ロボットアーム、並びに、ロボットアーム用の外力検知伝達装置及び緩衝装置

2022.10.20 By 神奈川大学

機械工学

技術概要

ロボットアームへの外力を、無給電状態で緩衝できるアーム機構

用途・応用

介護用ロボット、ロボットアーム

背景

 従来のロボットアームは、様々な製品の製造工程における産業用ロボットとして利用されるものが多い。産業用ロボットは、通常、オートメーション化された製造ライン上の決められた箇所に固定配置されて稼働するため、そのロボットアームの稼働中に周囲の障害物と衝突するような事態が発生することは予定されていない。また、オートメーション化された製造ラインに配置される産業用ロボットの周囲には、人間が居ない場合が多く、又は居たとしても専門の作業員であるため、そのロボットアームの稼働中に人間が衝突するような事態も予定されていない。一方、近年、ロボットアームの利用分野が拡大し、人間の介護や医療の現場あるいは家庭内などにおいて、ロボットアームの積極的な利用が期待されている。このような利用場面では、ロボットアームに周囲の障害物や人間などが衝突するような事態が予想される。そのため、障害物や人間がロボットアームに衝突しても、その衝撃を緩和して、障害物や人間あるいはロボットアームが受けるダメージを軽減する技術が必要となる。

 特許文献1には、ダンパやばねなどの柔軟機構を関節部に備え、障害物への衝突時に当該障害物に対する衝突の衝撃を緩和させることを可能としたロボットアームが開示されている。
 また、特許文献2には、サーボ装置に接続されたサーボホーンの接合面上に円周状に配置された複数の円頭状凸部と連結部材の接合面上に設けられた複数の凹部とを連結させてサーボ装置の回転力が連結部材へ伝達されるように構成し、連結部材に接続されたアーム部を駆動できるロボットアームが開示されている。このロボットアームでは、弾性体の性質を有するワッシャの締め付けによってサーボホーンの接合面と連結部材の接合面とが近づく方向に付勢されており、これによりサーボホーン上の凸部と連結部材上の凹部との連結が維持されている。このロボットアームを備えたロボットが転倒事故を起こしてアーム部の移動可能方向(自由度方向)に大きな力が加わると、ワッシャの弾性変形によってサーボホーンの凸部が連結部材の凹部から抜け出し、連結が解除される。これにより、アーム部は、サーボ装置側から解放され、自由度方向への移動が自在となって緩衝機能が発揮される。 

課題

 前記特許文献1に開示されたロボットアームの柔軟機構は、無給電状態でも緩衝機能を 発揮できる構成であるため、電気的なトラブルで緩衝機能を発揮できないような事態が発 生しない。この点で、電気的な制御によって緩衝機能を実現する構成と比較して、信頼性 が高いという利点がある 。 し かしながら、このロボットアームは、衝突時の瞬間 的な衝撃については柔軟機構によって無給電状態で緩衝できるが、衝突後もアーム部が障 害物に向けて移動し続けたり、衝突後も障害物がアーム部を押し込んだりしたときのアー ム部と障害物との当接圧は無給電状態では軽減できない。この衝突後の当接圧軽減のため の構成には、電気的な制御が使用されている。詳しくは、関節部に設けた角度センサの検 出結果と柔軟機構の影響とを考慮して、衝突後に関節部の制御目標角度を衝突後に検出し た角度となるように修正し、衝突後の当接圧が理想的にはゼロになるように駆動制御を行 う。そのため、特許文献1に開示のロボットアームは、衝突時の瞬間的な衝撃だけでなく 衝突後の押し込み力の軽減も含めた広義の緩衝機能については、無給電状態では実現でき ておらず、この点で信頼性が低い。 
 
