らせん状ファイバ回折格子(HLPG)の開発とその応用

2022.08.17 By 静岡大学

機械工学

技術概要

らせん状ファイバ回折格子はファイバの軸に沿って周期的なスクリュータイプ(らせん型)の屈折率変調を持つデバイスであり、偏光器、ねじりセンサー、マイクロマニピュレータ、OAMモード変換器など様々な応用を期待できる。

用途・応用

軌道角運動量モード多重デバイス、広帯域光フィルター、全ファイバ系偏光器、円偏光変換器等

背景

 特許文献1、2及び非特許文献1~6は、ファイバグレーティングに関する技術を開示する。

ら せ ん 状 長 周 期 フ ァ イ バ グ レ ー テ ィ ン グ ( helical long period fiber grating :HLPG)は、周期的なスクリュータイプ(らせん型)の屈折率変調を持つ回折格子である。らせん状長周期ファイバグレーティングは、らせん特性に基づく光の偏光及び光の軌道角運動量 ( orbital angular momentum :OAM) モ ー ド を 制 御 可 能 で あ る 。 従 っ て 、 ら せ ん 状 長 周期ファイバグレーティングは、偏光器、偏光変換器、全ファイバ帯域阻止フィルタ、マイクロマニピュレータ、OAMモード変換器、捩じりセンサなどに利用することができる。

 らせん状長周期ファイバグレーティングの製造方法について、これまでにいくつかの報告がある。例えば、非特許文献1は、ねじり法を報告する。ねじり法は、特別な非対称断面を有するファイバを加熱によって形成する。しかし、この方法では、極めて高い温度を有する加熱器において、回折格子のピッチを精密に制御することが困難である。

 また、非特許文献2及び非特許文献3は、炭酸ガスレーザを用いる方法を報告する。この方法は、集光した炭酸ガスレーザをファイバに照射して、ファイバの表面にらせん状の形状を形成する。この方法では、集光レンズを通した炭酸ガスレーザを使用する。その結果、ファイバ表面には損傷が発生する。従って、グレーティングの再現性と高い歩留まり率とを得ることが困難である。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】米国特許第6707967号明細書
【特許文献2】特開2000-206337号公報
【非特許文献】
【非特許文献1】ブイ・アイ・コップ、ブイ・エム・チュリコフ、ジェイ・シンガー、エヌ ・ チ ャ オ 、 デ ィ ー ・ ニ ュ グ ロ シ ュ ル 及 び エ ー ・ ゼ ッ ト ・ ジ ェ ナ ッ ク ( V. I. Kopp, V. M. Churikov, J. Singer, N. Chao, D. Neugroschl, andA. Z. Genack) 、 「 キ ラ リ テ ィ ファ イ バ グ レ ー テ ィ ン グ 」 ( Chiral fiber gratings) 、 サ イ エ ン ス ( Science) 、 平 成 1 6年(2004)、305、p.74-p.75。
【 非 特 許 文 献 2 】 エ ス ・ オ ー 、 ケ ー ・ リ ー 、 ユ ー ・ ペ ッ ク 及 び ワ イ ・ チ ャ ン ( S. Oh, K.Lee, U. Paek, and Y. Chung) 、 「 炭 酸 ガ ス レ ー ザ を 用 い た ら せ ん 長 周 期 フ ァ イ バ グ レ ーテ ィ ン グ の 製 造 」 ( Fabricationof helical long‑period fiber gratings by use of a CO2 laser) 、 オ プ テ ィ ク ス ・ レ タ ー ズ ( Opt.Lett) 、 平 成 1 6 年 ( 2 0 0 4 ) 、 2 9 、 p.1464-p.1466。
【 非 特 許 文 献 3 】 ブ イ ・ イ ワ ノ フ ( V. Ivanov) 、 「 捩 じ り に よ る 長 周 期 フ ァ イ バ グ レ ーテ ィ ン グ を 有 す る シ ン グ ル モ ー ド フ ァ イ バ の 製 造 」 ( Fabrication of long‑period fibergratings by twisting a standardsingle‑mode fiber) 、 オ プ テ ィ ク ス ・ レ タ ー ズ ( Opt. Lett) 、 平 成 1 7 年 ( 2 0 0 5 ) 、 3 0 、 p . 3 2 9 0 - p . 3 2 9 2 。
【 非 特 許 文 献 4 】 ピ ー ・ ワ ン 及 び エ イ チ ・ リ ー ( P. W ang and H. Li) 、 「 薄 型 フ ァ イ バに 形 成 さ れ た ヘ リ カ ル 長 周 期 グ レ ー テ ィ ン グ と そ の 屈 折 率 セ ン サ へ の 応 用 」 ( Helical long‑period grating formed in a thinned fiber and itsapplication to refractometricsensor) 、 ア プ ラ イ ド ・ オ プ テ ィ ク ス ( Applied Optics) 、 平 成 2 8 年 ( 2 0 1 6 ) 、55、p.1430-p.1434。
【非特許文献5】エイチ・リー、ワイ・シェング、ワイ・リー、及びジェイ・イー・ローゼ ン バ ー グ ( H. Li, Y. Sheng, Y. Li, and J. E. Rothenberg) 、 「 高 チ ャ ネ ル 数 波 長 分散 補 償 用 の 位 相 を サ ン プ リ ン グ し た フ ァ イ バ ブ ラ ッ グ グ レ ー テ ィ ン グ 」 ( Phased‑only sampled fiber Bragg gratings for high‑channel‑countchromatic dispersion compensation) 、 ア イ ト リ プ ル イ ー ・ ジ ェ イ ・ ラ イ ト ウ エ ー ブ テ ク ノ ロ ジ ( IEEE J. Lightwave Technol) 、 平 成 1 5 年 ( 2 0 0 3 ) 、 2 1 、 p . 2 0 7 4 - p . 2 0 8 3 。
【非特許文献6】エイチ・リー、エム・リー、ワイ・シェング及びジェイ・イー・ローゼン バ ー グ ( H. Li, M . Li, Y. Sheng, and J. E. Rothenberg) 、 「 高 チ ャ ネ ル 数 の フ ァ イバ ブ ラ ッ グ グ レ ー テ ィ ン グ の 設 計 と 製 造 の 進 歩 」 ( Advances in the design and fabrication of high channel‑count fiberBragg gratings) 、 ア イ ト リ プ ル イ ー ・ ジ ェ イ ・ ラ イト ウ エ ー ブ テ ク ノ ロ ジ ( IEEE J. Lightwave Technol) 、 平 成 1 9 年 ( 2 0 0 7 ) 、 2 5、p.2739-p.2749。

