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Science の今年のニュースは先週発表されたが、Natureは今年の10人だけで、ニュースの発表は12月21日号にも掲載されていなかった。おそらく来週になると思うので、その時今年のニュースを振り返るzoomを計画したい。
おそらく本当の年末になる気がする。
さて、2019年 Sience が選んだ10大ニュースの中に、産総研の高井さん達が Nature に発表した生きた Asgardアーキアの分離が選ばれたのは記憶に新しい(https://aasj.jp/news/watch/12204)。
それまで、メタゲノム解析から、アーキアと真核生物をつなぐリンクとして特定されていた Asgardアーキアの増殖条件を決定し、その特異な形態を示したインパクトは大きい。
それだけでなく、Asgardアーキアが長い突起を使ってバクテリア代謝系を徐々に取り込み真核生物へと進化するという高井さん達のストーリーは、形態と機能の見本のような話で説得力があった。
当然、細胞体から蜘蛛の足のように突起が伸びる形態の分子背景を知りたくなるが、今日紹介するウィーン大学からの論文は、もう少し扱いやすい新しい Asgardアーキアを分離し、その細胞骨格の構造を示すことに成功した研究で12月21日 Nature にオンライン掲載された。
タイトルは「Actin cytoskeleton and complex cell architecture in an Asgard archaeon(Asgard-アーキアのアクチン細胞骨格と複雑な細胞構造)」だ。
産総研の論文は、深海の沈殿物から分離した Asgardアーキア(AA) が、装飾が遅く壊れやすい生物であるかを示していた。おそらく、電子顕微鏡レベルで細胞骨格を研究するの極めて難しい課題のようだ。
この研究は産総研の AA を使うのではなく、スロベニアの運河河口の泥から新しい種類を分離している。この結果は、海水が存在すれば、深海でなくとも AA が存在し、分離できることを示している。
今後さらに多くの AA が分離されるが、今回分離された種は産総研の Ca P.syntrophicum と極めて近い関係にある AA なので、良く似た AA が世界中に拡がっている可能性が高い。
面白いのは産総研の AA と比べて、遺伝子数が多いことで、例えばリボゾームRNAは産総研の AA が1種類しかないのに対し3種類存在する。すなわち、近縁でも AA で遺伝子の獲得、喪失など大きな変化が起こっていることを示している。
そのおかげか、増殖スピードは産総研の AA より少し速い。それでも、純粋な培養は難しく、エサになるバクテリアなどが培養に混在しないと増殖できない。その結果、最も純粋な培養で AA が80%で、残りは他のバクテリアが2種類存在する培養になる。
細胞骨格を調べる場合、骨格の基本となるアクチンを検出する抗体と、電顕などが必要になるが、AA は極めて壊れやすく簡単ではなかったようだ。
いずれにせよ、様々な工夫を重ねて混在しているバクテリア特別して AA を電顕で撮影する方法を開発し、またアクチンに対する抗体を作成し、最終的に細胞骨格が細胞突起の隅々に張り巡らされていること、また細胞体内では膜近くに存在すること、さらにクライオ電顕上でヘリックス構造を持つ構造をとって、まさに細胞骨格として働いていることを示している。
アクチンに対する抗体で染色することで、一般の顕微鏡でも特異的観察が可能になり、電顕で観察されるのと同じように、突起の隅々までアクチンが重合していることが明らかになった。
基本的には、AA の細胞骨格をついに見ることが出来たのがこの論文のハイライトで、今後新しい方法や抗体を用いて、さらに多くの研究が続く気がする。
そして、ようやく真核生物が進化について明らかにされると思う。