 更に、前記特許文献1に開示のロボットアームが有する柔軟機構は、アーム部を駆動す るための駆動力伝達経路内に配置されている。そのため、アーム部で重い物体を移動させ る場合など、一定以上の大きな駆動負荷が加わる状況下でロボットアームを稼働させると 、アーム部が障害物と衝突していなくても柔軟機構の緩衝機能が発揮されてしまう。この 場合、アーム部の移動位置が制御目標値から外れてしまい、アーム部の適切な駆動制御を 実現することが困難となる。そのため、このようなロボットアームの利用態様は、比較的 軽い物体を移動させるような駆動負荷が小さい状況下に限定されてしまう。一方、大きな 駆動負荷が加わる状況下でも適切な駆動制御を実現するために柔軟機構の柔軟性を低下さ せると、衝突時の緩衝機能が不十分となり、狙いの緩衝機能を得ることができなくなる。

 また、前記特許文献2に開示のロボットアームでは、自由度方向への衝撃を受けた時点 以降、アーム部がサーボ装置側から解放され、自由度方向への移動が自在となって緩衝機 能が発揮される。そのため、このロボットアームによれば、衝突時の瞬間的な衝撃の緩和 だけでなく衝突後の当接圧の軽減も含めた広義の緩衝機能(以下、単に「緩衝機能」とい うときは広義の緩衝機能を意味するものとする。)が無給電状態で実現でき、信頼性が高 い。しかしながら、このロボットアームも、アーム部で重い物体を移動させる場合など、 一定以上の大きな駆動負荷が加わる状況下でロボットアームを稼働させると、アーム部が 障害物と衝突していなくても、ワッシャの弾性変形によってサーボホーンの凸部が連結部 材の凹部から抜け出してしまい、ロボットアームの適切な駆動制御を実現することが困難 となる。そのため、このロボットアームの利用態様も、比較的軽い物体を移動させるよう な駆動負荷が小さい状況下に限定されてしまう。一方、大きな駆動負荷が加わる状況下で も適切な駆動制御を実現するためにワッシャの弾性を高めると、緩衝機能が不十分となり 、狙いの緩衝機能を得ることができなくなる。

 そこで、本発明者らは、障害物や人間などとの衝突によってアーム部に一定以上の外力が加わらない限り、大きな駆動負荷が加わる状況下でも緩衝機能が発揮されず、かつ、ひとたび当該外力が加わったときには無給電状態で緩衝機能が発揮される信頼性の高いロボットアームを開発した。このロボットアームは、1つの関節部を有する一自由度の関節機構に取り付けられたアーム部が当該関節機構を支点として当該自由度方向へ回動する構成となっている。このロボットアームの関節部は、当該自由度方向に沿って回転するアウターディスク(連結部)と、その内部で回転可能なインナーディスク(被連結部)とから構成されている。インナーディスクは、駆動源に接続されていて駆動源からの駆動力によって回転する。アウターディスクには、アーム部に接続されていて、アウターディスクとアーム部とは一体となって回転する。インナーディスク上には、径方向外側に付勢されたインナースライダー(動力伝達解除手段)が設けられており、その付勢方向先端部はその付勢によってインナーディスクの周縁部よりも径方向外方へ突出する。通常時、インナーディスク上のインナースライダーの付勢方向先端部は、アウターディスク上の周縁部の一部に設けられたスライダー挿入凹部に嵌り込んだ状態で維持されている。よって、通常時はインナーディスクとアウターディスクとの相対移動が禁止された状態となり、これらは一体回転するので、駆動源からの駆動力によってアーム部が自由度方向へ回動することができる。

 このロボットアームの自由度方向に面するアーム部側面には、その自由度方向から外力を受けると、その外力に押し込まれて変位する被衝突板が備わっている。この被衝突板が変位すると、リンク機構を介してインナーディスク上のインナースライダーが径方向内側に向けてスライドし、インナースライダーとアウターディスクとの連結が解除される。これにより、インナースライダーとアウターディスクとが相対移動自在となる。その結果、アーム部は、駆動源側から解放されて自由度方向への移動が自在となり、緩衝機能が発揮される。

