砂鉄を製鉄し玉鋼を作って鍛造して包丁を作ってみました

2022.05.12 By 市岡 元気

この連載テーマについて

  • この連載では、実験YouTuberとして活動する私市岡元気が、動画づくりの舞台裏や工夫・苦労について話をします。
  • 動画を作った背景や、具体的な科学的手法についても書いていきたいと思います。

 

皆さんこんにちは。市岡元気です。

今回は大型企画「包丁無かった・・・砂鉄集めて玉鋼から作った」というこちらの動画の裏側を紹介します。

 

 

ずっと前からやりたかった企画

 この動画ですが内容はタイトル通り「砂鉄を集めて包丁を作る」というものです。この動画、実は1年以上前からやりたいと思っていた企画で、以前より「鉄鉱石」から「包丁」を作りたい・・・と考えていました。それを縁があった室蘭工業大学の清水一道教授にご相談したところ「「砂鉄」から「ナイフ」ならできます。やりましょう!」とおっしゃってくださり実現しました。ちなみに清水会長は日本鋳造工学会の会長でもあり、半年ほど前に「600kgの鉄を溶かして等身大の銅像を作る」という企画でもご一緒させていただきました。こちらもとても大型企画ですのでまた機会ありましたら皆さんに詳しくお話しさせていただきたいと思います。

動画の概要

 ではまずは動画を見る時間が取れない方のためにテキストで簡単に動画の概要を説明しておきます。ちなみにこちらの概要は企画段階での企画書となりますので完成版の動画と多少異なります。その辺の違いもお楽しみいただければと思います。

オープニングは私のラボにて・・・

りんごでも剥こうかな・・・ もしくは 七草粥でも作ろうかな・・・
あれ?包丁が無い・・・ 

助手「前にバーナーで溶かしちゃったじゃないですか」
元気「よし!じゃあ包丁作りに行くか!」
助手「どうやって?」
元気「山で砂鉄とって」
助手「どこ行くんですか??」
元気「北海道!!」
助手「えーーーー??」

(元気先生飛行機で北海道へ)

室蘭工業大学へ到着・・・

元気「室蘭工業大学にきました! 以前お世話になった清水先生です!」
清水先生「よろしくお願いします!」
元気「協力いただいて包丁作っていこうと思います!」


砂浜で砂鉄を採る・・・まずは鉄の材料となる砂鉄を集めていきます! (磁石で砂鉄を採るシーン)さらに追加で貝を拾ってこれも使います。理由は後で説明します。

砂鉄でたたらをする・・・(大学へ戻ってきて) 砂鉄が集まりました!ではこれを熱して鉄にしていき、「たたら」をしていきましょう! たたらに炭を入れて火を入れる→砂鉄と貝を砕いた粉末を混ぜ、炭を交互に投入→何度も繰り返し8時間後→玉鋼完成!

玉鋼を叩いて包丁を鍛造・・・玉鋼ができました!これを叩いて包丁にしましょう! 叩いて包丁作成→できました! 清水会長ありがとうございます!これで七草粥が作れます!

東京のラボへ戻ってきて・・・包丁を使って七草粥を作って食べる

という流れでした。テキストにすると単純な工程に見えるかと思うのですがこの作業の中にも沢山の科学が含まれていて、テキストでは表せない、昔から受け継がれてきた先代の方々の知恵やコツが盛りだくさんで、もし私が1からやったとしたら何十年かかるのだろう?という途方もない過程が詰め込まれていました。本当にこの準備・撮影にご協力いただきました各先生方には大変感謝いたします。とても楽しく貴重な経験ができ、心に残る企画でした。よってこちらに記録としても残させていただきました。

たたらのポイント

 今回の実験で一番大きなポイントとなるのは「たたら製鉄」です。「たたら製鉄」とは原料の「砂鉄」を純度の高い「鉄」にする方法のことです。かなり簡単に説明すると砂鉄の主成分「酸化鉄(Fe3O4」に「炭素(C)」を混ぜて高温で熱すると、酸素は鉄よりも炭素と仲がいいので「一酸化炭素(C O)」や「二酸化炭素(C O2)」となって気化して無くなり鉄が残るという化学反応です。これは中学理科で習う「還元」という反応になります。

ただそれがそう単純なものではなく「砂鉄」の主成分は四酸化三鉄(Fe3O4)や酸化第二鉄(Fe2O3)なのですがその他にチタンや砂の成分のケイ酸(SiO2)なども含まれていたりします。なので「酸素(O2)」だけでなく「チタン(Ti)」や「ケイ酸(SiO2)」などいろいろな不純物も取り除かなくてはいけません。できた鉄の塊のことを「ケラ」、砂鉄の中に入っている不純物のことを「ノロ」と言うのですが、途中で何度も「ノロ」をたたらの外へ流し出して純度を高めていくのです。

より純度の高い「ケラ」を作り出すために、貝殻を砕いて炭酸カルシウムを混ぜます。これを混ぜることにより「ノロ」はより柔らかくなり流動性が増し流れやすくなるためです。ガラスの主成分珪砂(SiO2)に炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムを混ぜて、融点の低いソーダガラスを作ることができるのですが、それと同じような原理で低い温度で流動性を持たせる作用が炭酸カルシウムにはあるのでしょう。

