コーティング加工でも力を発揮する、フッ素樹脂とは?

2021.09.30

実験室や工場で使用する器具や容器、設備など。強い薬品や溶剤に耐えられなかったり、異物や汚れ等の付着に悩んでいたりしませんか?また、高温・低温下による作業でお悩みはございませんでしょうか。これらの問題を一気に解決してくれるのがPFA,PTFEなどの「フッ素樹脂」です。

フッ素樹脂とは?

フッ素樹脂とは、フッ素原子と炭素原子が結合して作られるプラスチックであり、化学的に安定した性質をもっています。ほかの素材にはない”6つの特性”をあわせもつ優れた樹脂です。この記事では、その6つの特性についてご紹介いたします。

フッ素樹脂が持つ6つの特性

それではフッ素樹脂が持つ”6つの特性”について、詳しく説明していきましょう。

① 耐薬品性
実験や製造工程で使用する薬品は、酸やアルカリ系など強い薬品をご使用される事が多々あります。

フッ素樹脂は、あらゆる薬品に対して高い耐性がある為、バルブ・継手やビーカーなど数多くのフッ素樹脂製品は、耐薬品性のご用途として安心してお使い頂けます。

 

② 非粘着性、撥水・撥油性
器具や容器、設備等に汚れや異物が付着すると、洗浄に手間が掛かったり、サンプルロスやコンタミの原因に繋がります。フッ素樹脂は、物理的に液体との接触角が大きい為、水滴や油、ベチャッとした粘着性のあるサンプルがくっつにくい(ぬれにくい) 性質があります。

代表的な製品としては、食品ラインのコンベアベルト等の搬送路の敷物として活用されている『フロログラスクロース』。ガラス内面にフッ素ナノコートを施した『ナス型フラスコ』等があります。

 

③ 低摩擦性 (すべり特性) 
実験室や工場には、重量物や滑らせたいものが必ずございます。フッ素樹脂は摩擦係数が低い為、滑りやすい性質を持ち合わせており、この特性を活用して機械等をスムーズに移動させることが可能です。また、摺動部等スペーサーとしても多く使用されております。

 

④ 耐熱・耐寒性 
ご使用される器具の対応温度が限られていると、作業工程が複雑になるケースがあると思います。フッ素樹脂は、素材自体「–100℃から+260℃まで」と幅広い温度で使用できる為、実験や生産工程で使いやすい素材です。
※あくまでも素材としてのご使用温度範囲になります。薬品・溶剤や圧力などでご使用可能な温度範囲は変動します。ご注意下さい。

 

⑤ 電気絶縁性 
ご使用されている器具に、電気をさえぎる特性を付加させたい場合、フッ素樹脂は有効な素材となります。プラスチック絶縁体の中でも最小の誘電率であり、15,000~20,000ボルトの高電圧でも絶縁抵抗をしめします。電気・電子部門での絶縁素材として数多くの実績があり、例えば、電線を固定するスパイラルチューブや熱収縮チューブ等が多く使用されております。

 

⑥ 耐候性 
屋外はどうしても”紫外線による劣化”や”雨による酸化”により、器具が使えなくる事があると思います。フッ素樹脂は、フッ素と炭素の強い結合を有している為、野外の厳しい環境下でも長く使用可能です。実験用の広口瓶といった小さな実験器具から、太陽電池用保護フィルムや屋根やドーム等の耐候膜まで、幅広く使用されております。

フッ素樹脂コーティングについて

コーティングとは「母材の表面に皮膜をつける表面処理技術」のことです。コーティングによって母材を保護するだけではなく、母材そのものの特性にコーティング剤の特性をプラスできるのが特徴です。これをフッ素樹脂で行うことをフッ素樹脂コーティングといいます。

ちなみに”皮膜”をつけることを「塗膜する」といい、同じく表面処理方法のひとつである”塗装”とは別のものです。

ブリスター現象

また、コーティングは消耗品となります。一度コーティングすれば半永久的に使えるというわけではありません。たとえば、コーティング皮膜よりも硬いものに接触すると、削れたり剥がれたりする可能性がありますし、皮膜内部に含まれる液体やガス錆などが原因で、皮膜が膨れてしまうことがあります。この現象を”ブリスター”と呼びます。(上記写真ご参照)

では、コーティングは一体どれくらい耐久性があるのでしょうか。コーティングの耐久性は、”ご使用環境”や”メンテナンスの状況”、”母材の形状”によって異なってきます。(母材の形状は、初回コーティング時において母材とコーティング剤との密着度に影響する為、非常に重要なPOINTになります)このようにコーティングの耐久性がどのくらいなのかは一概に言えませんが、おおまかには、塗装の耐久性に近いものと考えてよいでしょう。

コーティングする母材の推奨形状とは?

