バクテリアセルロース膜カプセルの製造方法

2022.07.20 By 日本大学

材料工学

技術概要

粒径1μm以上の粒子を内包させることができる、バクテリアセルロース膜カプセルの製造方法。

用途・応用

セルロースカプセル

背景

 微生物がセルロースを生産するという事実は、100年以上前にA.J.Brownによって報告されている。微生物により生産されるセルロースは、一般にバクテリアセルロース又はバイオセルロースと呼ばれている。

 微生物により生産されるセルロース(以下、「バクテリアセルロース」という)は、植物由来のセルロースには見られない優れた性質を持つことで知られている。例えば、植物由来のセルロースは、一般的に、リグニン及びヘミセルロース等の不純物を含む。これに対して、バクテリアセルロースは、不純物が少なく、ほぼ純粋なセルロースのみで構成される。また、バクテリアセルロースは、植物セルロースの繊維幅に比べて100分の1から1000分の1と言われるほど細い繊維幅を有すること、水素結合の強さや面配向性に起因した高いヤング率を有すること、液晶を形成することなど、物質としての高付加価値的特性が存在する。

 このようなバクテリアセルロースの特性を活用し、工業及び医療分野等における様々な利用研究が進められている。このような利用研究の実用化のためには、種々の形状のバクテリアセルロースを得ることが必要である。バクテリアセルロースの形状は、通常、セルロース産生菌の培養時に使用する容器形状に規定される。そのため、従来、中空球状のバクテリアセルロースの製造は困難であった。しかしながら、本発明者らは、疎水性媒体中でセルロース産生菌を含む培養液滴を形成して培養することで、中空球状のバクテリアセルロース膜の製造に成功している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2014-121314号公報

 

課題

 特許文献1に記載のバクテリアセルロース膜は、セルロース繊維の3次元網目構造からなるゲル膜で構成されている。3次元網目構造の孔サイズよりにも小さい粒子は、Fickの拡散モデルに従い、前記3次元網目構造を透過して中空球状バクテリアセルロース膜内の空間に移動可能であるが、粒径1μm以上の粒子は、前記3次元網目構造を透過することができない。そのため、粒径1μm以上の粒子を内包した球状バクテリアセルロース膜は製造することができなかった。

  一方、特許文献1に記載の方法において、セルロース産生菌の培養液に粒子を分散させておくことも考えられる。しかしながら、界面活性剤などの分散安定剤を用いることなく、粒子を安定に分散させておくことは難しく、分散安定剤を用いた場合、セルロース産生菌の生育が阻害される。そのため、培養液に粒子を分散させる方法では、中空球状バクテリアセルロース膜内に、粒径1μm以上の粒子を内包させることはできない。

 そこで、本発明は、粒径1μm以上の粒子を内包させることができる、バクテリアセルロース膜カプセルの製造方法、当該方法により製造されるバクテリアセルロース膜カプセル、及び前記バクテリアセルロース膜カプセルを含む医薬組成物を提供することを目的とする。

手段

 本発明は以下の態様を含む。
[1]粒径1μm以上の粒子を含む粒状ゲルを作製する工程Aと、前記粒状ゲルを含む、セルロース産生菌の培養液滴を作製する工程Bと、前記培養液滴を疎水性媒体中で培養し、前記培養液滴と前記疎水性媒体との界面でバクテリアセルロース膜を形成させて、前記粒状ゲルを内包する球状バクテリアセルロース膜を得る工程Cと、前記球状バクテリアセルロース膜に内包される前記粒状ゲルを溶解する工程Dと、を含む、バクテリアセルロース膜カプセルの製造方法。
[2]前記球状バクテリアセルロース膜から、前記疎水性媒体を除去する工程Eをさらに含む、[1]に記載のバクテリアセルロース膜カプセルの製造方法。
[3]前記球状バクテリアセルロース膜から、前記セルロース産生菌を除去する工程Fをさらに含む、[1]又は[2]に記載のバクテリアセルロース膜カプセルの製造方法。
[4]球状バクテリアセルロース膜と、粒径1μm以上の粒子と、を含み、前記粒子は、前記球状バクテリアセルロース膜により区画される内部空間に存在する、バクテリアセルロース膜カプセル。[5]前記粒径1μm以上の粒子が吸着剤、及び酵素固定化担体からなる群より選択される、[4]に記載のバクテリアセルロース膜カプセル。
[6][4]又は[5]に記載のバクテリアセルロース膜カプセルを含む、医薬組成物。
[7]前記粒径1μm以上の粒子が活性炭である[5]に記載のバクテリアセルロース膜
カプセルを含む、尿毒症を治療又は予防するための医薬組成物。
[8]前記粒径1μm以上の粒子がカリウム吸着剤である[5]に記載のバクテリアセルロース膜カプセルを含む、高カリウム血症を治療又は予防するための医薬組成物。
[9]前記粒径1μm以上の粒子が酵素固定化担体である[5]に記載のバクテリアセルロース膜カプセルを含む、前記酵素の欠乏症を治療又は予防するための医薬組成物。

 

効果

 本発明によれば、粒径1μm以上の粒子を内包させることができる、球状バクテリアセルロース膜の製造方法、及び当該方法により製造される粒子内包型球状バクテリアセルロース膜が提供される。

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特許情報

特開2021-065224

JPA 2021065224-000000