その性質を利用して「砂鉄」に「木炭」や「貝殻」を混ぜて「玉鋼」を作り出したのです。動画には公開していない実際の作業の工程を清水会長が記録をしておいてくださったので、その貴重な資料も今回公開させていただきます。

 

一番のネックは鬼滅の刃

 これは裏話なのですが、実は今回清水会長に相談した際「もっと暖かくなったらやりましょう」と言われていました。理由はたたらは屋外でやるためです。今回この動画を撮影しようとしていたのは北海道の12月。極寒ですし、もし雪が降ってしまった場合作業するにはとても厳しく、また、積もってしまった場合砂鉄など見つけようがない・・・そうアドバイスを受けたのです。しかし、丁度この時期鬼滅の刃のアニメが放送されており、作中には「玉鋼」が出てくるため、この時期この動画を配信したらたくさんの方が興味を持って見てくれる可能性がありました。また、僕は昔から「玉鋼」から日本刀が作られるということに興味深さを抱いていました。可能性と興味、この二つに後押しされ、清水会長のアドバイスを振り切って強行することを決めたのです。多分なんとかなるだろうという根拠のない勘を頼りに。

奇跡的な天気のよさ

 室蘭へ到着したその日は吹雪でした・・・。空港から室蘭工業大学へ向かう高速は目の前がほとんど見えないほど吹雪いていました。夕方到着した時もものづくり基盤センターの前の駐車場は雪が降り積り、吹雪いていました。その後ホテルへ帰ってホテルの前の公園でも撮影しましたがそこでも吹雪・・・。なので清水会長から「明日の砂浜の撮影は無理だと思います。」と言われていました。ですがその時僕は「多分なんとかなるだろう」と思っていたので「雪積もっていてもいいので砂浜行って見ましょう!」と伝えました。

 次の日はなんと快晴でした!朝から砂浜へ砂鉄をとりに行きましたが雪1つない暖かさ。その後も暖かい日になりたたら製鉄も成功し本当に奇跡のような天候の良さでした。その次の週は猛吹雪で本当にその行った期間だけ晴れていたという天候に恵まれた撮影でした。

 僕の座右の銘は「人生楽しんだもの勝ち」「人生なるようになる」本当に運がいいみたいです。

タイトルが重要

 さて、編集も終わり、最終的にこの動画をできるだけ沢山の方にみてもらいたいと思いタイトルにも悩みました。僕はタイトルとサムネイルでその動画が沢山見られるかどうかの半分以上は決まってしまうと経験上思っているので、タイトルは超重要です。大切にしているのは17文字以内でその動画の中身が分かること。ただしあまり要素を詰め込みすぎると難しくなってしまうため、一般の方にもわかりやすくかつシンプルに。ということを考えて決めています。

 そこで様々なS N Sを使ってタイトルのアンケートを取りました。内容は

 

どのタイトルなら見たいですか?

・包丁無かったので買わずに砂鉄から作ってみた

・包丁無かったので砂鉄から玉鋼を作って包丁作ってみた

・砂鉄から包丁作ってみた

・その他

 

5.7万票入れていただき結果は

・包丁無かったので買わずに砂鉄から作ってみた 30%

・包丁無かったので砂鉄から玉鋼を作って包丁作ってみた 41%

・砂鉄から包丁作ってみた 25%

・その他 4%

 

ということで「包丁無かったので砂鉄から玉鋼を作って包丁作ってみた」というタイトルにしました。こちら4月現在で 392684回再生を記録しています。

ただこのブログを書いていて思ったのが、前述したように当時は鬼滅の刃のアニメが放送されていたため「玉鋼」というキーワードをタイトルに入れましたが、本来であれば一般的な方に分かりやすい、専門用語の入らない「包丁無かったので買わずに砂鉄から作ってみた」というタイトルがよいのでしょう。タイトルやサムネイルを変更したりするとまた視聴回数が増えることもあります。本日こちら変更したので、ぜひみなさん現在の再生回数をチェックして変化があるかをご確認ください。

実は3日で4本撮り

 ちなみにですが、室蘭へ行った3日間で実は6本の撮影を同時進行でしていました。「たたら製鉄で包丁作り」をしつつ合間をみて「鋳造でジンギスカン鍋作り」「水素自動車試乗」「清水会長との対談動画」「室蘭工業大学の学生へ向けてサイエンスコミュニケーションの講義」などをこなし、充実した北海道撮影旅行は幕を閉じました。

いつかやりたい夢企画

 ということで今回のブログ、いかがだったでしょうか?実はこの動画の続きということで最終的に「鉄鉱石」から「車」を作り出して走ったり、さらに「鉄鉱石」からロケットを作って宇宙へ・・・という壮大な夢の企画まで考えています。人間が想像できることは必ず実現できる。と海底2万マイルの作家として知られているジュール・ヴェルヌさんが言っていたそうです。いつかは絶対に実現させますので応援お願い致します。
また他の動画の裏側を知りたいというリクエストあればこちらまでお寄せください。