[4-(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤

2023.02.13 By 昭和大学 鈴木 恵子

薬学

背景

 ビ ス ホ ス ホ ン 酸 ( BP, BPs) は 破 骨 細 胞 の 機 能 を 抑 制 す る こ と に よ る 強力
な 骨 吸 収 抑 制 作用 を 有 し 、 こ れ ま で に 、 骨 粗 鬆 症 、 高 カ ル シ ウ ム 血 症 、
Paget病 、 腫 瘍 性 骨 破 壊 、 等 の 骨吸収が亢進した様々な疾患に対する薬剤として広く
使用されている。

 ビスホスホン酸は側鎖の化学構造に基づき、(1)アルキル側鎖を有する化合物群、(
2)ハロゲン側鎖を有する化合物群、(3)アミノアルキル側鎖を有する化合物群、及び
、(4)環状側鎖を有する化合物群に大別される。ビスホスホン酸の骨吸収抑制活性等の
様々な薬理学的性質及びその作用機序は、これら側鎖の構造の違いにより大きく異なるこ
とが知られている。

 例 え ば 、 側 鎖 に 窒 素 原 子 を 有 す る ビ ス ホ ス  ネ ー ト 化 合 物 ( N‑BPs:
パ ミ ド ロ ネ ー ト 、アレンドロネート、リセドロネート、インカドロネート、ゾレドロ
ネート等)はメバロン酸経路におけるファネルシルピロリン酸合成酵素やゲラニルゲラニ
ルピロリン酸合成酵素を抑制して低分子Gタンパク質のプレニル化を阻害するのに対して
、側鎖に窒素原子を有し て い な い ビ ス ホ ス  ネ ー ト 化 合 物 ( non N‑BPs: エ
チ ド ロ ネ ー ト 、 ク ロ ド ロ ネ ー ト 、チ ル ド ロ ネ ー ト 等 ) は ピ ロ リ ン 酸 と の
構 造 類 似 性 が 高 く ATP( ア デ ノ シ ン 3リ ン 酸 ) 類 似化 合 物 を 形 成 す る こ と
が 知 ら れ て い る 。 又 、 N‑BPsは non N‑BPsに 比 べ て 100 ‑ 10,000倍 以上の骨吸収
抑制活性を有していることも知られている。

 側鎖に窒素原子を有していないビスホスネート化合物の一種である[4-(メチル
チオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸のリューマチ性関節炎への応用、抗炎症作用については非特
許文献1~4に、又、骨代謝疾患改善効果、インターロイキン-1産生・作用抑制効果、
抗酸化作用については、特許文献1及び非特許文献5に記載されている。更に、同化合物
が歯周疾患用薬剤として使用できることも知られている。しかしながら、上記化合物の骨
形成促進作用については従来知られていなかった。

 又、ビスホスホン酸誘導体の効果は可変であって、異なるビスホスホン酸を用いた場合
には反対の効果が生じたり、同一のビスホスホン酸を用いてもその濃度に応じて異なる生
物学的反応が生じることも当該技術分野では公知であった。

 一 方 、 骨 形 成 促 進 作 用 を 有 す る 物 質 と し て 、 こ れ ま で に BM P、 FGF、 I
GF、 及 び ス タ チ ン類が知られている。しかしながら、これらの物質は、骨形成と同時
に骨吸収を促進する(BM P) 、 適 用 部 位 に 炎 症 を 惹 起 す る ( BM P、 ス タ チ ン
類 ) 、 タ ン パ ク 性 因 子 で あ る た め に 生産 コ ス ト が 高 く 、 抗 原 性 が 問 題 と
な る ( BM P、 FGF、 IGF) 、 骨 に 対 す る 親 和 性 が 低 く 、 特別 な D D S ( Dru
g Delivery System) を 必 要 と す る ( BM P、 FGF、 IGF、 ス タ チ ン 類 ) な どの問
題があった。

課題

 本発明は上記に示した課題を解決することを目的とする。即ち、本発明の主な目的は、
化学合成による安価な生産が可能であって、優れた骨形成促進作用を有し、骨に対する親
和性が高く、特別なDDSを必要とせずに適用可能な化合物、並びに、該化合物を投与す
ることにより骨形成を促進し、骨の増生及び再生に応用する方法等を提供することである。

手段

本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を進め、[4-(メチルチオ)フェニルチ
オ]メタンビスホスホン酸がこれまで知られていなかった骨形成促進作用を有すること
を新たに見出し、これに基づき本発明を完成させた。

 即ち、本発明は以下に示す各態様に係るものである。
[態様1][(4-メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許
容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤。
[態様2][(4-メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸のナトリウム塩
を有効成分とする骨形成促進剤。
[態様3][4-(メチルチオ)フェニルチオ]-メタンビスホスホン酸・2ナトリウム
塩を有効成分とする骨形成促進剤。
[態様4]有効成分がリン酸カルシウムから成る徐放剤に吸着されてなる、態様1~3の
いずれか一項に記載の骨形成促進剤。
[態様5]リン酸カルシウムがα-トリカルシウムホスフェート、β-トリカルシウムホ
スフェート、オクタカルシウムホスフェート及びハイドロキシアパタイトから成る群から
選択される、態様4記載の骨形成促進剤。
[態様6]態様1~5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤を含み、骨形成促進作用を有
する医薬組成物。
[態様7]水溶液の形態である、態様6記載の医薬組成物。
[態様8]注射液の形態を有する、態様7に記載の医薬組成物。
[態様9]態様1~5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤、又は、態様6~8のいずれ
か一項に記載の医薬組成物を投与することから成る、骨形成促進方法。
[態様10]態様1~5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤、又は、態様6~8のいず
れか一項に記載の医薬組成物を部位に局所投与することから成る、骨形成促進方法。
[態様11]態様1~5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤、又は、態様6~8のいず
れか一項に記載の医薬組成物を部位に局所投与することから成る、該部位における骨形成
促進方法。
[態様12]歯槽骨部に局所投与することから成る、態様11記載の方法。

効果

 ビスホスホン酸の一種である[4-(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸
を又は薬学的に許容され得るその塩を作用させることによって、生体内の投与周辺部位にお
け る 骨 形 成 促 進 が 見 ら れ 、 骨 芽 細 胞 様 株 化 細 胞 に お い て ア ル カ リ ホ ス ファ
タ ー ゼ ( ALP)活性及び/又は骨形成関連遺伝子の発現を有意に上昇させ、又、骨器官培
養系においてコラーゲン合成促進、骨形成の促進、及び/又は骨基質産生の促進及び骨量の
増加を有意に誘起させることが出来た。

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特許情報

5655179

JPB 005655179-000000