抗腫瘍自然免疫と IL12 : 臨床研究と動物実験をうまく組みあわせる(7月13日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2022.07.27

今回ワクチンの作用や副反応について広く知られるようになり、一般の人にも免疫成立に必要なアジュバント効果やそれを支える自然免疫の重要性が広く知られるようになったのではと期待している。


ガンに対する免疫反応成立も当然同じことで、腫瘍局所での自然免疫の重要性が認識されている。


中でも、マクロファージや樹状細胞から分泌され、T細胞をヘルパーなどへと誘導する IL-12 とT細胞から分泌されるインターフェロンγ 経路は、ガンの自然免疫システムとして重視されており、コレラのサイトカインをガン免疫に応用できないか模索が続いている。


しかし、IL12 を全身に投与してしまうと、強い副作用が必死で、効果は証明されていても臨床利用が難しい。そこで、アデノウイルスベクターを用いたワクチンと同じような局所投与が試みられていた。


今日紹介するバーゼル大学からの論文は、アデノウイルスベクターを用いた IL12 局所投与の臨床試験患者の解析から生まれた課題を、マウス実験で調べ直すサイクルをうまく組みあわせた研究で、IL12 治療の鍵を握るのが NK細胞であることを示した面白い研究で、7月13日号の Science Translational Medicine に敬愛された。


タイトルは「NK cells with tissue-resident traits shape response to immunotherapy by inducing adaptive antitumor immunity(組織滞在型 NK細胞が抗腫瘍免疫治療の反応性を決める)」だ。


この研究では、アデノウイルスベクターに組み込んだ IL12(Ad-IL12)治療を行ったメラノーマ患者さんで、高い反応を示した患者さんの腫瘍組織でNK細胞が CD8T細胞と同時に増殖をしていることに着目し、マウスの実験系で、Ad-IL12投与時の NK細胞の役割をまず調べ、Ad-IL12 の効果には NK細胞が必須で有ることを証明している。


さらに、血管からの免疫細胞の遊走を阻害するフィンゴリモドを用いた実験で、IL12 により刺激された NK細胞が分泌するサイトカインにより、血液が腫瘍組織に集まることが重要で、やはり患者さんの組織の解析から CCL5 が NK細胞が分泌するケモカインであること、さらに、動物実験系で NK細胞がなくても、Ad-CCL5 を局所投与することで、抗腫瘍活性を高められることを明らかにしている。


同時に、CCL5 を分泌するNK細胞の解析から、元々組織内に常在するタイプのNK細胞であること突き止めた。


さらに、患者さんのガン組織をそのまま培養してそこに Ad-IL12 を加える実験から、組織に常在するタイプの NK細胞が CCL5分泌細胞であること、そしてこの IL12-CCL5セットが、PD-L1抗体によるチェックポイント治療の成否を決める鍵になることを動物実験で確かめている。


以上の結果は、

  1. 全身投与は難しい IL12 を Ad-IL12 の形でガン局所に投与することで、全身のガン免疫を誘導できること、

  2. ガン組織の NK細胞の重要性、

  3. NK細胞が少ない場合は、Ad-CCL5 を加えることの重要性、

など、いくつかの臨床介入手段を示唆している。


チェックポイント治療を、ワクチンレベルの確実な治療へと高めるための重要な研究だと思う。

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。