ガンマ線照射を利用したポリエステル、ポリアミドの機能化

2022.08.17 By 静岡大学

材料工学

技術概要

環境調和型高分子として知られるポリ乳酸などのポリエステルやポリアミドにガンマ線を利用してアミノ基、ヒドロキシ基などの官能基を導入することにより用途を広げることができる。

用途・応用

高分子材料、包装材

背景

 ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、フッ素樹脂、塩ビなどのポリハロオレフィン、その他の高分子を原料とし、これに電離放射線を照射することにより高分子鎖間に架橋を生じ、機械的性質等の物性が変化すること、及び、ブタジエン等の共役二重結合を有する炭化水素の共存下で電離放射線を照射することにより二重結合を有する側鎖を導入し、導入された二重結合に化学修飾を施す、例えば、アミノ化、アルキル又はアリールアミノ化、アルキル又はアリールオキシ化、シアノ化、アルキル又はアリールエステル化、アルキル又はアリールスルホン化、ホスホン酸化、モノ又はポリりん酸化、アルキル又はアリールりん酸エステル化、スルフヒドリル化する等の共有結合修飾を施すことは周知の事実である(特許文献1)。

 しかし、この操作の後、触媒能、イオン交換能、化学反応性、特定物質への親和性、生体適合性、細胞接着性、細胞忌避性、イオン伝導性、濡れ性、染色性等の機能を付与させたいわゆる機能化高分子の製造過程においては、強塩基性のエチレンジアミンに浸漬する等の過酷な反応条件を必要とし、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリハロエチレン、等の炭化水素系ないしハロ炭化水素系高分子には適用できても、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール等の過酷な反応条件に耐えない高分子の機能化を目的とする操作には適用できない。特に環境にやさしいとされる生分解性ポリマーの機能化に対しては全く無力であり、多様な機能性の付与を目的とした電離放射線照射による高分子の改変技術は、実用化に成功していない。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2000-219707号公報

課題

 本発明は、包材、フィルム、電子あるいは医療関係等、その他さまざまな分野や種々の用途において従来期待され、また懸案とされてきた高分子材料の重要かつ多様な機能化に関して、従来の各種の電離放射線を原料高分子に照射することによる改質技術において見過ごされていた視点を重視し、各種高分子物質の特性を活かしながら化学的、生化学的性質や表面ないしは界面物性を多様に改質し、それぞれの機能性を付与することによってその価値を高め、種々な用途への応用と実用の道を広げることを課題とする。このため、本発明は、基礎的な技術として、ガンマ線、電子線、X線、又は紫外線等の電離放射線を用いて、機能化に至るまでの前駆体としての高分子材料を得、続いてこれを機能化高分子とし、さらに、これらの製造方法を提供することを目的とする。

手段

 上記課題を解決するために、本発明の高分子材料は、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、そのエステル、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル等のカルボニル基に共役する炭素-炭素間二重結合をもつ化合物(以下、ビニルカルボニル化合物)またはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基に共役する炭素-炭素間二重結合をもつ化合物と、原料高分子との結合により合成されるカルボニル基またはニトリル基を有することを特徴とするものである。
 また、本発明の高分子材料は、上記の高分子材料のカルボニル基またはニトリル基に付加反応、置換反応、還元反応、その他の化学修飾を行い、アミノ基、アリール基、アルキル基、ヒドロキシ基、エーテル基、エポキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、メルカプト基、ハロゲン、複素環、ホスホン酸基、りん酸基、その他の官能基を共有結合させたことを特徴とするものである。
 さらに、本発明の機能化高分子は、上記の官能基の結合した高分子材料に、蛋白、核酸、糖、デンドリマー、ポリエチレングリコール鎖等の機能分子を結合させたことを特徴とするものである。
 また、上記の高分子材料の製造方法は、アクロレイン、メタクロレイン、アクリル酸、そのエステル、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル等のビニルカルボニル化合物またはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等の存在下において、原料高分子をガンマ線、電子線、X線、紫外線等の電離放射線を照射することにより製造することを特徴とするものである。
 また、原料高分子としてポリ乳酸、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリ(エチレンテレフタル酸)、ポリ(ブチレンテレフタル酸)、その他のポリエステルまたはナイロン、アラミド、天然蛋白繊維等のポリアミド系高分子を用いたことを特徴とするものである。

効果

 上記明細書の内容及び実施例より明らかなように、本発明によって非常に簡便な手段でカルボニル基またはニトリル基をもつ高分子材料が提供される。得られる高分子材料の修飾においては主鎖がほとんど修飾されず、導入された側鎖に存在するカルボニル基またはニトリル基が化学修飾の出発点となるので、原料高分子物質のもつ融点、力学的性質等の特性を損なうことなく、このカルボニル基またはニトリル基から誘導されるあらゆる化学修飾方法が適用でき、種々の機能化高分子が製造される点に大きな特徴がある。本発明の方 法 で 修 飾 し た ポ リ 乳 酸 、 ポ リ - 3 - ヒ ド ロ キ シ 酪 酸 、 ポ リ ( エ チ レ ン テ レ フ タ ル 酸 )、ポリ(ブチレンテレフタル酸)、等のポリエステル、ナイロン、アラミド、天然蛋白繊維等の酸アミド結合を主鎖にもつポリアミド系高分子等は、さまざまな分野で期待される種々の用途に適用することができる。例えば、イオン交換やバイオリアクタ、培養基等の機能性担体として、また濡れ性、染色性、接着性、印刷性、抗菌性の付与による容器やフィルム、包装材、テープ、建材、その他の材料の改善、イオン可動性の向上に基づく分離膜や隔壁への応用、帯電性や汚れの防止、さらには医療面における生体適合性や細胞接着性、細胞忌避性の付与等、種々の高分子材料を多様でかつ重要な機能体として提供し、生活、環境、医療等への望ましい寄与を与えることができる。

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特許情報

特願2015-148235

JPA 2017025259-000000