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腸内細菌叢研究が大きく飛躍したのは、次世代シークエンサーを用いて存在する細菌の種類を原理的には完璧にとられられる様になったからだ。最初、複雑な中にも特定の法則を抽出できるのではと研究が進んだが、結局存在する細菌の種類を決めるだけでは、なかなか決定的なことが言えないことがわかってきた。
その結果、複雑な細菌叢の中でも重要な働きをしている細菌を特定して、その機能を深く追求する研究が、最も関心を引く分野になってきている。
それでも細菌叢の構成を決める法則性についての研究も続いている。というのも、例えば食品として摂取する細菌の動態を知る意味では、この方向の研究は欠かせない。そこで、最近発表されたこの方向性の研究を今日から2回に分けて紹介する。
最初はドイツ ハイデルベルグにあるヨーロッパ分子生物学研究所からの論文で、便移植により導入された細菌叢とホストの細菌叢のダイナミックスを追いかけることで、細菌叢成立の法則を探った研究で、9月15日 Nature Medicine にオンライン掲載された。
タイトルは「Drivers and determinants of strain dynamics following fecal microbiota transplantation(便移植後の細菌種のダイナミックスを決めるドライバーと要因)」だ。
私のような素人にとって、移植した細菌に印がついていないのに、本当にホストとドナーの細菌叢のダイナミズムを把握できるのか、今も理解できているわけではないが、移植前のレシピエントとドナーの細菌叢を把握しておけば、統計学的には可能なようだ。
いずれにせよ、膨大なデータで、図が複雑すぎて、本文のガイドがないと全く理解できないという状態なので、面白いと思った点を箇条書きにする。
まだまだ紹介し切れていないと思うが、要するに細菌叢の構成を調べるだけでは、便移植の最終的なエコロジーと病気の治療効果は予測できないほど、細菌叢は複雑だという話になる。
明日は、この複雑性をもう少し整理した人工細菌叢で代表させる話を紹介する。