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「全国大会への期待値が高い」など、一般的な日本語の単語としても使われる「期待値」という言葉ですが、高校数学で学習する確率論の中の考え方の名前でもあります。今回は、高校数学における期待値について分かりやすく解説し、簡単な例題で理解を深められる内容です。期待値がよくわからないという方は、ぜひチェックしてみてください。
CONTENTS
期待値は、高校数学の「場合の数と確率」の分野で出てくる考え方です。
期待値を使いこなせるようになると、カードゲームやテーブルゲームなどより有利に進められたりするかもしれません。
また、期待値を理解することで、統計データを正しく読む力が身に付きます。
例えば、コインを1回投げることを考えましょう。
コインの表が出たときは1点、コインの裏が出たときは0点と設定します。
コインは表か裏がそれぞれ1/2の確率で出ますから、1回コインを投げると1点が入るか、0点になるかが、それぞれ1/2で発生します。
では、1回コインを投げた時に、何点得られると期待できるでしょうか?
普通であれば「1点か0点のどちらか」ということになります。
ですが、これをもっと数学的に捉えて「1回やってみたときに、どれくらいのスコアが期待できるか」と考えるのが期待値です。
それでは、期待値についてより詳しく説明していきます。
期待値は『確率変数のとる値に、対応する確率をそれぞれ掛けて加えた値』と表現されます。
ですが、こう書かれてもイメージしにくいでしょう。
まずは、先ほど例で挙げた、「コイントスして得点がもらえるかというゲーム」の話をしながら考えます。
コインを投げるとき、表が1点、裏が0点というルールでした。
このとき、得られる可能性のある最小の点数は0点であり、最大の点数は1点です。
点数は実際にコインを投げてみるまで確定しませんが、1回で得られる点数は0点もしくは1点です。
このように「やってみるまではどっち(どれ)が出るか確定していないけれど、どちらか(どれか)は必ず一定の確率で出るスコア」のことを、確率変数と言います。
また、コインは、投げる前から「投げれば表か裏が1/2ずつの確率で出る」ことが分かっています。
これらの話を組み合わせたうえで、最初に説明した期待値の定義に戻りましょう。
コイントスゲームの期待値は「確率変数のとる値に、対応する確率をそれぞれ掛けて加えた値」として表現されるので、
となります。
言葉で表現すると、
(裏が出たときの点数)×(裏が出る確率)+(表が出た時の点数)×(表が出る確率)=(コイントスゲームの期待値)
です。
それでは、さらに一般化してより数式に近付けていきます。
確率変数Xが取る値を【x1、x2、x3、…、xn】、それぞれの確率変数Xが得られる確率を【p1、p2、p3、…、pn】とすると、
と表わされます。
先ほどのコイントスの例に当てはめると、
確率変数Xは【0、1】、それぞれの確率変数Xが得られる確率は【1/2、1/2】なので、
と計算できます。
期待値には以下のような性質があります。
①確率変数が一定のものの期待値は、確率変数と等しくなる
例えば、両方とも表と判定されるコインがあるとしたら、コイントスの結果が表になる確率は100%です。
つまり、
となり、「期待値は1点」ということが確認できます。
逆に、両方とも裏と判定されるコインがあるとしたら、
となり、「期待値は0点」という計算結果が得られます。
②確率変数に加算・乗算すると、期待値も同様の加算・乗算した結果が得られる
コイントスゲームの際に、「コインを1回投げるだけで1点ゲット」という条件が付いたとします。
すると、確率変数X【0、1】から確率変数Y【0+1、1+1】に変化します。
結果、
となります。
同様に、「コインの点数が5倍」という条件が付いたとすると、確率変数X【0、1】から確率変数Z【0×5、1×5】に変化し、
となります。
③確率変数の和と、それぞれを独立した事象として捉えたとき期待値が等しくなる
コイントスゲームを2回行うときの期待値を考えます。
確率変数の和は、1回のコイントスゲームで得られる期待値の和なので、
です。
それぞれを独立した事象として捉えた時の期待値を計算すると、次のようになります。
確率変数Xが取る値は【0、1、2】、それぞれの確率変数Xを取る確率は【1/4(裏裏)、1/2(表裏、裏表)、1/4(表表)】なので、
このように、確率変数の和と、それぞれを独立した事象として捉えた時の期待値は等しくなります。
それでは、実際に簡単な例題を2つ挙げます。取り組んでみてください。
問1. サイコロを1個振った時に出る目の期待値を求めなさい。
答1.
サイコロの出目と確率は、それぞれ下の表のようになります。
ここから、
と計算できます。
よって、期待値は7/2です。
問2.
袋の中に、赤玉6個、白玉3個、青玉1個が入っている。
袋の中を見ずにこれらの中から1個だけ無作為に取り出したとき、赤玉を引くと0円、白玉を引くと300円、青玉を引くと1,000円、それぞれもらえる。
参加費が200円のとき、このゲームに参加するのは得か、期待値で判断しなさい。
答2.
袋の中にある玉の色と賞金額(確率変数)、それぞれを引く確率をまとめると、下の表のようになります。
これらの期待値を計算すると、
です。
ここから、このゲームに1回参加して得られる金額は、190円と期待できます。
今、このゲームの参加費は200円なので、
となり、10円損をすると判断します。
期待値は【確率変数(ある出来事が起きた時に得られるスコア)×確率(その出来事が起きる確率)の和】で求められます。
期待値は文章題で出てくることがほとんどなので、問題自体を読み間違わないように注意しましょう。
問題を解くときは、練習問題の答えで示したような確率分布表を作ると、簡単なミスを避けられます。
高校数学で勉強する期待値は不連続な(離散型)確率変数を使った計算です。
ゲームではコインやダイスを使うことも多いため、離散型確率変数の期待値計算が活きてくるでしょう。
一方で、現実社会では0か1だけでは表せない「微妙な数値」を確率変数として扱って、期待値を求めなくてはいけないことも少なくありません。
例えば、学校全体の身長のデータを採取するとき、1cm刻みの確率変数と考えるよりも、連続的なデータとして扱うほうが妥当です。
そのため、大学数学や統計学では、連続型確率変数を使った期待値も扱って、データを科学的に分析する手法を学びます。
発展的な学習を進めるためにも、まずは高校数学における期待値をしっかりとマスターしておきましょう。
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