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計算科学研究により、アルミ合金中で水素を吸蔵する化合物を発見しました。さらにアルミ合金の水素脆化の抑制・防止効果を実験的に確認しました。
水素脆化防止
広範な用途を有するアルミニウム合金材は、水素脆化割れが生じる問題があり、この問
題を解消することが提案されてきている(特許文献1~4参照)。
特許文献1には、質量%にて、Zn:4.0~6.7%、Mg:0.75~2.9%、
Cu:0.001~2.6%、Si:0.05~0.40%、Ti:0.005~0.2
0%、Fe:0.01~0.5%を各々含み、更に、Mn:0.01~0.7%、Cr:
0.02~0.3%、Zr:0.01~0.25%、V:0.01~0.10%の一種ま
たは二種以上を、1.0%≧Fe+Mn+Cr+Zr+V≧0.1%の関係を満足した上
で含み、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金組成を有するとともに
、導電率(%IACS)が、前記Fe、Mn、Cr、Zr、Vの合計含有量との関係で、
導電率(%)≧-4.9×(Fe+Mn+Cr+Zr+V)+40.0の関係を満足し、
かつ、0.2%耐力が275MPa以上である、耐水素脆化特性に優れた高圧ガス容器用
アルミニウム合金材が記載されている。
特許文献2には、Zn5.0~7.0%、Mg1.0~3.0%、Cu1.0~3.0%を含有し、かつCr0.05~0.3%、Zr0.05~0.25%、Mn0.05~
0.40%、Sc0.05~0.35%のうちから選ばれた1種もしくは2種以上を合計
量が0.05~0.5%の範囲内で含有し、さらに不純物としてSiを0.25%以下、
Feを0.25%以下に規制し、残部がAlおよびその他の不可避的不純物としたAl-
Zn-Mg-Cu系アルミニウム合金を用い、その鋳塊に、450~520℃の範囲内の
温度で1時間以上保持する均質化処理を行なった後、鋳塊を冷却する過程において、少な
くとも400℃までの平均冷却速度を100℃/hr以上に規制し、その後300~44
0℃の範囲内の温度で50mm以上の板厚まで熱間圧延を行なった後、溶体化処理・焼入
れおよび人工時効処理を施し、円相当径で5μmを越える金属間化合物の総面積率を2%
以下とした厚板を得る、強度および延性に優れたアルミニウム合金厚板の製造方法が記載
されている。
特許文献3には、Zn4.5~8.5wt%、Mg1.5~3.5wt%、Cu0.8
~2.6wt%を含有し、さらに、Mn、Cr、Zr、V、Tiを少なくとも1種類含有
し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金を鍛造によりHセクションを有する
鍛造材に成型するに際し、合金中のFe含有量を0.15wt%以下に規制するなどする
、対応力腐食割れ性に優れた高強度Al-Zn-Mg系アルミニウム合金鍛造材の製造方
法が記載されている。
特許文献4には、Zn5~8重量%、Mg1.2~4.0重量%、Cu1.5重量%を
越え4.0重量%以下、Ag0.03~1.0重量%、Fe0.01~1.0重量%、T
i0.005~0.2重量%、V0.01~0.2重量%を含有し、かつ、Mn0.01
~1.5重量%、Cr0.01~0.6重量%、Zr0.01~0.25重量%、B0.
