化学修飾ナタデココの会合を基にしたタンパク質検出システム

2022.09.27 By 東洋大学

医学

技術概要

ナタデココの表面に各種の分子を自在かつ安定的に導入する方法を開発した。表面に導入した各種分子間の相互作用を、ナタデココの会合現象を介して、裸眼での目視にて評価することができた。

用途・応用

診断

背景

 多糖類のヒドロゲルは、寒天、こんにゃく、ナタデココなどの食品の形態で日常生活中に見出され、また、その優れた保水性、生体適合性、生分解性、無毒性、柔軟性、入手容易性、および低コスト性等の特性のために、医学、薬学、生体工学、微生物培養、植物栽培など多様な用途で使用され得る材料である。

 多糖類ヒドロゲルを構成する多糖類ネットワーク構造を化学的に修飾できれば、さらなる有用な性質を付与することができ、産業的な応用の幅がさらに広がり得る。

 非特許文献1は、バクテリアセルロースのヒドロゲルにポリエチレンイミンをグラフト化し、これにアダマンタンカルボン酸をイオン結合させることによって、アダマンチル基で化学修飾された多糖類ヒドロゲルを得たことを記載している。非特許文献1は、このアダマンタン修飾ヒドロゲルを、シクロデキストリン含有ポリアクリルアミドゲルと接着させ た と こ ろ 、 両 ゲ ル 間 で 最 大 7 kPa程 度 と い う 強 い 接 着 強 度 が 得 ら れ 、 し か も そ の 接 着 は簡単な液処理で任意に解体できたことを記載している。これは、多糖類ヒドロゲルの化学修飾により、易解体性の接着材料を開発した例である。

 発 明 者 ら は 、 多 糖 類 の 研 究 、 特 に 、 細 胞 同 士 の 相 互 作 用 に 関 わ る 糖 鎖 間 相 互 作 用 ( Carbohydrate‑Carbohydrate Interactions: CCIs) の 研 究 に 携 わ っ て き た 。 細 胞 膜 の 主 要 な 構成 成 分 で あ る ス フ ィ ン ゴ 糖 脂 質 ( GSLs) は 、 細 胞 膜 内 で 均 一 に 分 散 し て い る の で は な く 、互いに水平会合して、高度に密集したマイクロドメインを構築していることが、近年のこの分野の研究により明らかとなってきた。このマイクロドメインの表面には糖鎖が密集した「糖クラスター」が存在し、隣り合う細胞の糖クラスター同士が互いに糖鎖間相互作用す る こ と で 、 細 胞 同 士 の 接 着 が 誘 導 さ れ る 。 つ ま り 、 ヒ ト を 含 む 多 細 胞 生 物 に お い て 、 CCIs は 細 胞 間 接 着 を 引 き 起 こ す た め の 最 初 期 か つ 重 要 な 分 子 間 相 互 作 用 の 一 つ で あ る 。

 CCIs の 例 と し て 、 桑 実 胚 の コ ン パ ク シ ョ ン を 引 き 起 こ す LeX‑LeX間相互作用や、ガン細胞 の 転 移 を 引 き 起 こ す GM 3‑Gg3 間 相 互 作 用 な ど が 知 ら れ て い る 。 こ れ ら の 例 か ら わ か る よう に 、 CCIs の メ カ ニ ズ ム 解 明 は 、 多 細 胞 生 物 の 正 常 な 発 生 機 序 の 理 解 に 加 え 、 望 ま れ ない細胞接着により引き起こされる各種疾患の予防・治療薬の開発にも極めて重要である。しかしながら、どのような構造の糖鎖と糖鎖が相互作用するのか(糖鎖選択性)や、どのよ う な イ オ ン の 存 在 下 で CCIs が 誘 導 さ れ る の か ( イ オ ン 選 択 性 ) な ど を 含 め 、 CCIs の メカニズムは殆ど解明されていない。

