金属空気電池用正極触媒及び金属空気電池

2022.10.17 By 神奈川大学

材料工学

技術概要

ペロブスカイト型遷移金属酸化物よりも耐久性(化学的安定性)、活性に優れる金属空気電池用正極触媒。

用途・応用

金属空気電池、正極、触媒

背景

 電気自動車(EV)の更なる普及には、ガソリン自動車並の航続距離を実現する高エネルギー密度蓄電池の開発が必要不可欠である。現在、現状のリチウムイオン二次電池を超える「革新型蓄電池」の一つとして、金属空気電池が注目を集めている。金属空気電池とは、負極活物質として亜鉛等の金属、正極活物質として空気中の酸素を用いる二次電池をいう。このような金属空気電池は、非常に高い理論エネルギー密度を達成する可能性がある。金属空気電池、特に金属として亜鉛を用いた亜鉛空気電池は、国内外の研究機関で古くから研究開発が行われているが、現在のところ、本格的な実用化には至っていない。

 ところで、金属空気電池の空気極では、放電時には酸素(活物質)の4電子還元反応により水酸化物イオンが生成し、一方で、充電時には水酸化物イオンの4電子酸化反応により酸素が発生する。これら4電子の授受を伴う酸素還元反応(以下、「ORR」ということもある。)及び酸素発生反応(以下、「OER」ということもある。)は、速度論的に非常に遅い反応であることから充放電時に大きな過電圧が生じるため、ORR/OERを促進し得る高活性触媒が必要である。

 具体的に、金属空気電池の各電極における充電反応及び放電反応は、以下の(1)~(4)の式のとおりである。(以下、式は詳細資料に記載)なお、式(1)~(4)においては、便宜のため、負極として亜鉛を用いた例を示している。
 (正極)
  充電反応(酸素発生反応):4OH - → O 2 +2H 2 O+4e -  ・・・(1)
  放電反応(酸素還元反応):O 2 +2H 2 O+4e - →4OH -  ・・・(2)
 (負極)
  充電反応:ZnO+H 2 O+2e - →Zn+2OH -  ・・・(3)
  放電反応:Zn+2OH - →ZnO+H 2 O+2e -  ・・・(4)

 ここで、金属空気電極においては、電解液として高濃度KOH水溶液の強アルカリ水溶液等を用いて、上記(1)、(4)式に関与する水酸化物イオンを供給する。そして、正極触媒は強アルカリ水溶液に浸漬されるため、優れた化学的安定性(特に、アルカリ耐久性)が求められる。

 正極触媒として、白金、酸化ルテニウム、酸化イリジウム等の貴金属系触媒が高いORR/OER活性を示すことが知られている。しかしながら、これらに含まれる貴金属は稀少で高価であることから自動車用蓄電池等の大規模な実用化は困難である。したがって、遷移金属等、資源的に豊富な元素を主成分とする汎用的な高性能ORR/OER活性を示す正極触媒の開発が強く望まれている。

 一方で近年では、正極触媒として、ペロブスカイト(ABO 3 )型遷移金属酸化物の開発が進められている。これまで、ペロブスカイトABO 3 構造における六配位(BO 6 )八面体のBサイトのエネルギー準位がt 2 g 及びe g に分裂した際、e g 電子数が1でORR/OER活性が極大となることが報告されている。しかしながら、このような設計指針では、正極触媒のORR/OER活性のみに着目しており、金属空気電池の実用化に必要である化学的安定性については考慮されていない。また、正極触媒として、これまでBO 6 八面体配位構造を有するペロブスカイト型酸化物が主として研究されてきたが、他の金属-酸素配位構造を持つ化合物群については殆ど研究されていない。以上のような背景から、金属空気電池の動作環境下において実使用に耐え得る、有用な材料は見出されていない。 

課題

 本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、金属空気電池の動作環境下において、耐久性や活性に優れる正極触媒を提供することを目的とするものである。

手段

 本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、金属空気電池用正極触媒として、一般式(Ba z S r 1 - z ) 2 C o x F e 2 - 2 x (Si y G e1 - y ) 1 + x O 7 (式中、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)で表されるメリライト型複合酸化物を用いることにより、耐久性や活性に優れる正極触媒を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。

 (1)本発明の第1の発明は、一般式(Ba z S r 1 - z ) 2 C o x F e 2 - 2 x ( Si y G e 1 - y ) 1 + x O 7 (式中、0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)で表されるメリライト型複合酸化物を備える、金属空気電池用正極触媒である。

 (2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記メリライト型複合酸化物は、前記一般式中、0<x<1である、金属空気電池用正極触媒である。

 (3)本発明の第3の発明は、第1の発明において、前記メリライト型複合酸化物は、前記一般式中、0.5≦x≦0.9である、金属空気電池用正極触媒である。

 (4)本発明の第4の発明は、第3の発明において、前記メリライト型複合酸化物は、前記一般式中、0≦y≦0.1である、金属空気電池用正極触媒である。

 (5)本発明の第5の発明は、第1又は第2の発明において、前記メリライト型複合酸化物は、前記一般式中、0<y<1である、金属空気電池用正極触媒である。

 (6)本発明の第6の発明は、一般式(Ba z 1 S r 1 - z 1 z 2 R E z 2 ) 2 C ox 1 Z n x 2 F e 2 - 2 ( x 1 + x 2 ) (Si y G e 1 - y ) 1 + x 1 + x 2 O 7 (式中、0≦x1≦1,0≦x2≦0.2,0≦y≦1,0≦z1≦1,0≦z2≦0.2であり、且つx2及びz2の少なくともいずれかが0超である)で表されるメリライト型複合酸化物を備える、金属空気電池用正極触媒。

 (7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記メリライト型複合酸化物は、前記一般式中、REがYである、金属空気電池用正極触媒。

 (8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明において、前記メリライト型複合酸化物は、比表面積が0.5m 2 /g以上10m 2 /g以下である、金属空気電池用正極触媒である。

 (9)本発明の第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明に係る金属空気電池用正極触媒を備える、金属空気電池である。

 (10)本発明の第10の発明は、第9の発明において、前記金属空気電池用正極触媒がアルカリ溶液に浸漬されて構成される、金属空気電池である。

 (11)本発明の第11の発明は、第9又は第10の発明において、4MのKOH水溶液中で測定した酸素発生反応のTafel勾配は、55mV・dec - 1 以下である、金属空気電池である。

効果

 本発明によれば、金属空気電池の動作環境下において、耐久性や活性に優れる正極触媒を提供することができる。

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特許情報

特開2019-067597

JPA 2019067597-000000