0001~0.08重量%、Mo0.03~0.5重量%のうちの少なくとも1種または
2種以上を含み、残りアルミニウム及び不可避不純物からなる耐応力腐食割れ性に優れた
溶接構造材用高力アルミニウム合金が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2009-221566号公報
【特許文献2】特開2011-058047号公報
【特許文献3】特公平1-025386号公報
【特許文献4】特許第2915487号
しかしながら、航空機や宇宙産業に求められるレベルで水素脆化を十分に効果的に防止
ないし抑制できるアルミニウム合金材は知られていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、水素脆化を効果的に防止ないし抑制できるアルミニ
ウム合金材およびアルミニウム合金材の水素脆化防止剤を提供することである。
本発明によれば、特定の合金組成を有するアルミニウム合金材、または特定の第二相粒
子からなるアルミニウム合金材の水素脆化防止剤により、水素脆化を効果的に防止ないし
抑制できることを見出し、上記課題を解決した。
このような合金は、新規な合金である。特許文献1~4には、JIS H 4100:
2014「アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」の合金番号7050において
Fe量が規定量よりも高いが、いずれも本発明のアルミニウム合金材の範囲外である。
例えば、特許文献1の表1の発明例6の組成はSi:0.21質量%、Fe:0.28質
量%などであり、許文献2の第11頁表1の合金Aの組成はSi:0.21質量%、Fe :0.28質量%などであり、特許文献3の第4頁第1表の試料4の組成はSi:0.1
0質量%、Fe:0.19質量%などであり、特許文献4の第4頁第1表の比較合金10
の組成は、Si:0.10質量%、Fe:0.20質量%などであるが、これらはいずれ
も本発明のアルミニウム合金材の範囲外である。 上記課題を解決するための具体的な手
段である本発明の構成と、本発明の好ましい構成を以下に記載する。
[1] アルミニウム合金組成が、下記アルミニウム合金組成(1)~(7)のいずれか
である、アルミニウム合金材。
アルミニウム合金組成(1)
Si:0.30質量%以下、Fe:0.35質量%超、Cu:0.20質量%以下、M
n:0.20~0.70質量%、Mg:1.0~2.0質量%、Cr:0.30質量%以
下、Zn:4.0~5.0質量%、V:0.10質量%以下、Zr:0.25質量%以下
、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(2)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.15質量%超、Cu:1.5~2.0質量%、
Mn:0.10質量%以下、Mg:2.1~2.6質量%、Cr:0.05質量%以下、
Zn:5.7~6.7質量%、Ni:0.05質量%以下、Zr:0.10~0.16質
量%、Ti:0.06質量%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(3)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.25質量%超、Cu:2.0~2.6質量%、
Mn:0.10質量%以下、Mg:1.9~2.6質量%、Cr:0.04質量%以下、
Zn:5.7~6.7質量%、Zr:0.08~0.15質量%、Ti:0.06質量%
以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(4)
Si:0.40質量%以下、Fe:0.50質量%超、Cu:1.2~2.0質量%、
Mn:0.30質量%以下、Mg:2.1~2.9質量%、Cr:0.18~0.26質
量%、Zn:5.1~6.1質量%、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含
む 。
アルミニウム合金組成(5)
0.7質量%<Si+Fe、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.10質量%以下、
Mg:0.10質量%以下、Zn:0.8~1.3質量%であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(6)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.12質量%超、Cu:2.0~2.6質量%、
Mn:0.06質量%以下、Mg:1.9~2.6質量%、Cr:0.04質量%以下、
Zn:5.7~6.7質量%、Zr:0.08~0.15質量%、Ti:0.05質量%
以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(7)
Si:0.40質量%以下、Fe:0.50質量%超、Cu:1.6~2.4質量%、
Mn:0.30質量%以下、Mg:2.4~3.1質量%、Cr:0.18~0.28質
量%、Zn:6.3~7.3質量%、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含
む 。
[2] アルミニウム合金組成が、アルミニウム合金組成(3)である、[1]に記載の
アルミニウム合金材。
[3] 半整合析出物界面よりも高い水素トラップエネルギーを有する第二相粒子を含む
、[1]または[2]に記載のアルミニウム合金材。
[4] 第二相粒子がAl 7 C u 2 Fe粒子である、[3]に記載のアルミニウム合金材
。
[5] アルミニウム合金材の水素脆化を防止でき、
Al 7 C u 2 Fe粒子からなる、アルミニウム合金材の水素脆化防止剤。
[6] 下記アルミニウム合金組成(A)であるアルミニウム合金材の水素脆化を防止できる、[5]に記載のアルミニウム合金材の水素脆化防止剤。
アルミニウム合金組成(A)
Si:0.40質量%以下、Cu:2.6質量%以下、Mn:0.70質量%以下、M
g:3.1質量%以下、Cr:0.30質量%以下、Zn:7.3質量%以下、Ti:0
.20質量%以下であり、さらにFeおよびAlを含む。
[7] 下記アルミニウム合金組成(1)~(7)のいずれかであるアルミニウム合金材
の水素脆化を防止できる、[5]または[6]に記載のアルミニウム合金材の水素脆化防