 CCIs の メ カ ニ ズ ム 解 明 が 困 難 な 理 由 と し て 、 CCIs が 非 常 に 微 弱 な 相 互 作 用 で あ る こ とに加え、細胞膜が雑多な成分から構成された混合系であることや、マイクロドメインが細胞 表 面 で 絶 え ず 離 合 集 散 を 繰 り 返 し て い る こ と 、 GSLs の 発 現 量 が 時 々 刻 々 と 変 化 す る こと な ど が 挙 げ ら れ る 。 こ の よ う な 困 難 に 対 処 し 、 CCIs の メ カ ニ ズ ム の 詳 細 を 分 子 レ ベ ルで明らかにするために、人工モデル系を用いた研究が行われている。例えば非特許文献2は 、 糖 鎖 を 有 す る 自 己 集 積 単 分 子 膜 ( SAM) を 金 基 板 に 固 定 化 し 、 そ れ と 水 溶 液 中 に 存 在す る 糖 鎖 高 分 子 と の 間 の CCIs に よ る 接 着 を 、 表 面 プ ラ ズ モ ン 共 鳴 法 ( SPR) に よ っ て 検 出し て い る 。 ま た 、 非 特 許 文 献 3 お よ び 4 は 、 糖 鎖 を 固 定 化 し た 金 ナ ノ コ ロ イ ド ( GNP) を調 製 し 、 CCIs を 介 し た そ れ ら の 会 合 を 、 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 ( TEM) に よ っ て 評 価 し て い る。

 し か し こ れ ら 従 来 の モ デ ル 系 で は 、 ナ ノ サ イ ズ の 化 合 物 ( 糖 鎖 高 分 子 や 糖 修 飾 GNP) が用 い ら れ て い る た め 、 CCIsを 介 し た 接 着 ・ 会 合 を 評 価 す る た め に は SPRや TEM な ど の 高 価かつ技術的専門性の高い測定機器の使用が必須となる。

 可 視 サ イ ズ の 組 成 物 を 用 い て CCIsを 評 価 で き る 方 法 が あ れ ば 、 高 価 な 装 置 を 使 用 す る こと な く 迅 速 な CCIsの 解 析 が 可 能 と な り 、 こ の 分 野 の 研 究 の 進 展 に 大 き く 寄 与 で き る と 考 えら れ る 。 そ の よ う な 方 法 は 、 CCIsに 限 ら ず 、 生 物 学 的 事 象 等 に 関 わ る 比 較 的 弱 い 分 子 間 相互作用の評価に広く応用できると考えられる。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献1】菅原ら、セルロース学会第24回年次大会 講演要旨集 第113ペー
ジ、P063(2017年)
【 非 特 許 文 献 2 】 M atsuura et al., Glycoconjugate J. 2004, 21, 139‑148.
【 非 特 許 文 献 3 】 de la Fuente et al., J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 6192‑6197.
【 非 特 許 文 献 4 】 Reynolds et al., Langmuir 2006, 22, 1156‑1163.

課題

 多糖類ヒドロゲルの特性を活かしながらさらに有用な機能を付与するために、多糖類ヒドロゲルに様々な化学修飾を加えることのニーズが存在する。しかしながら、多糖類はそれ自体分子量が大きく複雑なネットワーク構造を有するため、化学反応の適切な進行およびヒドロゲルの特性維持などを考慮して実用的な修飾方法を見出すことは容易ではない。

 一 方 、 肉 眼 で 視 認 で き る ア ッ セ イ に よ っ て CCIsの よ う な 分 子 間 相 互 作 用 を 検 出 お よ び 測定できる方法に対するニーズが存在するが、そのような方法はこれまで十分に開発されてこなかった。

手段・効果

 本発明者は、多糖類ヒドロゲルにモジュール的に様々な化学修飾基を導入できる手法を開発し、さらに、その手法により作製された、ミリメートルスケール以上の大きさを有しうる修飾多糖類ヒドロゲルを用いて、分子間相互作用の検出、定量化、および可視化を行うことができることを見出した。

問い合わせ・詳細資料閲覧

特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。

本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。

特許情報

特願2019-58831

JPA 2020158617-000000