期待できる新しい検査法2題(5月27日 Science Translational Medicine 掲載論文他)

2026.06.14

今日は臨床応用直前まで来ている新しい検査法についての論文を2報紹介する。いずれも Science Translational Medicine に掲載されており、translational research についてはレベルの高い研究がこの雑誌を選んでいるのがわかる。

 

本日紹介する論文①

最初のドイツ チュービンゲン大学からの論文は、5月27日に掲載されたシヌクレインを検出できる新しいPETプローブで、

 

タイトルは「The PET tracer [11 C]MODAG-005 targets alpha-synuclein aggregates in the brain(11C MODAF-0005 PETトレーサーは脳のαシヌクレイン凝集を検出する)」だ。

 

アルツハイマー病の Aβ-PET や Tau-PET が治療法の開発を促進しているように、パーキンソン病、レビー小体脳症、多系統萎縮のようなαシヌクレインの凝集による病気の臨床も、シヌクレインの凝集を追跡できるPETが開発されれば大きく進展すると予想される。

 

この研究グループはこれまでシヌクレインに結合する化合物を開発し、最終的に凝集αシヌクレインに結合活性が強い MODAG-005 を開発している。アイソトープラベルしたこのプローブ(005Pとする)が試験管内でヒトの病気から集めた異常シヌクレインに結合することを確かめた後、今度はPET用にC11アイソトープでラベルし、凝集シヌクレインを線条体に注射したラット、マウスのパーキンソン病モデルで特異的なPET検出が可能か確認している。そしてサルを用いて 005P が体内から速やかに排出されることを確認した後、患者さんを用いた検査を行っている。

 

多系統萎縮、パーキンソン病、多系統萎縮とパーキンソン病の合併した患者さんに C11-005P を注射して脳を調べている。正常人でも脳幹に集積が見られるが、それぞれの病気でははるかに強い集積が、期待される場所に見られることから、シヌクレイン症の経過を調べるトレーサーとして役立つと結論している。

 

本日紹介する論文②

次は中国広州中山大学からの論文は5月20日に掲載された、腎臓の線維化をモニターする検査方法の開発で、

 

タイトルは「Urinary fluorogenic reporters for noninvasive detection and staging of kidney fibrosis(尿中に排出される蛍光レポーターを用いた腎臓線維化の検出とステージングだ)」。

 

極めておもしろい発想の検査法で、線維化が始まるとマトリックスをクロスリンクする lysyl oxidase (LOX) と transglutaminase2 (TG2) が上昇する。これまでも尿中の TG2 を指標に移植腎の線維化が調べられたりしているが、定着していない。

 

この研究では Lox と TG2 が同時に発現している腎臓線維化を、しかも尿で調べることを目指し、最終的に Lox でコラーゲンのリジンに結合し、TG2 の作用で切断されるとそれまで蛍光が抑制されていたプローブの蛍光がオンになり、そのまま尿に排出されるという検査システムを開発した。

 

マウスを用いて、コラーゲンの産生上昇を伴う線維化が起こったときだけ、このプローブを注射すると、尿に2時間以上蛍光プローブが排出され続けること、また TG2 が発現しないと蛍光プローブは尿中に出ないことなどを確認した後、実際の検査に進んでいる。

 

腎臓バイオプシーで線維化を組織学的に調べた患者さんに、005P を投与、その後尿中の蛍光プローブの量を量ると、組織学的線維化程度に比例して、蛍光プローブの排出が上昇する。一方、これまでのクレアチニン、尿素窒素、eGFR等は線維化の程度を量的には反映していないことから、新しい方法は CKD の線維化を選択的に調べられる検査になると結論している。

両方とも期待できる。

著者紹介:西川 伸一

京都大学名誉教授。医学博士であり、熊本大学教授、京都大学教授、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長などを歴任した生命科学分野の第一人者である。現在はNPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン (AASJ) 代表理事を務めながら、1日1報、最新の専門論文を紹介する「論文ウォッチ」を連載している。

【主な活動場所】 AASJ(オールアバウトサイエンスジャパン)
オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。

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