ICS:FACSと顕微鏡イメージングを合体する (1月21日 Science 掲載論文)

2022.02.05

ドイツ留学以来一貫して、実験にはfluorescence activated cell sorter (FACS)のお世話になってきたし、自分たちでもFACSに使える様々なmAbを樹立してきた。


この間、処理速度やパラメーターの数など様々な改良が行われてきたが、これまでとは質的に異なるイノベーションは起こってこなかったように思う。


今日紹介するドイツにあるEMBLとFACSを提供する老舗ベクトン・ディッキンソンからの論文は、FACSに、これまで顕微鏡でしか見ることの出来なかった細胞内の構造を検出するシステムを合体させた、画期的な機器Image enabled cell sorting (ICS)についての開発研究で、1月21日号Scienceに掲載された。


タイトルは「High-speed fluorescence image–enabled cell sorting(蛍光イメージによる高速細胞ソーティング)」だ。


このICSは、2013年UCLAから発表されたFIREと名付けられた、細胞の形態を検出してソーティングを行うFIREという技術を基盤としている。フローシステムで細胞形態を分類できると、当然これまでのFACSとを組みあわせる可能性を探る。


FIREから10年近く経過しているが、FIREを開発したDieboldさんがベクトン・ディッキンソンに移って、EMBLと共同でこれを実現したと言えるのがICSになる。


技術についての詳細は全く理解していないが、一般的なフォトマルに加えて、フォトダイオードを用いて、形態や細胞内の蛍光イメージを検出できるようにしている。


フォトダイオードも2個用いて、光が細胞で遮られることによるスポットを用いた形態検出、また細胞そのもののイメージを合わせることで、より正確な形態が検出できるようになっている。


驚くのは、細胞内イメージという大きなデータを、他のデータと細胞形態上に、高速に合成する技術で、画像解析技術の進歩を実感する。


後は、細胞内の異なるオルガネラを染めた時、正確に画像が再建されていること、それを用いて細胞をソートできることを示した後、ICSによりこれまで難しかった課題が解決できることを示している。


細胞分裂は、顕微鏡イメージの染色体の分離やポジションに応じて、prometaphase, metaphase, anaphase, そしてtelophaseに分けられるが、これらが別々にソーティング可能になっている。


最後に、TNFなどのNFκBが活性化シグナルにより、RelAは核内に移行するが、この核内移行、およびその維持に関わる分子を、CRISPRを用いたスクリーニングで特定する実験系を設定し、RelAの核内移行が異常になった細胞をソートし、どの遺伝子がノックアウトされているのか検出する実験系が可能であることを示している。


結果は以上で、FACSを使ったことがある人なら、これがどれほど素晴らしいことか分かると思う。


今後実際の組織のように、異なるサイズの細胞が混在する条件で、どのぐらいの精度が得られるのかなど、製品までの検討項目は多いと思うが、大きなイノベーションが起こったという気がする。

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。