FGF21はアルコール急性中毒症状を抑える(3月7日Cell Metabolism掲載論文)

2023.03.18

FGF21については、すでに2−3回このHPで紹介してきた。


最も期待されているのは、代謝ホルモンとして脂肪分解を促進し、肥満を防止できる可能性だが、昨年2月に紹介したように、アルコールで誘導され、アルコール消費を抑える効果があるという報告を見て(https://aasj.jp/news/watch/19091)、その効果の多様性に驚いた。


今日紹介するテキサス大学からの論文は、同じようにアルコールとFGF21の関係を調べ、FGFがアルコール急性症状による脳機能低下を抑える働きがあることを示した研究で3月7日Cell Metabolismに掲載された。


タイトルは「FGF21 counteracts alcohol intoxication by activating the noradrenergic nervous system(FGF21はノルアドレナリン神経システムを刺激してアルコール中毒に対抗する)」だ。


この研究は、FGF21ノックアウトマウスにエタノールを投与し、起き上がり反射を指標に一種の酩酊状態からの回復を調べ、FGF21がないと回復が遅れることを発見している。すなわち、FGF21が急性アルコール中毒にも何らかの役割がある。


そこで、今度は正常マウスにアルコール急性中毒を誘導し、1時間後にFGF21を腹腔注射して酩酊状態からの回復を見ると、回復が2倍早くなる。一方、麻酔剤や精神安定剤などで同じ実験を行なってもFGF21の影響が見られないことから、アルコール特異的に働いている。


FGF21でアルコールの代謝速度が変化することはないので、以上の効果は全て脳への効果と考えられる。そこで、Fos分子の発現を指標にアルコールの効果を調べると、青班核のノルアドレナリン神経の一部が興奮し、この興奮はFGF21をノックアウトすると見られないことが分かった。


また、FGF21を注射しても、青班核のノルアドレナリン神経を興奮させる。


さらにFGF21刺激にはKlotho分子が必要で、この遺伝子を神経特異的にノックアウトさせたマウスでは、FGF21の反応が見られない。


最後に、神経特異的にノルアドレナリンが合成できないマウスを用いて、FGF21の効果がノルアドレナリンシナプスを介して起こっていることを証明している。


以上が結果をまとめると、アルコールは肝臓でのFGF21分泌を誘導し、これによって青班核のノルアドレナリン神経を刺激し、この神経がさまざまな領域で、酩酊から覚醒させるというシナリオになる。


アルコール中毒の特効薬として使われるようになるかどうかはわからないが、FGF21研究には目が離せない。

 

By西川伸一

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。