アミロイドβを創薬標的としたアルツハイマー病治療薬の開発

2023.02.13 By 昭和大学 基礎薬学講座医薬化学部門 教授  福原 潔

薬学

研究者情報

基礎薬学講座医薬化学部門 教授
福原 潔

 

関連キーワード

アルツハイマー病、アミロイドβ、アミロイド仮説、凝集阻害

シーズ内容や、それに関する特許などの情報について

アルツハイマー病 (AD) は、記憶を司る脳の海馬の周辺から萎縮が始まる進行性の認知症である。現在使われている AD治療薬は、症状改善効果はあるものの根本的な治療効果はない。AD の病理学的な特徴としては、アミロイドβペプチド (Aβ ) の凝集・蓄積に起因する老人斑の形成と神経細胞死が挙げられる。A β形成阻害療法、 A β生成阻害療法、アミロイドに対する免疫療法などの開発が行われているが、いまだ臨床応用には至っていない。 我々は AD の根本的治療薬を目指して、A βの凝集に起因する神経細胞毒性を創薬標的としたペプチド医薬品の開発を行なっている。 A βは分子間相互作用によって凝集反応が進行するが、最近、A βのアミノ酸配列のなかでどの部分が凝集に重要な役割を担っているのかが明らかになってきた。本研究では A βに対して特異的な親和性を有するアミノ酸配列に着目し、このペプチドを化学修飾することで強力な A β凝集阻害物質が開発できると考えた。 42 個のアミノ酸から成る A β 42 は、 40 個のアミノ酸から成る A β 40 と比べて高い凝集性と強力な神経細胞毒性を有している。そこで A β 42 に特徴的な C 末端部分のアミノ酸配列に、天然のフェノール性抗酸化物質を導入した化合物を合成した。本化合物は A βの凝集を強力に抑制するとともに、A βによる神経細胞内の酸化ストレスを軽減して細胞毒性を大きく低下させた。 現在、さらに強力な活性と生体内での安定性・脳への移行性の向上を目指して、Aβの凝集に関係する様々なペプチドに、同様の化学修飾やアミノ酸の修飾・変更を行った化合物の設計・合成を行なっている。

想定される産業への応用

〇アミロイドの蓄積病理は疾患発症の 10 年以上先んじて認められることから、A βの凝集を脳内で強力に抑制する物質を開発できれば、AD 治療薬だけでなく発症を根本的に抑制できる予防薬に結び付く可能性がある。また、Aβ 42 は凝集時に特徴的な三次元構造をとるが、近年この三次元構造の形成に重要な分子内アミノ酸の相互作用が明らかとなり、本研究ではこの相互作用に関わるアミノ酸配列を創薬標的とした凝集阻害物質の開発も行っている。
さらに、A βに対して高い親和性を有するペプチドを利用した A β切断活性化合物の開発を計画している。このように、A βのドラッガビリティに着目した本研究は、AD 治療薬における新しい概念をもたらすとともに AD 発症機構の解明にも繋がる可能性があり、創薬分野への波及効果は極めて高い。

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