LINE公式アカウントから最新記事の情報を受け取ろう!
乳がん組織の複素誘電率を測定したところ、乳がんとそのほかの組織では導電率の分布に明確な違いが認められた。逆散乱問題を解くトモグラフィによって導電率分布を再構成すれば、非侵襲の乳がん診断が可能になる。
乳がん診断
乳がんは女性のがんの中で最も罹患率が高く、年々増加の傾向にある。早期発見・治療が重要であることはいうまでもなく、従来のX線マンモグラフィ、超音波診断に代わる大人数を対象としたスクリーニング手段が必要であり、最近では、マイクロ波を用いたマンモグラフィの研究が活発に行われている。
本発明者は、既に、高分解能でアーチファクトの少ない広帯域ビームフォーミングアルゴリズムを適用したマルチスタティック超高帯域(UWB)レーダベースのマイクロ波マンモグラフィを提案した(特許文献1参照。)。特許文献1に記載されたマイクロ波マンモグラフィは、半球状の内壁面を有する容器、及び内壁面に沿って配置され、対象部位の電気的測定をする複数のアンテナを有するプローブアレイと、対象部位の全体をプローブアレイで覆い、内壁面に対象部位の皮膚を密着させ、対象部位とプローブアレイとの相対的位置を固定する固定手段と、複数のアンテナを制御して電気的測定を実行し、電気的測定によるデータを解析して、対象部位中の異常細胞を検出する測定制御解析手段とを備える。特許文献1に記載された発明は、臨床試験に適用され、直径1.2cmの初期がんや、X線マンモグラフィでは見分けが困難な直径1.5cmの非浸潤性乳がんのイメージングに成功している。
しかし、皮膚に近い病変からの反射応答は強く、反対側の応答は弱くなるのでUWBレーダでは病変の形を正確に再現することは困難である。一方、乳房には乳がんのほか、乳腺症、のう胞などの別の疾患があり、これを見分けて診断を確定できる診断装置が求められている。UWBレーダで病変の有無は検出できるが、その病変が何であるかを特定することはできない。
乳房組織の導電率(電気伝導度)等の電気的特性の不均一性を測定することにより、逆問題としてがんを検出する手法としてマイクロ波トモグラフィが提案されている。マイクロ波トモグラフィにおいては、異なる位置からマイクロ波が乳房に送信され、マイクロ波の散乱信号が乳房の周囲に配列されたアンテナによって収集される。がん細胞は、高い水分含有量を持っており、正常組織よりも強い散乱体であるため、悪性組織があるとマイクロ波の散乱信号に変化が生じる。マイクロ波により測定された電気信号は、含水量、温度や血管新生などの生理的パラメータに敏感であるので、撮像体としての乳房組織の電気定数分布に対応した病変の形が、逆問題を解析することにより、再現できると期待されている 。
このマイクロ波トモグラフィで精緻な画像を、逆問題を解析して再構成するためには、多くの観察データが必要である。そのため、複数の周波数を使って観察データを増やす方法が提案されている。複数の周波数を使ったマイクロ波トモグラフィでも、実際の実測データと仮定した電気定数分布での逆問題解析に基づく理論値データの誤差を最小化することによって画像回復を行っている。
しかしながら、複数の周波数を使ったマイクロ波トモグラフィでは、複数の周波数を使うため、広帯域アンテナによって得られた観測データを、逆問題を解析することが必要になるが、現実の広帯域アンテナの製造技術上の誤差を考慮すれば、広帯域アンテナによって得られた観測データを精度良く計算器シミュレーションによって再現することは困難である。よって、従来のマイクロ波トモグラフィによる診断装置では、がん組織の分布を精度よく再現できないという問題があった。
そこで、本発明者は、既に、がん組織の分布を逆問題により精度よく回復できるマイクロ波マンモグラフィを提案した(特許文献2参照。)。特許文献2に記載されたマイクロ波マンモグラフィは、選択された特定のアンテナユニットからマイクロ波を送信して、該マイクロ波を対象部位に照射し、且つ、対象部位を透過、対象部位から反射又は散乱されたマイクロ波を受信する、特定のアンテナユニットを含む複数のアンテナユニットの配列からなるアンテナアレイと、特定のアンテナユニットから送信されるマイクロ波の偏波を 制御して送信する送信手段、複数のアンテナユニットが受信するそれぞれのマイクロ波の偏波を制御して受信する受信手段を有し、送信手段から特定のアンテナユニットへの接続、複数のアンテナユニットから受信手段への接続及び偏波を切り替えて、偏波ダイバーシチを制御する偏波ダイバーシチ制御手段と、送信手段が受信した複数のアンテナユニットからの電気信号により逆問題を解析し、再構成されたがん組織の分布を画像表示する画像処理ユニットとを備え、トモグラフィ処理を実行する。
上記特許文献2に記載の偏波ダイバーシチを実行する手法によれば、観測データを増やすことができ、多様な観測データが得られるので、がん組織の分布を逆問題により精度よく回復できる。しかしながら、偏波ダイバーシチを実行すると計算コストが増大する。
マイクロ波イメージングの基礎となる乳房組織の電気定数は、北米で大規模に調査した結果が公表されている(非特許文献1参照。)。しかし、各組織の電気定数の統計分布が示 さ れ て い る の み で 、 年 齢 や 症 例 も 勘 案 し た 電 気 定 数 の デ ー タ や 比 誘 電 率 ε rと 導 電 率 σの相互関係は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許第5605783号公報
【特許文献2】特開2014-198067号公報
【非特許文献】
