足裏における感覚閾値の測定装置、 および測定方法

2023.01.05 By 昭和大学 佐藤 満

医学

背景

 人の感覚閾値の測定手法として、例えば、特許文献1の振動感覚閾値測定装置が提案さ
れている。そこでは、被験者の前腕を支持する支持台と、被験者の指先に振動刺激を与え
る加振器と、被験者によって操作される押ボタンスイッチと、加振器のロードセルと加速
度計からの出力信号に基づき閾値を算出し評価する制御部などで測定装置を構成している
。なお、特許文献1の振動感覚閾値測定装置は、JIS-B-7763に規定された測定方
法をベースにしており、被験者に与える振動刺激の大きさを、直前の下降法で求めた下降
法閾値に対して、所定の範囲でランダムに変化させる点に特徴がある。

 特許文献2には、人の皮膚感覚閾値測定を行なうための荷重測定装置が開示してある。
そこでは、被験者の測定部位を支持する支持台と、支持台に固定される支柱と、支柱に沿
って上下に移動できる可動テーブルと、可動テーブルに固定した微小加重変換器と、微小
加重変換器に設けられる測定針と、制御装置などで荷重測定装置を構成している。制御装
置は、可動テーブルを上下に駆動するステッピングモータの駆動状態を制御し、さらに、
微小加重変換器から出力される信号を処理する。

 特許文献2の荷重測定装置と同様に、人の皮膚の感覚認識を検査する装置が特許文献3
に開示されている。そこでは、左右一対のスライドブロックと、各ブロックの前端に固定
される撓みブロックと、各撓みブロックの前端に固定されるプローブと、スライドブロッ
クの左右間隔を調整する構造と、撓みブロックの歪みを検出する歪みゲージなどで検査装
置を構成している。皮膚の感覚認識を検査する場合には、一対のプローブの左右間隔を所
定状態にセットし、プローブの突端を所定の力で皮膚に押付けた状態で引きずって、被験
者に感覚認識があるか否かを検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許第4611453号公報(段落番号0025~0027、図1)
【特許文献2】特開平6-30904号公報(段落番号0016、図1)
【特許文献3】特表平5-503022号公報(第3頁左下欄18行、図2)

課題

 人の感覚閾値の従来の測定手法として、特許文献1~3の測定装置があるが、いずれも
、被験者の皮膚に外部刺激を与えたときの感覚閾値が、どの程度であるかを測定している
に過ぎない。そのため、測定結果は、例えば神経が損傷した場合の感覚閾値を評価するこ
とに利用できるものの、他に応用することが難しい。例えば本発明者は、人が立姿勢を保
持する機能を定量的に評価して転倒の可能性を予見し、あるいは転倒予防のための対策を
行うことを検討しているが、従来の測定装置で得られる感覚閾値のみでは、本発明者が企
図する立姿勢を保持する機能の定量的な評価には応用できない。

 一般的に、高齢者が立姿勢を保持するに必要な身体能力は、足や腰の筋力と、内耳の平
衡感覚、関節などの自己受容感覚、視覚、および足裏の外受容感覚などが深く関与してい
る。そのうち、視力の低下や、暗い環境下での視覚による姿勢調整能力の低下がある場合
には、地面や床面との接触面である足裏の感覚が、立姿勢を調整し保持することに大きく
関与することになる。従って、足裏の感覚を定量的に把握することができれば、立姿勢を
調整し保持する能力を知る指標となり、さらに、転倒の危険性を予見できることとなる。

 歩行時、あるいは動的な立位動作においては、身体の移動に伴って足裏にせん断応力が
加わるが、足裏に作用するせん断応力を感覚として明確に認識する能力は、姿勢調整を的
確に行なう上で必要不可欠となる。従って、足裏に作用するせん断応力による刺激(ずれ

刺激)に対する感覚閾値を把握することができれば、立姿勢を保持する能力を評価する指
標とすることができ、さらに、歩行ないし動的な立位動作を行う能力を評価する指標とす
ることができる。しかし、従来の感覚閾値の測定装置では、この種のずれ刺激に対する感
覚閾値を把握することができないのである。

 本発明者は、上記の知見に基づいて検討を重ねた結果、立姿勢を保持する機能の定量的
な評価には、足裏にずれ刺激を与えたときの感覚閾値が有効であることを見出した。さら
に、立姿勢を保持する機能の定量的な評価は、体重による圧力が足裏に加わった状態で、
先のずれ刺激を加えたときの感覚閾値が重要であることを見出し、本発明を提案するに至
ったものである。

