高温(200-600℃)で使用可能な低消費電力の耐熱磁気センサ

2022.08.03 By 日本原子力研究開発機構

材料工学

技術概要

高温(200-600℃)で使用可能な低消費電力の磁気センサです。高キュリー温度の材料を使用しています。

用途・応用

スイッチ、センサ

背景

 フラックスゲート型磁気センサは、次のような測定原理で外部磁界(測定磁界)を測定する。先ず、磁気コアに巻回した励磁コイルに交番励磁電流(例えば、三角波状の電流)を流して外部磁界と平行に励磁(交番)磁界(例えば、三角波状の磁界)を発生させる。

 磁気コア内には、この励磁磁界と外部磁界の重畳磁界による磁束が生じ、励磁磁界と外部磁界の重畳磁界により磁気コア材が十分に飽和されている磁界領域では交番励磁電流が変化しても磁束の大きさは変化しない。磁束の大きさが変化しない時間は、外部磁界が作用していない状態では励磁磁界の正負によらず等しいが、外部磁界が作用している状態では外部磁界強度に比例して励磁磁界の正負時に差が生じるため、この時間差を用いて外部磁界強度を求めることができる。

 このような従来のフラックスゲート型磁気センサの磁気コアには、軟磁性特性を有するパーマロイ等の磁気材料が用いられている。これらの磁気材料は、非磁気飽和領域では大きな微分透磁率(dB/dH)を有し、且つ小さい励磁磁界強度で急激に磁気飽和が生じて微分透磁率が略零となることから、磁気コアの微分透磁率に比例した電圧を出力する検出コイルを用いて該検出コイルの出力電圧の立ち上がり位置に着目することにより容易に磁気飽和を判定することが可能である。

 一方、フラックスゲート型磁気センサの耐熱性向上策として、200℃~600℃の耐熱性を有する磁気センサを実現するために、キュリー温度の高い磁気材料(例えば、Co-Fe系材料等)を用いる場合、これらの磁気材料は、一般的に、磁気飽和に至る領域での微分透磁率の変化が緩やかであることから、検出コイルの出力電圧の立ち上がり位置を用いて磁気飽和を判定することが困難である。更に、保磁力や磁気飽和に必要な励磁磁界強度が大きくなり、励磁電流が大幅に増加するという問題がある。

 なお、励磁電流の低減策については、特開2010-127889号公報及び特開2004-184098号公報に開示されているように、磁気コアの一部にくびれ部を形成し、このくびれ部で磁束集中(磁気飽和)を生じさせることで対処する方法が提案されている 。

 しかしながら、Co-Fe系材料は、磁気飽和に必要な励磁磁界強度が大きいことから、くびれ部による磁気集中によって磁気飽和させようとする場合、くびれ部と非くびれ部の面積比を極めて大きくする必要があり、それでもなお大きな励磁電流を必要とする問題がある。

課題

 本発明が解決しようとする課題は、次の通りである。

 高温環境(200℃~600℃)において安定した磁気測定を行うことができる耐熱磁気センサを実現する。

 原子力発電プラント等の高温環境及び放射線環境において安定した磁気測定を行うことができる耐熱磁気センサを実現する。

 高温環境や高温且つ放射線環境で使用される静的機器の劣化診断を目的とした機器構成材料の電磁気特性の定期的または継続的なその場測定を安定して行うことができる耐熱磁気センサを実現する。

 高温環境において使用することができる磁界変動に応動する非接触型のスイッチやカウンターを構成するための耐熱磁気センサを実現する。 

手段

 本発明は、軟磁性体により長方形状又は角丸長方形状のループ形状に形成され、その一部にくびれ部を備えた磁気コアに励磁コイルと検出コイルを巻回して構成し、前記励磁コイルに 周 波 数 が 1 0 H z 以 上 1 k H z 以 下 の 交番励磁電流を流し、前記検出コイルの出力電圧に基づいて前記磁気コアに作用している外部磁界の強度を 2 0 0 ℃ ~ 6 0 0 ℃ の 高温 環 境 で 計測する耐熱磁気センサ で あ っ て 、前記磁気コアは、600℃以上のキュリー温度を有するCo-Fe系の軟磁性体により一体型に形成され、かつ前記長方形状又は角丸長方形状の長辺の1辺にくびれ部が形成され、前記励磁コイルは、前記くびれ部が設けられていない他方の長辺に巻回され、前記検出コイルは、くびれ部を設けた前記長辺を除いた部分に巻回され、前記検出コイルから出力される出力電圧の正/負ピーク間と負/正ピーク間の時間間隔差又は前記時間間隔差と励磁周期の比を評価することにより、前記磁気コアの長辺方向に作用する外部磁界強度を測定するように構成する。

 前記検出コイルは前記励磁コイルを兼用した構成とすることもできる。

効果

 本発明の耐熱磁気センサは、磁気コアにキュリー温度が600℃以上のCo-Fe系材料(例えば、パーメンジュール)等を使用し、磁気コア形状、コイル配置位置、検出原理について工夫を施すことにより、消費電流の増加を抑制し、小型化を可能とし、また、高温環境での磁界強度の測定を可能にし、更に、感磁素子に半導体を使用していないことから放射線環境での磁界強度の測定も可能にすることができた。

 具体的には、磁気コア形状については、ループ状にすることで、励磁磁界により磁気コア内に磁極が発生しない構成としたことにより、反磁界による励磁磁界強度の低下を防ぐことができた。更に、磁気回路を長方形状の閉ループとすることで、比較的機械強度の高い非くびれ部に検出コイルを設けることを可能とし、磁気センサの小型化が可能となった。また、外部磁界(測定磁界)方向に長い長方形または角丸長方形の形状としたことにより、外部磁界により磁気コア内に生じる磁極による反磁界の影響を低減することができた。また、長方形の長辺部にくびれ部を設けることにより、より小さい励磁電流で略磁気飽和の状態に至らせること、更に、微分透磁率のピーク位置をより明確にすることが可能になった。なお、くびれ部の形状に関しては、非くびれ部と比較して断面積が小さければ、断面積形状や長さは影響しないことが分かった。 

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特許情報

特許第6206863号
特開2019-184338
2件共願:日鉄テクノロジー㈱

JPB 006206863-000000