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バクテリアで合成しても活性が維持されるラマやラクダのH鎖抗体遺伝子を組み込んだバクテリアを、ガン局所に投与して、ガン細胞を貪食させる活性を上げたり(https://aasj.jp/news/watch/10496)、チェックポイント治療を局所で行う治療法(https://aasj.jp/news/watch/12384)についてはすでに紹介した。
この背景には、ウイルスなどよりはるかに安価に大量生産が可能なバクテリアを使うことで、ガンの免疫治療をより身近で出来る期待がある。その意味で、早く実現して欲しいし、もっと多くの方法が開発されることを願っている。
今日紹介するスイス・ルガノ大学からの論文は、バクテリアをガン局所に送り込んで、代謝を変化させることでキラー活性を高め、ガンを抑制するという研究で、10月6日Natureにオンライン掲載された。
タイトルは「Metabolic modulation of tumours with engineered bacteria for immunotherapy(免疫治療のために操作したバクテリアを用いてガンの代謝を変化させる)」だ。
同じグループはL-アルギニンを投与するとガンに対する免疫を高められることを2016年Cellに発表している(http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2016.09.031)。メカニズムとしては、特に活動性の高いキラーT細胞の糖分解を抑え、ミトコンドリアの酸化的リン酸化を高める作用がアルギニンに存在し、さらにアルギニンを感知する転写因子を介して細胞死が抑制されることで、メモリー型のT細胞が多く合成されるという話だった。実際、メトフォルミンがガン免疫を高めるという話も、同じラインの話になる。
それならなぜアルギニン投与が普及しないのか不思議だが、2-16年の実験で使われたアルギニン量は、人間にするとなんと一日150gで、現実的ではなかった。もちろんガン局所への投与も行われているが、拡散が早くて効果はほとんどなかったようだ。
そこでこのグループは、体内に注射しても毒性が少ない大腸菌のアルギニン合成系を操作して、ガン細胞から発生するアンモニアを利用して局所でアルギニンを合成できるバクテリアを遺伝子操作で合成している。
原理については2016年にすでに確認しているので、後は期待通り働くかだけが問題になる。残念ながら全てマウス実験系の話だが、
以上が結果で、人間の場合根治という贅沢は望まないでもいいので、是非治験を進めて安価なガン免疫治療につなげて欲しい。
さて2回バクテリアとガンについての論文を紹介して、なんと2編ともイタリア語圏のスイスからの論文であることに気づいた。これに意味があるのかどうかは全くわからないが、偶然にしても面白い。