【 非 特 許 文 献 1 】 M . ラ ゼ ブ ニ ク ( Lazebnik) 他 1 0 名 、 『 が ん 手 術 か ら 得 ら れ た 乳 房 の正常細胞、良性腫瘍、悪性腫瘍の超広帯域のマイクロ波帯における誘電特性の大規模調査( " A large scale study of the ultra wideband microwave dielectric properties ofnormal, benign, and malignant breast tissues obtained from cancer surgeries,") 』 、 内 科 学 及 び 生 物 学 の 物 理 ( Phys. M ed. Biol.) , 第 5 2 巻 、 第 2 0 号 、 p . 6 093-6115、2007年
本発明は、計算コストを増大させずに多様な観測データを得ることができ、がん組織の分布を精度よく、逆問題として再現可能な診断装置、この診断装置を用いた診断方法、この診断方法に採用される診断プログラムを提供することを目的とする。
上 記 目 的 を 達 成 す る た め に 、 本 発 明 の 第 1 の 態 様 は 、 (a)脂 肪 組 織 及 び 乳 腺 組 織 と 識 別す る が ん 組 織 に 固 有 な 電 気 定 数 の 情 報 を 格 納 し た デ ー タ 記 憶 装 置 と 、 (b)複 数 の ア ン テ ナユニットの配列からなり、複数のアンテナユニットのそれぞれの放射素子中を流れる電流の 励 振 方 向 が 互 い に 異 な る ア ン テ ナ ア レ イ と 、 (c)複 数 の ア ン テ ナ ユ ニ ッ ト の そ れ ぞ れ を逐次選択して、この選択されたアンテナユニットを介してマイクロ波を送信して、このマイ ク ロ 波 を 対 象 部 位 に 照 射 す る 送 信 手 段 と 、 (d)対 象 部 位 を 透 過 又 は 対 象 部 位 か ら 反 射 若しくは散乱されたマイクロ波を選択されたアンテナユニットを含む複数のアンテナユニット で そ れ ぞ れ 受 信 す る 受 信 手 段 と 、 (e)デ ー タ 記 憶 装 置 に 格 納 さ れ た が ん 組 織 に 固 有 な 電気定数の情報と受信手段が受信した複数のアンテナユニットからの電気信号により逆問題を解析してがん組織の分布を再構成し、再構成された電気定数の分布を画像表示する画像処理ユニットを備え、トモグラフィ処理を実行する診断装置であることを要旨とする。
本 発 明 の 第 2 の 態 様 は (a)脂 肪 組 織 及 び 乳 腺 組 織 と 識 別 す る が ん 組 織 に 固 有 な 電 気 定 数の 情 報 を 予 備 知 識 と し て 取 得 し 、 デ ー タ 記 憶 装 置 に 格 納 す る ス テ ッ プ と 、 (b)複 数 の ア ンテナユニットの配列からなり、複数のアンテナユニットのそれぞれの放射素子中を流れる電流の励振方向が互いに異なるアンテナアレイのそれぞれを逐次選択して、この選択されたアンテナユニットを介してマイクロ波を送信して、このマイクロ波を対象部位に照射する ス テ ッ プ と 、 (c)対 象 部 位 を 透 過 、 対 象 部 位 か ら 反 射 若 し く は 散 乱 さ れ た マ イ ク ロ 波 を選択されたアンテナユニットを含む複数のアンテナユニットでそれぞれ受信するステップと 、 (d)デ ー タ 記 憶 装 置 に 格 納 さ れ た が ん 組 織 に 固 有 な 電 気 定 数 の 情 報 と 受 信 手 段 が 受 信した複数のアンテナユニットからの電気信号により逆問題を解析してがん組織の分布を再構成するステップを含み、トモグラフィ処理を実行する診断方法であることを要旨とする。
本 発 明 の 第 3 の 態 様 は (a)予 備 知 識 と し て 事 前 に 取 得 し た 、 脂 肪 組 織 及 び 乳 腺 組 織 と 識別 す る が ん 組 織 に 固 有 な 電 気 定 数 の 情 報 を デ ー タ 記 憶 装 置 に 格 納 さ せ る 命 令 と 、 (b)複 数のアンテナユニットの配列からなり、複数のアンテナユニットのそれぞれの放射素子中を流れる電流の励振方向が互いに異なるアンテナアレイのそれぞれを逐次選択して、この選択されたアンテナユニットを介してマイクロ波を送信して、このマイクロ波を対象部位に照 射 さ せ る 命 令 と 、 (c)対 象 部 位 を 透 過 、 対 象 部 位 か ら 反 射 若 し く は 散 乱 さ れ た マ イ ク ロ波を選択されたアンテナユニットを含む複数のアンテナユニットでそれぞれ受信させる命令 と 、 (d)画 像 処 理 ユ ニ ッ ト に 、 デ ー タ 記 憶 装 置 に 格 納 さ れ た が ん 組 織 に 固 有 な 電 気 定 数の情報を読み出させ、この読み出したデータと受信手段が受信した複数のアンテナユニットからの電気信号により逆問題を解析してがん組織の分布を再構成させる命令を含み、トモグラフィ処理を実行する診断プログラムであることを要旨とする。
本発明によれば、計算コストを増大させずに多様な観測データを得ることができ、がん組織の分布を精度よく、逆問題として再現可能な診断装置、この診断装置を用いた診断方法、この診断方法に採用される診断プログラムを提供することができる。
特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。
本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。