アルミニウム材料又はマグネシウム材料の表面処理方法

2024.08.08 By 芝浦工業大学

材料工学

技術概要

アルミニウム材料又はマグネシウム材料からなる基材の表面の少なくとも一部に防食皮膜を形成する表面処理方法。水分を供給する加湿工程と、前記加湿工程後の基材に水蒸気を接触させることで、基材の表面の少なくとも一部に防食皮膜を形成する水蒸気処理工程とを含む製造方法

用途・応用

自動車分野や航空宇宙機器の分野

背景

 アルミニウム材料及びマグネシウム材料は軽量であることから、自動車、航空機及びそ
の他の工業分野一般において、各種部品の軽量化を目的して広く用いられ、その適用範囲
が拡大している。特に、自動車分野や航空宇宙機器の分野においては、軽量化による燃費
向上を目的として、鉄鋼材料に代替すべく、アルミニウム材料やマグネシウム材料からな
る各種部材が多く利用されている。

 アルミニウム材料及びマグネシウム材料を上述のような用途に供するに当たって懸念さ
れる事項として、耐食性が挙げられる。アルミニウムは空気中に放置すると自然酸化膜が
生成され不動態化するが、この自然酸化皮膜の厚さは数ナノメートル程度あるので、極度
の湿気、酸またはアルカリ環境化において腐食し易い。一方、マグネシウムは、非常に活
性な金属であるため、使用環境中で表面が酸化等により腐食しやすい。そこで、従来から
、これらの合金材の耐食性を向上させるための表面処理方法が検討されている。現在では
、使用環境に応じ、陽極酸化処理、めっき処理、リン酸亜鉛処理、クロメート処理等の化
成処理が知られている(例えば、特許文献1)。これら各種の化成処理では、H 2 S O 4
等の酸やアルカリ、Cr等の重金属イオンを含む処理液に、被処理材となる合金材を接触
・浸漬して合金表面に防食皮膜を形成する。

 上記のような化成処理等の表面処理技術においては、特異な処理液の調達や廃液処理の
ためのコスト増大の問題や環境に対する負荷の問題があった。そこで、上記化成処理より
も環境負荷の小さい表面処理方法として、水蒸気を適用した表面処理技術が着目されてい
る。本発明者等も、アルミニウム材料及びマグネシウム材料の耐食性向上のため、所定の
温度範囲の水蒸気を合金表面に接触させる水蒸気処理を開示している(例えば、特許文献
2、特許文献3)。この水蒸気処理は、アルミニウム材料又はマグネシウム材料からなる
基材の表面に、各金属の水酸化物を主成分とする皮膜を形成し、皮膜の防食作用により耐
食性を向上させる表面処理技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】

【特許文献1】特開平9-112521号公報
【特許文献2】国際公開第2017/135363号
【特許文献3】特開2014-125639号公報

課題

 アルミニウム材料及びマグネシウム材料に対する水蒸気処理は、従来の化成処理よりも
廃液処理等の観点から安全性・環境適合性を有する上、比較的簡易に合金材へ防食皮膜形
成による耐食性を付与することができる。また、水蒸気処理では、基材表面に水蒸気が直
接反応することで皮膜が形成されるので、均一で密着性良好な皮膜を形成することができ
る。更に、基材の形状に対する追随性が高い皮膜を形成することができ、複雑形状を有す
る基材への表面処理としても有効である。

 もっとも、アルミニウム材料やマグネシウム材料の上記した適用範囲の拡大傾向を考慮
すれば、水蒸気処理にも改善すべき点がある。水蒸気処理の改善点の一つとして、処理時間の短縮化が挙げられる。防食皮膜が形成された材料の耐食性は、皮膜の厚さによる影響
が大きい。水蒸気処理でも耐食性を確保するためには、防食皮膜を厚く形成することが求
められる。この点、水蒸気処理は、防食皮膜の形成に比較的時間を要する処理方法であり
、当該処理を利用する製品には生産性の面で劣る面があった。そのため、水蒸気処理に対
して、厚い防食皮膜を短時間で効率的に形成するための改良が望まれている。

 本発明は以上のような背景のもとになされたものであり、アルミニウム材料又はマグネ
シウム材料からなる基材に対して、防食皮膜を短時間で効率的に形成できる表面処理方法
を提供することを目的とする。 

手段

本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行い、予め水を供給して加湿状態にし
た基材に対して水蒸気処理を施すことで、防食皮膜の被膜成長速度が大幅に上昇し、防食
皮膜を短時間で効率的に形成できることを見出した。

効果

 以上説明したように、本発明は、アルミニウム材料又はマグネシウム材料からなる基材
に対して防食皮膜を従来よりも短時間で厚く均質に形成することが可能であって、耐食性
を向上させ、生産性に優れた表面処理方法として有用である。

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特許情報

特願2020-016740

JPA 2021123742-000000