湿潤ゲルの乾燥を行う含水湿潤ゲルの乾燥方法

2022.09.16 By 東京都立大学

材料工学

技術概要

溶媒中に水を含む含水湿潤ゲルを乾燥させる過程で、ゲルに手を加えず、かつ有機溶媒や気体など亀裂の発生を抑制するための試薬を使用することなく、ゲルの亀裂の発生を抑制する新規な乾燥方法およびこの方法に用いられる装置を提供する。

用途・応用

ゲル製造

背景

 ゾル-ゲル法によるゲルの合成は、合成温度が溶融法や気相混合法に比べて低いこと、高濃度のフッ素ドープが行えること、またこの結果導入されたSiF基によってSiOH基を除去し、真空紫外域の光透明性を向上できること、などの利点があることから、機能性ガラス、セラミックス、無機-有機複合体の新しい合成法として、材料分野で注目されている技術である。しかし、湿潤ゲルを乾燥させて乾燥ゲルを得る過程では、溶媒の蒸発に伴ってゲル細孔中に形成された気-液界面(メニスカス)で毛細管力が生じてゲルが収縮するため、乾燥ゲルに亀裂が入りやすいという問題がある。

 水は、モノマーの重合剤や溶媒として、多くの湿潤ゲルの作製に用いられているが、水はアルコールのような他の汎用溶媒に比べて表面張力が大きく、また沸点も高いため、乾燥の最終段階で濃縮され、大きな毛細管力を生じる。このため、水を含む湿潤ゲルを短時間で乾燥させたり、大きな乾燥ゲルを得ることは極めて困難である。ゲルの割れを抑制しつつ再現性良く乾燥ゲルを得るためには、乾燥中の収縮応力の原因である毛細管力を小さくし、かつゲル全体で均一な溶媒蒸発及び均一な収縮を起こさせることが必要である。

 亀裂のない乾燥ゲルを得る方法として、化学的方法と物理的方法が従来より知られている。化学的方法とは、ゲルの製造過程において試薬等を添加し、ゲル骨格の化学構造などに手を加えるものであって、(1)高沸点かつ表面張力の小さい溶媒を乾燥制御剤として添加した湿潤ゲルを作製し、乾燥の最終段階での毛細管力を下げる方法、(2)毛細管力が細孔径に反比例することに着目し、湿潤ゲルの細孔径を大きくする方法、(3)湿潤ゲルに微粒子を加えることで湿潤ゲルの細孔径を増大させ、かつ湿潤ゲルの強度を高める方法、(4)ゲル骨格の化学構造を修飾し、ゲルの柔軟性を高めつつ毛細管力を小さくする方法などが知られている。

 一方、物理的方法とは、湿潤ゲルにほとんど手を加えずに亀裂のない乾燥ゲルを得る方法であって、(5)乾燥を極めてゆっくり行ってゲルを均一に収縮させる方法、(6)温度と雰囲気を厳密に制御して乾燥を行う方法、(7)超臨界状態を経ることによって気-液界面をなくす超臨界乾燥を行い、毛細管力が働かないようにする方法、などが知られている。 

課題

 しかし、化学的方法では、例えば、ゲルの化学組成と作製条件が非常に限定され、また、加える試薬が発ガン性などの毒性を有している場合があり、実用化が難しい場合がある。また、物理的方法の内、上記(5)の方法では乾燥ゲルの作製に非常に時間を要する、上記(6)の方法では湿潤ゲル中の溶媒を乾燥の容易な溶媒に一度置換することが必要であり、また、乾燥のために別途気体が必要である、上記(7)の方法では耐圧容器が必要であり、また湿潤ゲル中の溶媒を超臨界乾燥の容易な溶媒(CO 2)に一度置換することが必要なため、ゲルの大きさが耐圧容器に制限される、という問題がある。

 したがって、本発明の目的は、上記従来の問題が解決された、具体的には溶媒中に水を含む含水湿潤ゲルを乾燥させる過程で、ゲルに手を加えず、かつ有機溶媒や気体など亀裂の発生を抑制するための試薬を使用することなく、ゲルの亀裂の発生を抑制する新規な乾燥方法およびこの方法に用いられる装置を提供することである。

