マイクロカプセル化した免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法、マイクロカプセル化免疫隔離膜内臓器細胞~(以下省略)※

2023.02.13 By 昭和大学 青木 武士

医学

背景

 種々の疾患中、急性肝不全は依然として重篤な疾患として認知されているが、最近では
血漿交換と血液濾過透析の組み合わせによる機械的な血液浄化法に基づく人工肝補助療法
で劇症肝罹患者に対して高い救命率が報告されており、今後の治療成績に大きな期待が寄
せられている 。欧米ではさらなる肝機能補助を目指しハイブリッド型人工肝臓モジュール
が臨床応用され、肝移植へ橋渡し的な使用例として成功を収めている。我が国においても
画期的な人工肝臓モジュールの研究開発がなされているが 、ブタのレトロウイルスの感染
の問題、免疫学的反応の克服、リアクター内の肝細胞数の調整、細胞ソースの確保および
長期保存方法の確立など多くの問題があり、現在の急性肝不全の治療法を凌駕する新たな
臨床応用可能な人工肝の開発は依然としてなされていない。
 
 また、従来、動物生体臓器細胞については、細胞の損傷を防ぐため、急激な冷却を回避
する必要があり、高価なプログラミングフリーザーを用いてコンピュータ制御により1℃
~2℃/分の速度でゆっくりと冷却するというのが一般的な常識であった。急激に凍結さ
せると細胞懸濁溶媒が針状形状等に結晶化し形成された針状結晶の先端部が細胞を突き刺
し細胞を死に至らしめるという技術認識があった。そのため、従来技術では、肝細胞等を
マイクロカプセル化し、極低温冷蔵庫(一般的には、-80℃まで冷却が可能)中で冷却
速度を T熱電対等で測定し、電圧をプログラムプログラム調温することによって、冷却速
度を例えば0.1~10℃あるいは1~100℃/min.等に制御することが行われて
いる。また、上記従来の技術認識から上記極低温冷蔵庫での緩慢な冷却後例えば、-70
℃で24時間保存し、その後液体窒素にて冷凍するという冷却方法が提案されている。
 それに対して、本発明は、従来の常識方向に反して、細胞障害回避細胞中に浮遊した免
疫隔離膜内動物細胞の浮遊液を直ちに液体窒素(-196℃)によって凍結する免疫隔離
膜内動物生体細胞の凍結保存方法に関するものである。

課題

 よってハイブリッド型人工肝臓等のハイブリッド型人工臓器を考慮した場合、免疫学的
反応の回避が重要であるとともに、細胞機能を高次に維持しそれらを十分量長期保存可能
な状態にすることが望まれる。本発明者らはこれらの課題を克服するために、免疫隔離膜
内動物生体細胞の凍結保存方法の確立を目指しこれに成功した。

手段

 上記課題を解決するため、本発明は、動物生体(動物にはヒトは含まれない)あるいは
脳死状態のヒトからの臓器を消化処理して臓器細胞をばらして分離後、アルギン酸ナトリ
ウムとコラーゲンとを含む塩化ナトリウム溶液に懸濁し、このようにして得られた懸濁液
を用いて臓器細胞のマイクロカプセルを形成し、アルギネート/ポリ-L-リシン法によ
り臓器細胞のマイクロカプセルの外表面を覆って免疫隔離膜を形成して免疫隔離膜内臓器
細胞を得、免疫隔離膜内臓器細胞を細胞障害回避溶媒中に浮遊し、得られた浮遊液を直ち
に液体窒素にて凍結することからなる、免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法を提供する
ものである。

 動物生体(動物にはヒトは含まれない)からの臓器は動物生体から臓器を切り出すこと
によって得ることができる。脳死状態のヒトからの臓器は状態の良いものについては生体
移植に用いられるが、状態の悪いものは研究用に回すか、あるいは破棄される。現在では
、米国では脳死状態のヒトからの臓器であって状態の悪いものについて、研究用等のため
取引の対象で入手可能となっており、わが国にも輸入されるようになっている。

 本発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法においては、前記動物生体臓器はラ
ット肝臓とすることができ、脳死状態のヒトの臓器はヒトの肝臓とすることができる。本
発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法における動物生体細胞は特定の動物生体
細胞に限定されないが、急性肝不全は依然として重篤な疾患として認知されており、ハイ
ブリッドバイオ人工臓器モジュールとしてヒト肝臓(脳死状態のヒト由来のもの)あるい
はラット肝臓の用途が特に望まれるからである。

 本発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法においては、前記細胞障害回避溶媒
が、ウシ胎仔血清(FBS)、ジメチルスルオキシドを含むDMEMとすることができる
。細胞障害回避溶媒としては、凍結保存中の細胞障害を回避できるものであれば特に限定
されないが、このような細胞障害回避溶媒としてはウシ胎仔血清(FBS)、ジメチルス
ルオキシドを含むDMEMが特に適合する。ウシ胎仔血清(FBS)とジメチルスルオキ
シドの濃度としては、各々10%(DMEM培養液中における濃度です。例えば、DMS
Oを1cc、DMSOを1cc、DMEMを8cc)とすることができる。この場合に、
本発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法において特に適合すると考えられる。
なお、DMEMは、ダルベッコの変性イーグル培地(低濃度のグルコース、L-グルタミ
ン、25mMのHEPES、110mg/Lピルビン酸ナトリウム、ピリドキシンハイド
ロクロライド)を指し、文献 Cat. N0. 12320-032, Lot No. 1181791) (GIBC0)に記載さ
れ公知のものである。

効果

 本発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法においては、以下の効果が得られる

(1)免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法は、動物生体臓器あるいは脳死状態のヒトか
らの臓器を消化処理して臓器細胞を分離後、アルギン酸ナトリウムとコラーゲンとを含む
塩化ナトリウム溶液に懸濁し、このようにして得られた懸濁液を用いて臓器細胞のマイク
ロカプセルを形成し、アルギネート/ポリ-L-リシン法により臓器細胞のマイクロカプ
セルの外表面を覆い免疫隔離膜を形成し、得られた免疫隔離膜内臓器細胞を細胞障害回避
溶媒中に浮遊し、得られた浮遊液を直ちに液体窒素にて凍結することからなる。従って、
本発明では、液体窒素のように急冷すると細胞が損傷し死に至るという従来の常識あるい
は予想に反し、免疫隔離膜内臓器細胞が浮遊した細胞障害回避液を直ちに液体窒素にて凍
結することにより、従来の凍結保存方法と比較して簡便な操作でかつ廉価に免疫隔離膜内
臓器細胞を凍結保存することができる。
(2)後述するように、本発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法においては、
免疫隔離膜内臓器細胞を細胞機能を失活させることなく長時間にわたって凍結保存するこ
とができ、免疫隔離膜内臓器細胞を長期にわたって広範囲な臨床上応用をすることができ
る 。
(3)本発明に係る免疫隔離膜内臓器細胞の凍結保存方法においては、複雑な薬品群を使
用していないので、解凍した免疫隔離膜内臓器細胞を臨床上応用するのが容易であり臨床
上有害な影響を抑制することができる。
(4)凍結保存した免疫隔離膜内臓器細胞とラジアルフローバイオリアクターとを組み合
わせることによって、新たな体外肝臓補助システム等の体外内蔵補充システムとして機能
させることが期待できる。

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特許情報

7553612

JP2005304494A