パーキンソン病リスクの遺伝子多型が発症に関わるメカニズムを解明する(8月19日号 Science 掲載論文)

2022.09.01

現在多くの病気のリスクについて、遺伝的多型がリストされているが、コモンバリアントの場合リスクレベルは高くないため、個々の多型の病気発症への関わりを解明することは簡単でない。


コーディング領域にアミノ酸変異があっても、コモンバリアントの場合、それがリスクにつながるメカニズムを特定することは難しいのに、ましてやコーディング領域外となるとさらに解析が困難になる。


今日紹介するペンシルバニア大学からの論文は、7番目の染色体にあるパーキンソン病(PD)のリスク遺伝子多型について、この困難な解析をやり遂げたお手本とも言える研究で、8月17日号の Science に掲載された。


タイトルは「GPNMB confers risk for Parkinson’s disease through interaction with a-synuclein(GPNMBはパーキンソン病リスクを αシヌクレインとの相互作用を介して高める)」だ。


この研究では PDリスク遺伝子多型の一つ rs199347を取り上げ、まずどの遺伝子の発現がこの多型で変化するかを探索している。


脳での発現、さらには異なる多型の染色体での遺伝子発現を別々に調べる方法(アレル特異的遺伝子発現検出法)などを駆使して、最終的に rs199347は膜タンパク質GPNMBの発現レベルに関わる可能性を突き止める。


次に、iPS細胞の遺伝子編集を用いて、GPNMBを片方、あるいは両方の染色体でノックアウトし、神経まで分化させた後、その影響を調べ、GPNMBが αシヌクレインと直接結合して、αシヌクレインの細胞内への取り込みに関わることを明らかにする。


以上の結果から、rs199347多型が PDリスク型の場合、GPNMBの発現が上昇し、その結果細胞外の αシヌクレインを取り込む量が高まることを示している。


実際、GPNMB発現が低下した神経細胞にαシヌクレインを線維化させて加えても、シヌクレインの細胞内取り込みが低下しているために、細胞内毒性が起こらないことを明らかにしている。


最後に、実際の患者さんで、rs199347多型と、GPNMB発現レベル、病気の程度などを相関させ、実際のPD発症にrs199347多型がGPNMBの発現量を変化させているか調べているが、一応相関は見られるものの、レアバリアントで見られるほど強い相関は示さない。


しかし、コモンバリアントについて、ここまで機能をしかもヒトの細胞で明らかにしたことは、高く評価していいと思う。


結果は以上で、GPNMBとαシヌクレインの結合を阻害する様な化合物が見つかれば、大ヒットになるかもしれない。

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。