということは、これは丸太同士がうまく嚙み合うように、片方を削ってへこみを作り、お互いを組ませる木組み構造なのではないか、と考えられるわけだよ!

 

その大きさから、オブジェクト1033は木造建築物の一部であるとBarham氏らは考えているよ。そして光ルミネッセンス年代測定法[注2]による年代測定結果は47万6000年前 (±2万3000年前) のものという驚くべき値だよ!

 

これまでの考古学における最古の木造建築物の例は、イギリスのスカボロー近くのスター・カー遺跡 (Star Carr) で見つかった1万1000年前の例であることを考えれば、世界最古の例としてとてつもない更新だね!

 

また、その他の加工品も調べてみると、それはくさび、掘削棒、切断面のある丸太、切り込みのある枝といった、明らかな加工の跡がみられる木材加工品であることが分かったよ!これらは39万年前から32万4千年前のものだよ。

 

この木材は、一部は先述のコンブレツム・ツァイハーイだったけど、別の種類の木材である「ソーセージノキ (Kigelia africana)」であると同定されたよ。

 

この時代は、カランボ川周辺に森林が発達していたころと一致するので、木材が大量に存在していたから、その点でも木材加工品が大量に存在したと考えて不思議ではない、ということになるよ!

 

オブジェクト1033の加工の跡

オブジェクト1033の切り込み部分には、いくつか加工の痕跡があるよ。これは再現実験でも似たような痕跡が生じたことで、偶然や動物によるものである可能性を低くするよ。 (画像引用元番号③⑤⑥)

 

ただし一応、これらの木材加工品が、自然または動物によって偶然そんな形になっているという可能性も無いわけじゃないよね。その可能性が無いことを確認するために、Barham氏らは追加で検証を行ってみたよ。

 

今回見つかった木材と全く同じ木は用意できなかったので、ヨーロッパに存在する似たような硬さ (密度) を持つ木材[注3]を、この地域で採れる硬い岩石である珪石で加工する実験を行ったよ。

 

再現実験でも、丸太の切断などの大きな加工ができた上に、切断面や加工面についた傷が、現場で発掘された物の傷とよく一致していることが明らかにされたので、人類による加工品である可能性が高いと分かったよ!

 

古代の人類の暮らし方の考察にも影響!

カランボ滝遺跡群のその他の加工品

今回見つかった様々な加工品は、いずれもホモ・サピエンスが登場する以前の時代に作られたものだよ。今回の発掘調査では人骨化石は見つからなかったので正体ははっきりしないけど、ホモ・ハイデルベルゲンシスだと思われるよ。 (画像引用元番号③⑦)

 

オブジェクト1033が世界最古の木造建築物の一部である場合、これは人類史の研究においてとてもインパクトがあるよ。というのは、長年の旧石器時代のイメージを覆す重要な発見の1つだからだよ!

 

旧石器時代、人類は狩猟や採集で食べ物を得ていたと考えられるよ。これは農耕という技術が当時は存在しなかったからだけど、これは日常生活のスタイルをある程度決定づけるよ。

 

農耕ならば、畑を管理して、安定的に食料を得られる事から、同じ場所に長期間住む定住生活を送りやすいよ。一方で狩猟や採集が中心だと、食べ物を探すために広い範囲を移動しないといけないという問題があるよ。

 

そんなわけなので、旧石器時代の人類は特定の住居を持たず、あちこちを回る遊牧生活を送っていたと考えられていたよ。住居の証拠が見つからなかったことは、このイメージを後押ししたよ。

 

このために、人類が定住を行ったのは、農耕が始まったころである約1万年より前の時代ではないかと推定され、実際に各地の遺跡の発掘調査でもそのような発掘物が見つかっているよ。

 

ところが、今回は47万6000年前というぶっちぎりに古い木造建築の痕跡が見つかったことは、旧石器時代の人類はその地域に定住、または季節などの節目で移動する半定住生活を送っていたという1つの証拠になるよ。

 

一応、他の遺跡でも洞窟を利用した住居ではないかと思われる証拠は見つかっているけど、そういった自然物がない状況で建造物をわざわざ作っている、という点でこの発見はかなり驚きであると言えるよ!

 

というわけで、人類は旧石器時代には定住や半定住生活を送っていなかった、というこれまでのイメージは、そろそろ古いものとして書き換えられる可能性があるかもしれないよ!

