測定液を汚さずに色変化でpH連続計測できるフィルム

2022.09.22 By 東京電機大学

材料工学

技術概要

pH指示部位が化学結合しているため、pHメータのような、電解液の漏れ出しによる測定液の汚染やメンテナンスコストの問題がなく、また通常のpH試験紙の様に媒体から測定液に色素が漏出することも無く広範なpH域の測定が可能で、何度でも測れるpH連続用センサフィルム。

用途・応用

・何度でも測れるPHセンサ

背景

 水、空気(大気)、地質などを長期間にわたって調査し管理する環境モニタリングのうち、pHのモニタリングは河川、湖沼、水槽、廃水等の水質の変化を発見しやすく測定も容易なので、様々な分野から着目されている。

 一般に用いられている水のpH測定方法は、比色分析と電気化学分析とに大別される。しかし、水質のモニタリングは間断なく長期間であり、その都度pH試験紙やpH指示薬を消費して人為的に測定する従来の比色分析は適していない。また、一種類のpH指示薬で検出できるpH値の幅は限られるので、水のpH変動幅が広い場合は多種類のpH指示薬が必要になる。

 一 方 、 電 気 化 学 分 析 で は p H電 極 を 有 す る p H メ ー タ を 用 い て 測 定 す る が 、 正 確 に 長 期間作動させるためには電圧を一定値に維持するための頻繁なメンテナンスが欠かせない。また、水に含まれる成分が酸化還元反応により電極表面に析出したり、微生物や異物が電極に付着したりすると測定を阻害するため、電極からそれらを除去し清掃する必要がある。 さ ら に 、 p Hメ ー タ は 適 正 な 使 用 温 度 域 が 制 限 さ れ る 。

 比色分析において、基本の化合物を軸として置換基を替えて水素イオンの結合のしやすさを段階的にシフトさせた誘導体群を合成して用意することにより、幅広いpHに対応して検出することが提案されている。

 また、フェノールレッド色素化合物をポリマー系支持体に結合させ、生理学的pH指示薬として使用することや、化学指示薬とシリコーンゴム重合体で形成さ れ た 、 p Hを 測 定 す る セ ン サ ー  が 提 案 さ れ て い る 。

課題

 しかし上記の誘導体群は合成が困難であり、収率も低いため、広いpH域を網羅するモニタリングのために多種類を準備することは実用的でない。また、上記生理学的pH指示薬 及 び 上 記 セ ン サ ー は い ず れ も 生 体 の 血 液 中 の p Hを 測 定 す る も の で あ る の で 、 p H の 範囲は限定される。

 そ こ で 本 発 明 者 ら は 、 既 存 の p H指 示 薬 に 基 づ い て 、 よ り 広 い p H領 域 で 、 比 色 分 析 に より 水 の p Hを 連 続 し て 検 出 し 測 定 す る こ と を 検 討 し た 結 果 、 共 重 合 体 の 各 セ グ メ ン ト の うち、高密度の陰イオン性セグメントの周辺に、水中の水素イオンが移動して集中する現象(マニング理論に基づく効果)に着目して本発明を完成させた。

手段

即ち本発明は、以下の(1)~(15)に関する。

(1) イオン性部位及び重合性部位を含む単量体成分(A)と、pH指示部位及び重合性部位を含む単量体成分(B)とを含んで共重合してなるpH指示用共重合体。

(2) さらに、電気的中性部位及び重合性部位を含む単量体成分(C)を含む前記(1)記載のpH指示用共重合体。

( 3 ) 前 記 p H指 示 部 位 の 固 有 の p H変 色 域 と 異 な る p H変 色 域 を 有 す る 前 記 ( 1 ) ま たは(2)記載のpH指示用共重合体。

(4) 前記単量体成分(A)のイオン性部位が陰イオン性部位であり、下式(I)~(VI)で表す陰イオンのいずれかが陽イオンと塩を形成している基である前記(1)~(3)のいずれか記載のpH指示用共重合体(ただし、式(II)のR 1 はアルキル基及び水素原子のいずれかであり、式(IV)のR 2 ~ R 4 のいずれか一つは単結合であり、残りの二つは同一又は異なるアルキル基であり、式(V)のR 5 はアルキル基である。)

(5) 前記単量体成分(A)のイオン性部位が陽イオン性部位であり、-NR n H ( 3
- n )+ (Rはアルキル基、nは0~3の整数)、又は陽イオン化したヘテロ環が、陰イオンと塩を形成している基である前記(1)~(3)のいずれか記載のpH指示用共重合体 。

( 6 ) 前 記 単 量 体 成 分 ( B ) の p H 指 示 部 位 が 、 水 中 で 可 逆 的 な プ ロ ト ン 化 を 示 す pH指示薬の分子骨格をもつ前記(1)~(5)のいずれか記載のpH指示用共重合体。

(7) 前記単量体成分(B)のpH指示部位が、メチルイエロー、クリスタルバイオレット、ブロモフェノールブルー、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエローRのいずれかである前記(6)記載のpH指示用共重合体。

(8) 前記重合性部位は付加重合性のアクリルロイル基、メタアクリルロイル基、アクリルロイルオキシ基、メタアクリルロイルオキシ基、ビニル基、及び縮合重合性のカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、環状エーテル基のいずれかである前記(1)~(7)のいずれか記載のpH指示用共重合体。

(9) 前記単量体成分(C)の電気的中性部位は、電気的に中性でかつ親水性の部位で、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボニル基のいずれかを有する前記(2)~(8)のいずれか記載のpH指示用共重合体。

( 1 0 ) 前 記 イ オ ン 性 部 位 及 び p H指 示 部 位 は 、 重 合 性 部 位 と 直 接 結 合 し て い る か 、 又は、アルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、-CO-NH-の少なくとも一種を介して結合している前記(1)~(9)のいずれか記載のpH指示用共重合体。

(11) 前記(1)~(10)のいずれか記載のpH指示用共重合体を備えるpHモニタリング装置。

(12) 前記(1)~(10)のいずれか記載のpH指示用共重合体を用いるpHの測定方法であって、pH指示部位の固有の変色域と異なる範囲のpHが変色域である前記共重合体の呈色によりpHを測定する方法。

(13) 前記単量体成分(A)対単量体成分(B)の比率が異なる複数のpH指示用共重合体を同時に用いる前記(12)記載のpHの測定方法。

(14) イオン性部位が陰イオン性部位であるpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位固有の変色域よりも高いpHを測定する前記(12)または(13)記載のpHの測定方法。

(15) イオン性部位が陽イオン性部位であるpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位固有の変色域よりも低いpHを測定する前記(12)または(13)記載のpHの測定方法。

効果

 本 発 明 の 共 重 合 体 は 合 成 が 容 易 な の で 、 予 測 さ れ る p H範 囲 に 対 応 し て 単 量 体 成 分 の 比率を変更した共重合体を揃えることにより、広範囲の、又は精度の高いpHの指示薬として使用できる。また、pH指示部位の固有の変色域と異なるpH範囲で変色するので、所定のpH領域を測定する際に、従来のpH指示薬の代わりに、安価なpH指示部位や取扱い性のよいpH指示部位を用いた共重合体を使用できる。この共重合体を水に不溶な成形体にすれば、長期的に間断なくかつ無人化して、水のpHをモニタリングするのに最適であ る 。 ま た 、 水 中 の 含 有 物 、 水 温 、 モ ニ タ リ ン グ の 現 場 の 環 境 等 に 影 響 さ れ ず に 、 p Hを容易にリアルタイムで知ることができる。

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特許情報

特許第5665187号

JPB 005665187-000000