コーティングするのに適した母材の形状とは、丸みのある形状です。母材の凹凸部分がとがっていると、皮膜がうまくのらないため、均一な厚さで皮膜を形成するのが難しくなります。皮膜が薄いと薬品の浸透を受けて損傷する可能性があり、逆に皮膜が厚すぎると、厚い部分に大きなひずみが生じて、コーティングの剥離や割れ、ピンホールの原因となります。

ピンホールとは、皮膜の中の気泡が皮膜を破って外に出るときにできる、針で刺したような小さな穴のことです。この穴から薬品が浸透して母材が腐食したり、その腐食で生じた錆によってコーティングが剥がれることがあります。

身の回りにあるフッ素樹脂加工のフライパンや炊飯釜をみてもわかるように、コーティングにおいて均一な皮膜を形成するためには、母材の凹凸部分の曲線半径をできるだけ大きくとることが必要といえます。具体的には、厚膜加工の場合で、凸部では曲線半径5mm以上、凹部では曲線半径15mm以上あるとよいでしょう。

コーティングはどうやって作るの?

コーティングの方法のひとつに、「静電粉体塗装」があります。帯電させた粉末状の樹脂をスプレーガンで吹き付け、静電気によって被塗物である母材に付着させ塗布します。塗布した後、焼付け乾燥炉で樹脂を加熱、溶解させて塗膜を形成させます。100%固形分の粉末塗料なので、加熱の際に水分が気化してしまう液体塗料と違い、厚い膜を形成できるのが特徴です。環境にも配慮された塗装方法ですが、スプレーガンが入らない口の小さな形状や、口が小さく深さのある形状の母材にはコーティングできません。

また、スプレーガンが使えない場合には、「ディッピング(漬け込み)」という方法もあります。被塗物をコーディング液に浸して引き上げることによって塗膜する方法です。ただし、ディッピングが使えるフッ素樹脂のコーティングの種類はあまり多くありません。薄膜での処理しかできない事が弱点となります。

※コーティングに関して留意しておくべきことがあります。通常のフッ素樹脂コーティングでは、400度から500度での熱処理や、皮膜との密着度を高めるために、研磨剤の粒を母材の表面に噴射するブラスト加工という下地処理を行うので、母材に何らかの影響があります。熱処理では母材表面に酸化膜ができ、いわゆる焼き色がつきます。たとえば、ステンレスでは赤みがかった黄色になります。また、熱とブラストの処理によって母材にゆがみが生じるので、精度が重要なものは気をつけなければなりません。中空ロール形状の母材は、空気の抜け穴を設けないと破裂や変形の危険があるので特に注意が必要です。

フッ素樹脂のコーティング加工で、器具の問題を解決可能に!

フッ素樹脂は、コーティング加工も可能です。
金属・セラミック・ガラス・ゴム材(一部に限る)といった母材に対して、フッ素樹脂コーティング剤を均一に塗布して焼成させると、上記”6つの特性”が付加された製品が出来上がります。ご使用中の器具でお困りの際は、コーティング加工も視野に入れると問題解決につながることが多々ございますので、是非覚えてください。尚、コーティング剤は種類が多くそれぞれ特徴をもっておりますので、まずはご相談下さい。

(例)                                                     ◎1μm以下のナノコート超薄膜をコーティングすることで、透明性が高い”撥水・撥油性”効果をプラス
◎30~800μmの帯電防止コーティングすることで、樹脂の欠点である”帯電を防止する効果”をプラス

記事を監修いただいた株式会社フロンケミカル様では、お客様のご要望に合わせて、フッ素樹脂のコーティング加工を承っております。ご使用中の器具でお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。