金星大気下層部のもやの正体は宇宙塵!? 硫酸の雲を作るのにも関与?

2026.05.29

金星の下層ヘイズ サムネ

(画像引用元番号①②)

みなさんこんにちは! サイエンスライターな妖精の時々VTuber彩恵りりだよ!

 

今回の解説の主題は、金星の大気下層部にあるヘイズ (もや) の正体に迫る研究だよ。ヘイズがあることはずっと前から確認されていたけど、「ヘイズは何でできているのか?」という疑問の答えはなかなか分かってなくて、50年来の謎となっていたのよね。
今回の研究では、金星で硫酸の雲が発生する状況をシミュレーションするモデルに「宇宙塵うちゅうじん」という要素を組み込んだ結果、「ヘイズの正体は宇宙塵である」と説明がつくだけでなく、雲の発生状況や、別の疑問である謎の紫外線吸収物質の正体など、他の現象にも説明を付けられるようになったのよ!
今回の研究結果は、あくまでもシミュレーションによるものという部分はあるけれども、一方で近いうちに始まる金星探査ミッションによって、意外と早く答え合わせができるようになるかもしれないよ。

 

今回の研究のポイント
  • 金星の大気下層部には、「ヘイズ」とよばれるもやがあることが分かっていたけど、ヘイズが何でできているのかについては50年来の謎だったよ。
  • 今回、金星の硫酸の雲の発生をシミュレーションするモデルに「宇宙塵」の要素を組み込んだところ、ヘイズの正体に説明のつく影響が現れたのよね!
  • 今回の研究結果は、金星の長年の謎だけでなく、原始地球や太陽系外惑星などにも影響を与えるかもしれないよ。

 

金星の高温の下層部を覆うもやの正体は?

金星の大気の概要

図1: 金星の分厚い大気には、雲の無い下層部にもやが漂っていることが分かっているのよ。専門用語を使って「下層ヘイズ」と呼ばれているんだけど、ところが正体が50年来の謎だったのよね。 (画像引用元番号②)

 

太陽系の第2惑星「金星」は、地球と似たような大きさや組成を持ち、しばしば“地球の兄弟星 (双子星)”と呼ばれるよ。ただ少なくとも、表面の環境はとても兄弟とは思えないのよね。地球の90倍もの気圧がある二酸化炭素主体の分厚い大気を持ち、温室効果の暴走により地表の気温は惑星随一の460℃にもなっているのよ!

 

しかし、現在はともかく、過去の地球の大気は金星と部分的に似ていた可能性もあるのよ。また、太陽系を離れ、他の恒星の周りを公転する太陽系外惑星に目を向ければ、岩石の本体と分厚い大気を持つ、金星のような惑星が見つかっているのよ。なので金星の環境を調べれば、様々な惑星の大気の様子を知る手掛かりにもなるわけよ。

 

これらの理由を動機として (あるいは、純粋に金星自体が興味深い天体であるとして) 、数々の探査機が金星を観察し、その分厚い大気を観察したのよね。その結果分かったことの1つは、金星には高度47kmから70kmには、硫酸の雲が漂っているという、中々にインパクトのある結果だったのよね。

 

ただ、高度47kmよりも下、つまり硫酸の雲がない大気の下層部にも、やはりもやが存在することが分かってたのよ。専門用語では「ヘイズ」[注1]と呼ばれるこのもやは、何かしらの固体や液体でできた、大きさが1µmよりも小さい微粒子なんだけど、問題は、これの正体がかなり謎だという点なのよね。

 

金星の大気下層部は極めて熱いため、それより上空にある硫酸は蒸発してしまうから、ヘイズの正体である可能性は低いのよね。これほど高温な環境で粒子として存在できるなら、何かしらの固体物質である可能性が高いので、これまでに地面の塵、火山灰、硫黄の結晶などが正体の候補に挙がっていたのよ。

 

ただ、地面の塵を上空に持ち上げる力、詳細が不明な金星の火山の活動度合い、上空の硫酸から硫黄への変換効率など、どうしても理論モデルと観測データに合致しない部分があったりして、うまく説明することができなかったのよね。これが50年来の謎となっていた理由とも言えるのよ。

 

金星の下層ヘイズの正体は宇宙からの塵かもしれない!

下層ヘイズの生成メカニズム

図2: 今回、金星の硫酸の雲の出来方をシミュレーションするモデルに宇宙塵を入れてみたところ、下層ヘイズの正体をうまく説明することが分かったのよ! (画像引用元番号③)

宇宙塵の有無と雲の生成量の関係

図3: また、宇宙塵は下層ヘイズの素となるだけでなく、雲の生成する核となることや、別の謎である謎の紫外線吸収源の正体である可能性も見えてきたのよ! (画像引用元番号④)

 

東北大学大学院の大学院生、狩生かりゅう宏喜ひろき氏 (現: 東京科学大学、研究員) などの研究チームは、金星の大気の中で雲ができるプロセスをシミュレーションできる雲微物理モデルにある因子を加えることで、この謎の答えを導いたのよ。その因子の説明に入る前に、そもそもなぜ雲ができるのかについて簡単に説明するよ。

 