止剤。
アルミニウム合金組成(1)
Si:0.30質量%以下、Fe:0.35質量%超、Cu:0.20質量%以下、M
n:0.20~0.70質量%、Mg:1.0~2.0質量%、Cr:0.30質量%以
下、Zn:4.0~5.0質量%、V:0.10質量%以下、Zr:0.25質量%以下
、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(2)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.15質量%超、Cu:1.5~2.0質量%、
Mn:0.10質量%以下、Mg:2.1~2.6質量%、Cr:0.05質量%以下、
Zn:5.7~6.7質量%、Ni:0.05質量%以下、Zr:0.10~0.16質
量%、Ti:0.06質量%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(3)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.25質量%超、Cu:2.0~2.6質量%、
Mn:0.10質量%以下、Mg:1.9~2.6質量%、Cr:0.04質量%以下、
Zn:5.7~6.7質量%、Zr:0.08~0.15質量%、Ti:0.06質量%
以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(4)
Si:0.40質量%以下、Fe:0.50質量%超、Cu:1.2~2.0質量%、
Mn:0.30質量%以下、Mg:2.1~2.9質量%、Cr:0.18~0.26質
量%、Zn:5.1~6.1質量%、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含
む 。
アルミニウム合金組成(5)
0.7質量%<Si+Fe、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.10質量%以下、
Mg:0.10質量%以下、Zn:0.8~1.3質量%であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(6)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.12質量%超、Cu:2.0~2.6質量%、
Mn:0.06質量%以下、Mg:1.9~2.6質量%、Cr:0.04質量%以下、
Zn:5.7~6.7質量%、Zr:0.08~0.15質量%、Ti:0.05質量%
以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(7)
Si:0.40質量%以下、Fe:0.50質量%超、Cu:1.6~2.4質量%、
Mn:0.30質量%以下、Mg:2.4~3.1質量%、Cr:0.18~0.28質
量%、Zn:6.3~7.3質量%、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含
む 。
[8] 下記アルミニウム合金組成(A1)~(A7)のいずれかであるアルミニウム合
金材の水素脆化を防止できる、[5]または[6]に記載のアルミニウム合金材の水素脆
化防止剤。
アルミニウム合金組成(A1)
Si:0.30質量%以下、Fe:0.35質量%以下、Cu:0.20質量%以下、
Mn:0.20~0.70質量%、Mg:1.0~2.0質量%、Cr:0.30質量%
以下、Zn:4.0~5.0質量%、V:0.10質量%以下、Zr:0.25質量%以
下、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(A2)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.15質量%以下、Cu:1.5〜2.0質量%
、Mn:0.10質量%以下、Mg:2.1〜2.6質量%、Cr:0.05質量%以下
、Zn:5.7〜6.7質量%、Ni:0.05質量%以下、Zr:0.10〜0.16
質量%、Ti:0.06質量%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(A3)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.15質量%以下、Cu:2.0〜2.6質量%
、Mn:0.10質量%以下、Mg:1.9〜2.6質量%、Cr:0.04質量%以下
、Zn:5.7〜6.7質量%、Zr:0.08〜0.15質量%、Ti:0.06質量
%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(A4)
Si:0.40質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Cu:1.2〜2.0質量%
、Mn:0.30質量%以下、Mg:2.1〜2.9質量%、Cr:0.18〜0.26
質量%、Zn:5.1〜6.1質量%、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを
含む。
アルミニウム合金組成(A5)
Si+Fe≦0.7質量%、Cu:0.10質量%以下、Mn:0.10質量%以下、
Mg:0.10質量%以下、Zn:0.8〜1.3質量%であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(A6)
Si:0.12質量%以下、Fe:0.12質量%以下、Cu:2.0〜2.6質量%
、Mn:0.06質量%以下、Mg:1.9〜2.6質量%、Cr:0.04質量%以下
、Zn:5.7〜6.7質量%、Zr:0.08〜0.15質量%、Ti:0.05質量
%以下であり、さらにAlを含む。
アルミニウム合金組成(A7)
Si:0.40質量%以下、Fe:0.50質量%以下、Cu:1.6〜2.4質量%
、Mn:0.30質量%以下、Mg:2.4〜3.1質量%、Cr:0.18〜0.28
質量%、Zn:6.3〜7.3質量%、Ti:0.20質量%以下であり、さらにAlを
含む。
本発明によれば、水素脆化を効果的に防止ないし抑制できるアルミニウム合金材および
アルミニウム合金材の水素脆化防止剤を提供することができる。
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