課題

 これまでに提唱及び実証されているらせん状長周期ファイバグレーティングは、特定のクラッドモードに対して一つの損失ノッチを有する単一チャンネルである。そこで、当該技術分野では、複数の等間隔かつ等強度吸収波長帯を有する、いわゆる多チャンネルのらせん状長周期ファイバグレーティングを備えた光ファイバデバイスが望まれている。

 そこで、本発明では、多チャンネル化が可能な多チャンネルファイバグレーティング、多チャンネルファイバグレーティング製造装置及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法を提供することを目的とする。

手段

 本発明の一形態に係る多チャンネルファイバグレーティングは、互いに異なる2以上のチャンネルを有するグレーティング部を含むコアと、コアの周囲に形成されたクラッドと、を備え、グレーティング部では、コアの光軸を回転中心としてコアが捩じられている。

 ファイバグレーティングは、コアの光軸を回転中心としてコアが捩じられることにより形成されている。従って、ファイバグレーティングにおいて屈折率をらせん状に分布させることが可能になるので、多チャンネル化を実現する複雑な屈折率の分布を精度よく形成することが可能である。従って、ファイバグレーティングの多チャンネル化が達成できる。

 上記のグレーティング部は、光軸の方向に沿ってコアの屈折率がらせん状に変化する部分を含んでもよい。また、上記のグレーティング部では、光軸の方向に沿ってらせんのピッチが変化してもよいし、光軸の方向に沿ってらせんのピッチが一定であってもよい。この構成によれば、多チャンネル化を実現する複雑な屈折率の分布を精度よく形成することができる。

 上記のグレーティング部は、光軸の方向に沿って互いに異なる屈折率を有する領域が交互に設けられた部分をさらに含んでもよい。この構成によっても、多チャンネルを実現する複雑な屈折率の分布を精度よく形成することができる。

 本発明の別の形態に係るの多チャンネルファイバグレーティング製造装置は、筒状を呈し、コアとコアの周囲に形成されたクラッドとを有する光ファイバが挿通される加熱部と、光ファイバの光軸方向において、光ファイバに対する加熱部の相対的な位置を制御する位置制御部と、光ファイバに対して、光軸方向のまわりにおける所定方向に捩じり力を付与する捩じり力付与部と、位置制御部及び捩じり力付与部を制御する制御部と、を備え、制御部は、互いに異なる2以上のチャンネルを有するファイバグレーティングのための、光軸方向に沿ったコアにおける位置と位置における屈折率の周期と、の関係を示す情報を保持する情報保持部と、情報保持部に保持された情報に基づいて、捩じり力付与部及び位置制御部を制御するための信号を出力する信号出力部と、を有する。この製造装置によれば、上記の多チャンネルファイバグレーティングを確実かつ容易に製造することができる。

 本発明のさらに別の形態に係る多チャンネルファイバグレーティング製造方法は、位相サンプリング関数を用いて、コアとコアの周囲に形成されたクラッドとを有する光ファイバの光軸方向に沿った、コアにおける位置と位置における屈折率の周期を設定する第1ステップと、光軸の方向に沿ってコアの屈折率がらせん状に変化する部分を含むグレーティング部を光ファイバに形成する第2ステップと、を有し、第2ステップでは、第1ステップで得た光軸方向に沿ったコアの位置と位置における屈折率の周期に応じて、光ファイバを加熱しつつ、加熱される部分を光ファイバの光軸方向へ移動させながら、光ファイバを光軸のまわりに捩じる。この製造方法によれば、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。

 上記の製造方法において、第2ステップでは、光軸方向に沿ったコアの位置に対応する屈折率の周期を変化させるように、光ファイバを光軸方向へ移動させながら、光ファイバを光軸のまわりに捩じってもよい。この製造方法によっても、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。

 上記の製造方法において、グレーティング部に、光軸の方向に沿って互いに異なる屈折率を有する領域が交互に設けられた部分を形成する第3ステップをさらに含み、第2ステップは、グレーティング部に光軸の方向に沿ってらせんのピッチが第1の値である部分を形成する第1ピッチ形成ステップを含んでもよい。この製造方法によっても、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。

 上記の製造方法において、第2ステップは、グレーティング部に光軸の方向に沿ってらせんのピッチが第1の値とは異なる第2の値である部分を形成する第2ピッチ形成ステップをさらに含んでもよい。この製造方法によっても、多チャンネル化されたファイバグレーティングを容易に得ることができる。 

効果

 本発明によれば、多チャンネル化が可能な多チャンネルファイバグレーティング、多チャンネルファイバグレーティング製造装置及び多チャンネルファイバグレーティングの製造方法が提供される。

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特許情報

特願2018-158581

JPA 2020034613-000000