地球は硫酸ではなく水の雲があるわけだけど、雲ってのは微細な水滴の集まりなのよね。この水滴は空気中の水蒸気が凝結してできるわけだけど、この凝結には、核となる微粒子が必要なのよね。地球の場合、土壌や塩や大気汚染物質などが水滴の核となる微粒子となるよ。

 

金星にも雲があるので、何かしらの微粒子があるはず。ではその微粒子って何だろう? 狩生氏らは、物理モデルに「宇宙塵」という因子を加えたのよね。宇宙塵は宇宙空間を漂う固体粒のことで、大きめの粒は流れ星の素にもなるよ。そして宇宙塵は、目に見えないだけで、今この瞬間にも地球や金星に絶えず降り注いでいるのよね。

 

金星の濃い大気の下では、宇宙塵は高度110kmほどで燃え尽きてしまい、ナノメートルサイズの微粒子という燃えカスを作るのよね。もしかするとこれが硫酸の雲の核になるかもしれないということで、狩生氏らはモデルに宇宙塵の影響を組み込んで、硫酸の雲ができる様子のナノスケールのシミュレーションを行ったのよ。

 

その結果、面白いことが分かったのよね。燃え尽きた宇宙塵は約1nm (10億分の1m) サイズの微粒子となり、まずは硫酸の雲に取り込まれるのよね。硫酸の雲の中にある、微粒子入りの硫酸の粒はゆっくりと下に落ち、やがて下層の熱い場所で蒸発すると、微粒子だけが残される……そしてヘイズになることが明らかになったのよ!

 

また、ヘイズとなった微粒子はこれで終わりじゃなくて、お互いに合体して少し大きくなった後、再び雲の層に輸送されれば、今度は硫酸の雲を作る核となることも分かったのよね。この出戻り組の微粒子によって、金星の雲は20-30%ほど生成が後押しされることも分かったのよね!

 

他の惑星の大気の研究にも影響するかも?

金星の下層ヘイズの研究が与える影響

図4: 今回の研究結果は、金星の大気の謎を明らかにしただけでなく、金星と似たような大気を持つ惑星の性質や進化を考える上でも影響をおよぼすかもしれないよ! (画像引用元番号⑤⑥)

 

今回のシミュレーション結果が正しいことは、金星探査機が捉えたヘイズのデータとの整合性で確かめられたのよ。またこの結果から、金星の大気に関する別の謎も解決できるかもしれないのよ。というのも、宇宙塵から作られた微粒子は金属成分、特にマグネシウムと鉄に富んでいることが関係してくるのよね。

 

実は、金星の大気を紫外線で見てみると、紫外線を吸収する物質があることが長年知られていたのよね。ところが肝心の物質の正体がわからずじまいだったのよね。今回のシミュレーションで現れた金属に富む微粒子は、まさにこの謎の紫外線吸収を説明するのにちょうどいいのよ!

 

紫外線を吸収するということは、この波長でエネルギーを受け止めているということなので、金星の大気が持つ熱の量や、熱の発生に伴う大気循環でも影響を無視することができないとも考えられるのよ。金星の雲の話と併せて、金星の気候の決定に大きな役割を果たしているのかもしれないわね。

 

いずれにしても、今回のシミュレーションが本当に正しいのかは、もう少し待てば明らかになるかもしれないよ。2020年代後半に、NASAは金星探査ミッション「DAVINCI」を始動する予定なので、最新の観測データとの照合で、ヘイズの正体がついに明らかになるかもしれないからね。

 

また冒頭で書いた通り、この研究は金星に留まらず、初期の地球や太陽系外惑星、あるいは大気の塊とも言える木星や土星などで起きているかもしれない、同じプロセスの解明に役立つかもしれないよ。この研究を進めることで、地球を含む様々な惑星の気候の決まり方をさらに深掘りできるかもしれないわね!

注釈

[注1] ヘイズ
ヘイズとは、直接には気象学用語の「煙霧」の英語「haze」に由来するものです。煙霧とは、固体の微粒子が大気中を漂っていて、視程が低くなっている状態を指します。しかし惑星科学で言えば、大気中を漂っており、観測可能なほど濃い微粒子であれば、詳細な特性に左右されずにヘイズと呼び、日本語でも煙霧ではなくヘイズと呼ぶ傾向にあります。  本文に戻る

文献情報

<原著論文>

 

<参考文献>

 

<画像引用元の情報> (必要に応じてトリミングを行ったり、文字や図表を書き加えている場合がある)

  1. サムネイル用のイメージ図: 東北大学の英語版プレスリリースより
  2. 金星探査機「あかつき」が紫外線で撮影した金星の疑似カラー写真: flickrより (Credit: JAXA, ISAS, DARTS & Kevin M. Gill)
  3. 今回シミュレーションされた宇宙塵の循環の説明図: 東北大学のプレスリリースより
  4. 宇宙塵の有無と雲の生成量のグラフ: 東北大学のプレスリリースより
  5. 原始地球の想像図: flickrより (Credit: NASA / Public Domain)
  6. GJ 1214 bの想像図: NASAより (Artwork: NASA, ESA, CSA & Dani Player (STScI) )
    TopeconHeroes (追加パターン素材)

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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