手段

 上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究、検討を行ったところ、水を含む有機溶媒を含有する湿潤ゲル、すなわち含水湿潤ゲルを乾燥する際に、まず、溶媒を含む含水湿潤ゲルから表面張力が大きい溶媒である水を除去し、次いで、残る溶媒を取り除いて乾燥することにより、ゲルに亀裂が発生することが大幅に抑制されることを見出し、この知見に基づいて本発明をなしたものである。

 本発明は以下の含水湿潤ゲルの乾燥方法および含水湿潤ゲルの乾燥装置に関するものである。
(1)含水湿潤ゲルの乾燥方法であって、まず該含水湿潤ゲルから水を除去して含水湿潤ゲルの水含有量を減少させ、次いで、残余の溶媒を除去することにより湿潤ゲルを乾燥することを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(2)前記水の除去が、含水湿潤ゲルからの溶媒蒸気を含む気体を脱水剤と接触させることにより行われることを特徴とする上記(1)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(3)前記水の除去が、含水湿潤ゲルを収容する含水湿潤ゲル収容部の溶媒蒸気含有気体を脱水剤収容部に送り、溶媒蒸気含有気体を脱水剤と接触させた後、接触後の溶媒蒸気含有気体を再度含水湿潤ゲル収容部に移送することにより行われることを特徴とする上記(2)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(4)前記水の除去が、含水湿潤ゲルを収容する含水湿潤ゲル収容部内の溶媒蒸気を脱水剤収容部に開口された孔を通して脱水剤収容部に拡散させ、前記溶媒蒸気を脱水剤収容部内の脱水剤と接触させることにより行われることを特徴とする上記(2)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(5)脱水剤がモレキュラーシーブであることを特徴とする上記(2)~(4)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(6)前記含水湿潤ゲルが含水シリカゲルであることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(7)水以外の溶媒が、アルコール類、アミド類、炭化水素類、ケトン類、エステル類、エーテル類などの有機溶媒であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥方法。

(8)含水湿潤ゲル収容部、脱水剤収容部、および該含水湿潤ゲル収容部と脱水剤収容部とを結ぶ連通部を有することを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。

(9)前記連通部が連通管であり、該連通管に気体移送装置が設けられていることを特徴とする上記(8)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。

(10)前記連通部が含水湿潤ゲル収容部と脱水剤収容部の境界面に設けられた孔であることを特徴とする上記(8)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。

(11)加熱部がさらに設けられていることを特徴とする上記(8)~(10)に記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置。

(12)上記(8)~(11)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置において、前記脱水剤がモレキュラーシーブであることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。

(13)上記(8)~(12)のいずれかに記載の含水湿潤ゲルの乾燥装置において、前記含水湿潤ゲルが含水湿潤シリカゲルであることを特徴とする含水湿潤ゲルの乾燥装置。 

効果

1.本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、含水湿潤ゲルに手を加えることなく乾燥を行う物理的手法であるため、ゲルを構成する化合物の種類に関係することなく亀裂のない乾燥ゲルを得ることができる、汎用性の高い方法および装置である。

2.また、本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、含水湿潤ゲル中の水の含有量を低下させる方法として、再生の容易な脱水剤、例えばモレキュラーシーブ(ゼオライトなど)を用いることができることから、脱水剤を繰り返し使用でき、また単純な機構で簡単に含水湿潤ゲルの乾燥を行うことができる。

3.さらに本発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、水を除去する際の乾燥ゲルにおける亀裂の発生を抑制するために、特別な試薬や特別な気体を用いる必要がなく、また耐圧容器などの特別な容器や装置を用いる必要もないことから、乾燥ゲルを安価に製造することができる。

4.また発明の含水湿潤ゲルの乾燥方法および乾燥装置は、常圧で実施でき、耐圧容器などの特別な装置や超臨界状態を作り出す必要が無い。このため、湿潤ゲルの収容容積の制限がないことから、大きな湿潤ゲル乾燥装置を構成でき、特別な器具を用いることなく大きな乾燥ゲルを作製することが可能である。

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特許情報

特許5103540

特開2011-167686

JPB 005103540-000000