 このロボットアームによれば、アーム部で重い物体を移動させる場合など、大きな駆動負荷が加わる状況下でロボットアームが稼働する場合でも、その駆動負荷はインナースライダーを径方向内側へスライドさせる作用を有しないので、インナーディスクとアウターディスクとの連結状態は維持される。一方、ひとたび障害物や人間との衝突が発生して、その外力によってアーム部の被衝突板が変位すると、インナーディスクとアウターディスクとの連結状態が解除され、緩衝機能が発揮される。しかも、この緩衝機能は電気的な制御を用いずに実現されており、無給電状態で緩衝機能が発揮される。

 しかしながら、このロボットアームは、被衝突板の板面に対する法線方向という一方向について、その方向の力成分を一定以上有する外力に対してしか、緩衝機能を発揮することができないという問題点があった。
 また、このロボットアームは、被衝突板の板面に対する法線方向という一方向についてしか、その方向の力成分を一定以上有する外力を検知できない点も問題点であった。

 本発明は、以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、2以上の方向のいずれについても、その方向の力成分を一定以上有する外力がアーム部へ加わったときに、その外力によるダメージを軽減する緩衝機能を無給電状態で発揮できる信頼性の高いロボットアーム、並びに、ロボットアーム用の外力検知伝達装置及び緩衝装置を提供することである。
 また、本発明は、2以上の方向のいずれについても、その方向の力成分を一定以上有する外力がアーム部へ加わったときに、その外力を検知できるロボットアーム用の外力検知伝達装置を提供することも目的とする。

手段

 請求項1の発明は、駆動源と、アーム部と、前記駆動源からの駆動力によって前記アーム部を所定の自由度方向へ移動させる関節機構と、前記アーム部に接続された連結部と該連結部に連結する被連結部とが相対移動自在な状態で連結され、かつ、該連結部と該被連結部との間の相対移動を禁止した動力伝達状態から該相対移動の禁止を解除する動力伝達解除状態へ無給電状態で切り替え可能な連結解除機構とを有し、前記動力伝達状態において前記駆動源からの駆動力により前記アーム部を前記所定の自由度方向へ移動させるロボットアームであって、前記連結解除機構は、前記連結部と前記被連結部とを2以上の相対移動方向へ相対移動自在に連結しており、前記2以上の相対移動方向のいずれについても、その方向の力成分を一定以上有する外力が前記アーム部へ加わったときに該外力を利用して無給電状態で作動する検知伝達部材を備えた外力検知伝達機構を有し、前記連結解除機構は、前記検知伝達部材の作動に連動して、前記アーム部に加わった外力が有する前記力成分に対応した相対移動方向への相対移動を禁止した動力伝達状態をその動力伝達解除状態へ切り替えることを特徴とするものである。
 このロボットアームにおいては、連結解除機構における連結部と被連結部とが相対移動可能な2以上の相対移動方向のいずれについても、その方向の力成分(以下「特定力成分」という。)を一定以上有する外力がアーム部へ加わった場合には、その外力を利用して検知伝達部材が無給電状態で移動し、その外力を受けたことを連結解除機構へ伝達することができる。そして、前記外力がアーム部に加わり、その外力によって検知伝達部材が移動すると、連結解除機構は、これに連動して、アーム部に加わった外力が有する特定力成分に対応した相対移動方向への相対移動を禁止した動力伝達状態を解除状態へ切り替える。これにより、当該相対移動方向についての連結部と被連結部との相対移動が自在な状態となり、アーム部に加わった外力の特定力成分を受け流すことができ、その外力によるダメージを軽減する緩衝機能が無給電状態で発揮できる。
 このように、本ロボットアームによれば、2以上の方向のいずれについても、その方向の力成分を一定以上有する外力がアーム部へ加わったときに、その外力を無給電状態で検知し、かつ、その外力によるダメージを軽減する緩衝機能を無給電状態で発揮することができる。 

効果

 本発明によれば、2以上の方向のいずれについても、その方向の力成分を一定以上有する外力がアーム部へ加わったときに、その外力によるダメージを軽減する緩衝機能を無給電状態で発揮できる信頼性の高いロボットアームを提供できるという優れた効果が得られる 。

問い合わせ・詳細資料閲覧

特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。

本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。

特許情報

特開2013-086259

JPA 2013086259-000000