皮膚エリテマトーデス発症のメカニズム(4月27日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2022.05.15

SLE 患者さんの7割に皮膚の発疹が見られる。Lupus と呼ばれるように、発疹は両側だが局所的に見られる、特徴的なのは蝶形紅斑とよばれる顔の紅斑だろう。これを見たとき、紅斑部と正常部に皮膚を分けて、病変が紅斑部に限局していると考えてしまう。


今日紹介するミシガン大学からの論文は皮膚 Lupus を示す SLE 患者さんの様々な場所からのバイオプシー標本から分離した細胞を single cell RNA seq で調べ、SLE では健常部で既に炎症が始まっていることを示した研究で4月27日号 Science Translational Medicine に掲載された。


タイトルは「Nonlesional lupus skin contributes to inflammatory education of myeloid cells and primes for cutaneous inflammation(非病変部の皮膚も顆粒球系細胞の炎症へのeducationを通して皮膚炎症を誘導する)」だ。


研究は単純で、明らかに紅斑が見られる皮膚と外部からは異常が認められない皮膚バイオプシー標本から細胞を集め、single cell RNA seq で解析し、炎症が病変部に限局しているのかどうかをまず調べている。


様々な実験が行われてはいるが、結論は単純で、ケラチノサイト、ファイブロブラスト、リンパ球、白血球の全てで、病変部のみならず、正常に見える部位でも1型インターフェロン上昇とその影響が見られるという結果になっている。


正直結果はこれだけなのだが、ケラチノサイトの方は全てのタイプのケラチノサイトで IFN が上昇している。そして、他の細胞はすべてこの IFN 刺激により誘導される分子発現で特徴付けられ、受動的反応と言える。


例えば、T 細胞で見ると、キラーや炎症細胞だけでなく、抑制性 T 細胞も IFN の影響を受けている。


これらの中でも著者らが最も注目しているのが CD16 陽性の樹状細胞で、健常部が IFN を発現することで、血液から細胞が移動し、ここで活性化型の樹状細胞に分化し、その後の皮膚病変の核になると考えている。


この研究で最も注目すべきデータは、これら single cell RNAseq データを組織レベルに移すため、この HP でも紹介した組織標本を用いて各部位の RNA seq を行う方法が使われていることで、既にキット化されて臨床研究にも利用できるところまで来ているのかと感慨が深い。


この方法を組みあわせた結果、ケラチノサイトが他の細胞の変化を組織化していることがよくわかる。


以上が結果で、病変が現れる前から炎症がケラチノサイトの変化をベースに始まっていることは確かに重要で納得できるのだが、では蝶形紅斑のように、いつも同じ場所に病変が現れる要因や、炎症が始まっていても正常に見える部分 の皮膚病変とは何なのか、もう少し突っ込んだ議論が欲しいと思う。

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。