 本発明の目的は、足裏にずれ刺激を与えたときの感覚閾値を簡便にしかも高い再現性で
測定できる足裏における感覚閾値の測定装置、および測定方法を提供することにある。
 
 本発明の目的は、医学的な専門知識や、生体計測に関する専門的な知識および技術を持
っていない測定者であっても、足裏にずれ刺激を与えたときの感覚閾値を簡便にしかも高
い再現性で測定できる足裏における感覚閾値の測定装置、および測定方法を提供すること
にある。

手段

 本発明に係る足裏における感覚閾値の測定装置は、基台1に固定されて足裏を支持する
足載台2と、足裏にずれ刺激を与えるプローブ4と、基台1に設けられて、プローブ4を
足裏に沿って2方向へ個別に移動操作するプローブ駆動構造3を備えている。さらに、ず
れ刺激を認識した被験者によって操作される入力スイッチ5と、プローブ駆動構造3の駆
動状態を制御する駆動制御部51と、入力スイッチ5の出力信号とプローブ4の移動状況
を記憶する記録部52とを備えていることを特徴とする。

 図1に示すように、プローブ駆動構造3は前後および左右へ往復スライド自在に案内支
持される第1テーブル11および第2テーブル12と、基台1に設けられて第1テーブル
11を往復操作する第1駆動構造13と、第1テーブル11に設けられて第2テーブル1
2を往復操作する第2駆動構造14と、第2テーブル12に設けたプローブ固定部40と
で構成する。プローブ固定部40に装着したプローブ4を第1テーブル11の移動方向と
、第2テーブル12の移動方向に個別に移動させて、足裏に前後のずれ刺激と左右のずれ
刺激を与える。

 図1に示すように、足載台2にプローブ4を収容する接触窓8を開口する。プローブ4
の上端に設けた接触部44を、接触窓8の上開口面と面一に配置する。

 第1駆動構造13を構成するモーター23と、第2駆動構造14を構成するモーター3
3のそれぞれを、振動を遮断する防振構造28・38を介してブラケット27・37に固
定する(図3参照)。

 第1駆動構造13を構成するモーター23と、第2駆動構造14を構成するモーター3
3のそれぞれを、プローブ駆動構造3の駆動状態を制御する制御装置6のスタートボタン
の操作で起動させて、一連のずれ刺激を自動的に与えて足裏の感覚閾値を測定する。

 本発明に係る足裏における感覚閾値の測定方法は、足載台2に載せた足裏にプローブ4
でずれ刺激を与える刺激付与過程と、被験者がずれ刺激を感じたときに入力スイッチ5を
操作する感覚検知過程と、入力スイッチ5の出力信号とプローブ4の移動状況を記録部5
2で記憶する記録過程とを含む。刺激付与過程において、プローブ4をプローブ駆動構造
3で足裏に沿って2方向へ個別に移動操作して足裏にずれ刺激を加えることを特徴とする。

 刺激付与過程において、プローブ4をプローブ駆動構造3で前後方向と左右方向とに個
別に移動させて、足裏に前後のずれ刺激と左右のずれ刺激を与える。

 刺激付与過程において、足載台2の上に被験者を起立させ、被験者の体重が足裏に作用
する状態でずれ刺激を与えて感覚閾値を測定する。

 刺激付与過程において、図6に示すように、足裏の母趾面E1と、母趾球面E2と、踵
面E3のそれぞれに、ずれ刺激を個別に与えて感覚閾値を測定する。

 足裏にずれ刺激を与える接触部44の物理的な性質が異なる複数種のプローブ4A・4
Bを用意しておき、刺激付与過程において、複数種のプローブ4A・4Bを択一的に使用
して、足裏に複数種の異質のずれ刺激を与えて感覚閾値を測定する。

効果

 本発明の感覚閾値の測定装置においては、被験者の足を足載台2に載せ、プローブ4を
プローブ駆動構造3で自動的に移動操作して足裏にずれ刺激を与え、被験者が操作する入
力スイッチ5の出力信号に基づき、ずれ刺激に対する感覚閾値を測定できるようにした。
このように、本発明に係る測定装置では、プローブ4をプローブ駆動構造3で自動的に移
動操作して足裏にずれ刺激を与えるので、被験者に対して設定されたとおりのずれ刺激を
、設定された手順で正確に与えることができる。従って、被験者に対するずれ刺激がばら
つくのを一掃して感覚閾値を高い再現性で測定できる。

 また、被験者の足裏を足載台2で支持し、制御装置6のスタートボタンを操作するだけ
で、駆動制御部51からの指令でプローブ4をプローブ駆動構造3で移動操作して、被験
者にずれ刺激を与えて足裏の感覚閾値を的確に測定できる。従って、足裏における感覚閾
値を測定するのに、医学的な専門知識や、生体計測に関する専門的な知識および技術を持
っていない測定者であっても、感覚閾値の測定を簡便に行なえるうえ、測定者の違いによ
る測定結果のばらつきを排除できる。

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特許情報

5419048

JP0005419048B9