頭が混乱するぐらい複雑な腸管での免疫系、細菌、そして栄養の関係(8月29日Natureオンライン掲載論文)

2022.09.23

先日は腸管内に複雑な樹状細胞(DC)系が存在し、その存在が免疫を高めるか抑えるかを決めていることを示す論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/20522)。


そして、慶応の本田さん達により明らかにされたように、DCやT細胞は細菌叢の中のSFBと呼ばれる特殊な細菌群により調節されている。


これだけでも複雑なのだが、今日紹介するコロンビア大学からの論文は、この免疫系と栄養との関わりを追求した論文で、読む側の頭をさらに混乱させるが、栄養と免疫を考える上で面白い研究だ。


タイトルは「Microbiota imbalance induced by dietary sugar disrupts immune-mediated protection from metabolic syndrome(食事の中の糖により誘導される細菌叢の不均衡がメタボリック症候群を防止する免疫系を消失させる)」で、8月29日Cellにオンライン掲載された(論文の筆頭著者のKawanoさんは慶応の内分泌内科所属になっている)。


この研究は、最初合成された高脂肪食(HFD)による肥満を抑える免疫系を特定すべく計画されている。マウスにHFDを摂取させると、Th17細胞が低下、逆にTh1細胞が上昇する。


これと同時に、Th17誘導に重要とされている細菌種SFBも消失する。


面白いことに、Th17細胞の誘導を操作したマウスを用いて同じ実験を行うと、Th17が欠損したマウスでは、HFDによりおこる肥満と代謝異常の程度が強い。


また、メタボになりやすいTh17マウスもCD4T細胞を移植することでメタボを防ぐことが出来る。一方、HFDによるTh17低下は、SFBを直接投与することでも防ぐことが出来る。


以上のことから、HFDにより起こる肥満は、栄養だけでなく、腸管内でSFBが減少し、Th17が低下することで、メタボリック症候群防御機構が低下することも要因であることを明らかにする。


では、HFDの何がTh17低下を招いているのか?追求していくと、驚くことに原因はHFD中の脂肪そのものではなく、なんとそこに加えられた砂糖が原因になっていることがわかった。


すなわち、砂糖を投与することで、SFBが減り、Th17が減る。


以上のことは、砂糖によりSFBの増殖が変化することを示すが、SFBのみを移植された無菌マウスでは砂糖の影響が全くないことから、砂糖により他の細菌が増え、結果SFBがTh17誘導に関われなくなる可能性を示している。


そして、最終的にErysipelotrichiaceaeと呼ばれるバクテリアが増殖して、SFBを粘膜上皮から引き剥がすことで、Th17誘導能がなくなることを示している。


最後にTh17がメタボリック症候群を抑える仕組みが問題になる。勿論全身の自然炎症を抑える役割がある可能性も捨てられないが、この研究では上皮の脂肪輸送に関わるCD36の発現をTh17が抑制することも示し、全身の影響だけでなく、脂肪の体内への移行を抑えることで、Th17が肥満防止に関わることを示している。


どんどん複雑になり、頭も混乱するが、これらの結果をもとに、メタボのない、バランスの取れた免疫系の維持方法について視診を出して欲しい。

By西川伸一

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。