 

ところで、さっきから説明では「人類」という言葉を使ってきたけど、この木造建築物を作ったのは、少なくとも現生人類のホモ・サピエンスではないよ。なぜならその時いなかったからね!

 

ホモ・サピエンスは約30万年前に出現したと考えられていることから、どう頑張っても47万6000年前に木造建築をすることはできないよ!では、この木造建築物は誰が作ったんだろう?

 

今回の発掘調査や過去の調査も含め、この遺跡群からは直接人類の種類を特定する化石が見つかっていないことから、確定的なことは何も言えず、論文でも具体的な人類の種名に言及してないよ。

 

ただし、周辺部では「ホモ・ハイデルベルゲンシス (Homo heidelbergensis)」[注4]の化石が見つかっており、時代も一致していることから、報道向けにはこの人類の可能性がある、とBarham氏らは説明しているよ。

 

いかなる人類であろうとも、ホモ・サピエンスが誕生する前から高度な加工技術があることが見つかったこと自体、この発見がとても重視されるものだね!

 

現生人類と太古に滅びた人類はどのような関係だったのか、どの人類がいつ高度な加工技術を得たのか、知能の発達はどのようだったのか。今回の発見はこれらの順番を組み立てる上でとても重要な発見だよ。

 

もちろん、この発見はもしかしたら住居ではなく、他の建築物の一部であるかもしれないよ。それらの可能性も含め、各地での考古学的発掘調査とお互いのクロスチェックは更に続けられていくことになるよ。

注釈

[注1] Gesher Benot Ya’aqov遺跡 ↩︎
直訳すれば「ヤコブの娘たちの橋遺跡」。同名の橋が近くにあることに由来する。きわめて古い人類の活動が見られる遺跡としてとても注目されている。

[注2] 光ルミネッセンス年代測定法 ↩︎
地層に埋没して光が遮断された鉱物粒子は、その後に光を浴びると発光する性質がある。その明るさは鉱物粒子が受けた放射線量、つまり埋没していた期間と一致する。これによって地層が光を浴びていなかった年代を推定するのが光ルミネッセンス年代測定法である。

[注3] 似たような硬さを持つ木材 ↩︎
再現実験では密度がほぼ同じ「セイヨウトリネコ (Fraxinus excelsior)」と「ヨーロッパニレ (Ulmus procera)」が使われた。

[注4] ホモ・ハイデルベルゲンシス ↩︎
70万年前から20万年前まで生息していたとされている人類の1種。ホモ・ハイデルベルゲンシスという独立した種であるのか、それともホモ・エレクトス (Homo erectus) の亜種であるホモ・エレクトス・ハイデルベルゲンシス (Homo erectus heidelbergensis) であるのかは議論がある。

文献情報

<原著論文>

  • L. Barham, et al. "Evidence for the earliest structural use of wood at least 476,000 years ago". Nature, 2023. DOI: 10.1038/s41586-023-06557-9

 

<参考文献>

 

<関連研究>

  • S. Belitzky, Naama Goren-Inbar & Ella Werker. "A Middle Pleistocene wooden plank with man-made polish". Journal of Human Evolution, 1991; 20 (4) 349-353. DOI: 10.1016/0047-2484(91)90015-N
  • Chantal Conneller, et al. "Substantial settlement in the European Early Mesolithic: new research at Star Carr". Antiquity, 2012; 86 (334) 1004-1020. DOI: 10.1017/S0003598X00048213
  • Geoff A.T. Duller, et al. "New investigations at Kalambo Falls, Zambia: Luminescence chronology, site formation, and archaeological significance". Journal of Human Evolution, 2015; 85, 111-125. DOI: 10.1016/j.jhevol.2015.05.003

 

<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

  1. オブジェクト1033の発掘状況: 原著論文Fig3

  2. カランボ川の遺跡群: 原著論文Fig1

  3. カランボ川の遺跡群で発掘された遺物: 原著論文Fig2

  4. オブジェクト1033の構造: 原著論文Fig4

  5. オブジェクト1033の加工の跡その1: 原著論文Extended Data Fig1

  6. オブジェクト1033の加工の跡その2: 原著論文Extended Data Fig2

  7. ホモ・ハイデルベルゲンシスの頭骨化石: WikiMedia Commons (Image Credit: José-Manuel Benito / CC BY-2.5)

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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