一種類の細菌がリュウマチ性関節炎を誘導する(10月26日 Science Translational Medicine 掲載論文)

2022.11.07

このHPでも取り上げてきたが、リュウマチ性関節炎(RA)の原因を特定することは難しい。症状や自己抗体など臨床所見は似ていても、様々な原因で起こってくると考えていいと思う。


とはいえ、一つ一つRA を誘導する原因を特定することが予防や治療に大事なことは言うまでもない。


今日紹介するコロラド大学からの論文は、臨床所見から遡って RA を起こす細菌を特定した論文で、10月26日号の Science Translational Medicine に掲載された。


タイトルは「Clonal IgA and IgG autoantibodies from individuals at risk for rheumatoid arthritis identify an arthritogenic strain of Subdoligranulum(RA リスクの高い患者さん由来の IgA と IgG 自己抗体産生クローンは関節炎を誘導する細菌種 Subdoligranulum を特定した)」だ。


タイトルにある IgA/IgG クローン自己抗体というのは、これまでの RA 研究から生まれた概念だ。RA は様々な自己抗体出現がその特徴だが、末梢血中に現れる IgA/IgG 発現プラズマブラストが自己抗体を産生しているのではないかと考えられている。


この研究では、RA リスクの高い人、あるいは初期 RA 患者さんの末梢血からプラズマブラストを分離し、それが発現する抗体を96種類再構成して結合を調べるところから始めている。


期待通り、こうして再構成した多くの抗体が、RA で見られる様々な自己抗原と反応することから、プラズマブラストの出現が RA の初期段階にあることを示唆している。


これらの抗体を誘導する原因が腸内細菌にあるのではと着想し、再構成した抗体で腸内の細菌を染めてみると、多くの抗体が細菌叢と相互作用し、さらに一部の細菌は、抗体に強く反応する。


そこで、これらの細菌の全ゲノム解析から細菌種を絞っていくと、Subdoligranulum didolesgii にたどり着いている。


細菌が特定できると様々な実験が可能で、一番重要なのはこの細菌を移植するだけで RA が誘導されるか確かめる実験だ。この目的で、無菌マウス腸内に Subdoligranulum を移植すると、驚くなかれこれだけで RA が誘導された。


またこうして出来る RA では自己抗体とともに IgA も上昇、さらにこの細菌により刺激される Th1 や Th17 細胞が高まっている。


組織学的には、Subdoligranulum の移植により腸のリンパ濾胞が形成され、Th17 細胞が集まることも確認できる。


これまで RA に関わることが示唆されたバクテリアについても対照として検討しており、この細菌でも少しは炎症が誘導され、軽い関節炎に発展することがあるが、程度は全く異なることを示している。


最後に、RA のリスクが高い方の便中に Subdoligranulum が存在するか調べると、正常人には全く存在せず、一方 RA リスクの高い群では16%の人に発見されている。


以上が結果で、Subdoligranulum が全てを説明できるわけではないが、一種類の細菌を移植して RA が起こることがあることを示したことが重要だ。


今後は他にも同じような細菌が特定されるかも知れない。いずれにせよ、Subdoligranulum が正常人に存在しないとすると、この細菌は常在菌と言うより病原菌といった方がいいかもしれない。


そして、RA の中には感染症として捉えるべき(コロナだって重症化すると同じだ)ケースがあることも示唆している。

By西川伸一

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。