半径方向に定量シアした微分干渉計

2022.10.20 By 東京電機大学

機械工学

技術概要

本技術は、凸型アキシコンレンズと凹型アキシコンレンズとを、凸部と凹部とが対向するように所定の間隔で配した微分干渉計である。測定対象の半径方向微分を等密度で直接観察でき、間隔の変化で計測精度を変更でき、シア量が半径にかかわらず一定になるため、参照面を必要とせず、半径方向微分をリアルタイムで観測できる。

用途・応用

・ウェハの平面、レンズや透明材料(ガラス等)の形状測定
・球面の形状測定

背景

 干渉計は、物体の位置や姿勢、更には物体までの距離などの測定などの他に、表面粗さや平面形状の計測、微生物等の観察にも広く使用されている。また、微分干渉計による計測や観察に際しては、対物レンズの半径方向に沿ってシアする手法、つまり、平行に横ずれさせた2つの光を用いた手法による光学系が知られている。例えば対物レンズの半径方向に沿ってシアする光学系の従来技術として、下記非特許文献1~3に開示されたものが挙げられる。

 これら非特許文献1~3の光学系は相互に異なる技術であるものの、収束あるいは拡散している光の波面を分割して干渉信号を生成し、対物レンズの半径方向に沿って光を分けた差分干渉計を実現している。

 また、平面形状を測定する手法としては、フィゾー干渉計が代表的なものである。しかし、このフィゾー干渉計では、測定対象とは別に形状が既知の参照面が必要であり、この参照面の形状が未知であると、測定対象の形状を決定できない欠点を有していた。その解決法として、下記非特許文献4に開示された3枚合わせ法を用いる技術が従来技術として知られている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【 特 許 文 献 1 】 特 表 2019‑508721公 報
【 特 許 文 献 2 】 特 開 2002‑15987公 報
【 特 許 文 献 3 】 特 開 2005‑228846公 報
【非特許文献】
【非特許文献1】ラジアルシェア干渉計によるオンマシン測定:河野嗣男、松本大司など、 精 密 工 学 会 誌 ,65(3), 1999,pp.443- 446
【 非 特 許 文 献 2 】 M easurement of transient near‑infrared laser pulse wavefront with high precision by radial shearing interferometer: D.Liu, Y.Yang, J.W eng, X.Zhang, B.Chen, X.Qin, Optics Communications, 275,2007, pp.173- 178
【 非 特 許 文 献 3 】 A novel wavefront reconstruction algorithm based on interpolation coefficient matrix for radial shearing interferometry: C.Zhang, D.Li, M .Li, and K.E、 Optics and Lasers in Engineering, 97,2O17,pp.86‑92
【非特許文献4】三枚合わせ法による平面度絶対校正アルゴリズム:高辻利之、尾藤洋一、 大 澤 尊 光 、 古 谷 涼 秋 、 精 密 工 学 会 誌 ,72(11),2006,pp. 1368- 1373

課題

 しかし、非特許文献1~3による光学系では、対物レンズの半径に比例してシア量が変化するため、位置によってシア量が異なる結果として、半径が大きくなった場合、2つの光が大きく離れた距離の間での差分となり、得られる干渉信号の密度が粗になる等、被測定物の表面の凹凸の解釈が困難になる欠点を有していた。

 この一方、3枚合わせ法を用いた非特許文献4の技術では、同等の測定対象を3枚以上用意しなければならず、測定対象や参照面を入れ替えながら測定を繰り返す必要があり、この結果として、作業が煩雑であり測定に多大な時間や労力を要していた。

 他方、上記特許文献1~3も知られている。例えば特許文献1には、凹面と凸面が対向する形で配置された一対のアキシコンレンズにより基板に対する距離を検出する技術が開示されている。また、特許文献2には、凹円錐状の屈折面と凸円錐状の屈折面とが対向する形で配置された一対のプリズム部材に反射光が入射される技術が開示されている。さらに、特許文献3には、凹形状プリズムと凸形状プリズムとが対向する形で配置された一対のプリズムを介して光を対象物に照射する技術が開示されている。

 しかし、これら特許文献1~3であっても、シア量が対物レンズの半径に沿って変化するのに伴い、干渉信号の密度が変化する問題点は解消できなかった。他方、参照面を必要とせずに簡易且つ精密に測定する計測技術の必要性が高まっていた。
 本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、干渉信号の密度が一定であり、被測定物の表面における凹凸の解釈上の問題がないだけでなく、参照面を必要としない簡易で迅速な観測が可能な微分干渉計を提供することを目的とする。

