畳んで運べる緊急仮設橋:縦横に伸縮するパネルユニット

2024.08.08 By 信州大学

機械工学

技術概要

高強度かつ長スパン化が図られたシザース構造のパネルユニットである。このパネルユニットは折り畳み可能であり、組み合わせることによって長さ調整を実現できるため、機動力の高い応急仮設橋や宇宙構造物への応用が考えらる。豪雨災害等による橋梁の崩落時への備えとして、本技術の活用をご検討ください。

用途・応用

仮設橋、仮設施設

背景

本発明者等は、これまでに、展開構造物の1つであるシザーズ機構を用いて、災害によ
り流出した小規模な橋梁の代替路となる仮橋(1段シザーズ)の研究開発をしてきた(非
特許文献1、2、図7下段左側参照)。また、ケーブル材を併用した吊りシザーズを採用
することで、シザーズ橋の大型化の可能性を明示してきた(図7上段右側参照)。

 シザーズ構造は、X状に交差配置した一対のリンクが交差位置に形成したピン節点を中
心として開閉可能となったものであり、これを直線状に一列に配列した構成の1段シザー
ズを用いて橋梁が構築される。シザーズ構造の部材は、材軸方向に折り畳まれた状態(縮
めた状態)で仮橋の設置場所まで搬送し、設置場所において材軸方向に展開(伸長)して
設置できるので、搬送が容易であり、施工性にも優れている。このようなシザーズ構造の
伸縮橋は、例えば、特許文献1、2において提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】

【 非 特 許 文 献 1 】 K. Chanthamanivong, I. Ario, Y. Chikahiro: Smart design of coupl
ing scissors-type bridge, Structures, 30, 206-216, 2021.
【 非 特 許 文 献 2 】 Y. Chikahiro, I. Ario, P. Pawlowski C. Graczykowski, J. Holnicki
‐ Szulc: Optimization of reinforcement layout of scissor type bridge using diffe
rential evolution algorithm, Computer-Aided Civil and Infrastructure Engineering
, 34(6), 523-538, 2019.
【特許文献】

【特許文献1】特開2014−145203号公報
【特許文献2】国際公開第2015/193930号

課題

 ここで、流出被害の絶えない中規模な橋梁でも迅速に復旧できる仮橋が必要とされる。
中規模な橋梁の仮橋の場合においても、災害後の初動対応で迅速に仮橋を架けるためには
、現場における橋梁部材の搬入量や組立作業量をいかに減らすかが重要である。このため
、既往の研究では対象とされていない中規模な橋梁のための仮橋にも、シザーズ構造の橋
梁を用いることが考えられる。

 図7に示したように、シザーズ構造は直線的に並べることで小規模な橋梁に応用でき、
ケーブル材と併用することで吊り橋のように大型化が可能であるが、中規模な橋梁への適
用には、簡易施工性や強度の観点から難しい。例えば、シザーズ構造から構成される仮設
用の橋梁用構造材として、横方向だけでなく上下にシザーズ構造を配列した構成の多段シ
ザーズを用いることで、必要な強度を確保することが考えられる。しかしながら、シザー
ズ構造を単に多段化した場合、それに伴って使用材料、重量が増加し、製造コストも増加
する。また、設置場所において重量のある多段シザーズ構造の部材を展開して橋梁として
設置する際の施工性も低下する。

 このような課題は、橋梁用構造材として多段シザーズ構造の部材を用いる場合に限らず
、構造物構築用の梁材、桁材等の構造用部材として、その部材強度を高めるために多段シ
ザーズ構造の部材を用いる場合においても発生する。

 本発明の目的は、このような点に鑑みて、一段シザーズ構造の部材に比べて強度を高めて長スパン化でき、かつ、多段シザーズ構造の部材に比べて強度低下を抑制しつつ軽量化
および施工性を改善できるシザーズ構造のパネルユニット、および当該パネルユニットを
縦横に連結した構成の伸縮パネルを提供することにある。

 また、本発明の目的は、かかる伸縮パネルを被災現場で展開し、それを現場で幾つか組
み合わせていくことで、少人数かつ簡単に構築できる中規模程度の仮橋であるパネル型シ
ザーズ橋を提供することにある(図7参照)。

手段

 上記の課題を解決するために、本発明のシザーズ構造のパネルユニットは、
 縦方向および横方向に伸縮可能なシザーズ構造の矩形枠を備え、
 前記矩形枠の四辺は、左右の縦枠材および上下の横枠材によって規定され、
 前記縦枠材および前記横枠材のそれぞれは、一方向に直線状に配列された複数組の単位
シザーズを備えており、
 前記単位シザーズは、前記矩形枠の一対の対角線の方向に沿ってX状に交差配置された
一対のリンクを備え、これらのリンクの交差部が相互に連結されて、交差部ピン節点を形
成しており、
 前記縦枠材および前記横枠材における隣接配置されている一対の前記単位シザーズの間
においては、逆方向に傾斜する前記リンクの端が相互に連結されて、それぞれ矩形枠外周
縁に沿って配列された外周縁側ピン節点および矩形枠内周縁に沿って配列された内周縁側
ピン節点を形成しており、
 前記矩形枠の四隅のそれぞれに位置する前記単位シザーズは、前記縦枠材の端に位置す
る前記単位シザーズと、前記横枠材の端に位置する前記単位シザーズとを兼用する共通の
単位シザーズであることを特徴としている。

 本発明のパネルユニットは、上記構成の矩形枠が縦方向あるいは横方向に連結された二
連パネルユニットあるいは多連パネルユニットとすることができる。例えば、横方向に連
結された複数組の矩形枠からパネルユニットが構成される。この場合には、横方向に連結
された隣接する前記矩形枠の間に位置する縦枠材が、一方の矩形枠の縦枠材と他方の矩形
枠の縦枠材とを兼用するように、矩形枠が相互に連結される。

効果

 本発明では、これまで梁構造物のように直線配置されたシザーズ構造(一段シザーズ)
を、トラス構造物のように上弦材・下弦材・斜材を意識したシザーズ構造のパネルユニッ
トを用いて伸縮パネルを構成することで、各部に生じる負荷を適切に分散させて、一段シ
ザーズ構造の部材に比べて強度を高めて長スパン化を図ると共に、多段シザーズ構造の部
材に比べて強度の低下を抑制しつつ軽量化および施工性の改善を図っている。予め組み上
げた伸縮パネルを被災現場で展開し、それを現場で幾つか組み合わせていくことでパネル
型橋梁部材を施工できる。よって、少人数かつ簡単に、中規模程度の仮橋を構築すること
が可能となる。

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特許情報

特願2022-038977

JPA 2023133785-000000