手段

 上記課題を解決した請求項1記載の発明は、円錐状に一端側を突出した突出端とする凸型アキシコンレンズと、前記突出端の形状と合致する円錐状に一端側を窪ました凹端とすると共に、前記突出端に対して該凹端を対向して配置した凹型アキシコンレンズと、光束を被測定物に照射して該被測定物で反射させた反射光をこれら一対のアキシコンレンズに入射する光源と、を含む微分干渉計であって、これら一対のアキシコンレンズの屈折率が相互に同一であり、突出端と凹端との間の隙間が全体にわたって一定の大きさとされたことを特徴とする微分干渉計である。

 請求項1の発明のような微分干渉計によれば、一端側を円錐状に突出した突出端とする凸型アキシコンレンズと、この突出端の形状と合致する円錐状に一端側を窪ました凹端とした凹型アキシコンレンズとを、突出端に対してこの凹端を対向してこれらアキシコンレンズを配置した。さらに、これら一対のアキシコンレンズの屈折率は相互に同一であり、突出端と凹端との間の隙間が全体にわたって一定の大きさにされている。また、光源が光束を照射して被測定物の表面で反射させるのに伴い、被測定物で反射した反射光をこれら一対のアキシコンレンズに入射する。

 以上より、本請求項に係る微分干渉計は、突出端と凹端との間の隙間が一定の大きさで屈折率が相互に同一の一対のアキシコンレンズのいずれかの他端側から入射した反射光が、それぞれ円錐状に形成された突出端と凹端との間を通過するが、この際に何れの箇所を反射光が通過しても、一定のシア量で2つに別れてシアしこれら2つの光は相互に平行な平行光となるのに伴って干渉縞を生じさせる。

 したがって、シア量が従来技術のように対物レンズの半径により変化すること無く、干渉信号の密度が一定となり、被測定物の表面における凹凸の解釈上の問題が生じないようになる。また、従来技術のような参照面を当然に必要としないため、1回の測定で計測や観察ができ、測定時間を短縮できるのに伴い、簡易で迅速な観測も可能になる。

 請求項2の発明は、光を受光し光に含まれている干渉縞を把握可能な受光素子を有し、被測定物で反射した反射光が、凸型アキシコンレンズの他端側或いは凹型アキシコンレンズの他端側から入射され、前記突出端と前記凹端との間を介しつつ、これら各アキシコンレンズを経由してシア量を有した2つの光に分かれた状態とされ、これら2つの光を受光素子が受光する請求項1に記載の微分干渉計である。

 このように反射光が、いずれかのアキシコンレンズの他端側から入射され、突出端と凹端との間を介しつつ、これら各アキシコンレンズを経由するのに伴って、反射光が所定のシア量を有して2つの光に分かれる。この結果として、他方のアキシコンレンズの他端側に干渉縞が表示され、これを受光素子が受光する。このため、被測定物の表面における凹凸等を単に目視で確認するのでなく、受光素子で受光することで凹凸等を記録や解析等し易くなる。

 請求項3の発明は、突出端と凹端との間の隙間の大きさを調整する調整機構を有した請求項1または請求項2に記載の微分干渉計である。このように隙間の大きさを調整機構により調整することで、必要な解像度に合わせた測定精度が得られるようになる。

 請求項4の発明は、一対のアキシコンレンズのいずれか一方をこれらアキシコンレンズの中心軸に沿った方向に平行移動して突出端と凹端との間の隙間の大きさを調整しうる請求項1~3のいずれかに記載の微分干渉計である。このように突出端と凹端との間の隙間の大きさを調整することで、上記と同様に必要な解像度に合わせた測定精度が得られるようになる。

 請求項5の発明は、光源がコヒーレントな光束を発生するレーザー素子とされた請求項1~5のいずれかに記載の微分干渉計である。このように光源をコヒーレントな光束を発生するレーザー素子としたことで、被測定物の表面で反射した反射光も比較的観測し易い光となり、より精度の高い計測が可能となる。

効果

 本発明に係る微分干渉計によれば、干渉信号の密度が一定であり、被測定物の表面における凹凸の解釈上の問題が生じないだけでなく、参照面を必要としない簡易で迅速な観測が可能になるという優れた効果を奏する。

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特許情報

特願2019-114223

JPA 2021001739-000000