デジタル式マイクロ流体システムのための弾性表面波を用いた液滴の微小位置検出とその応用

2022.08.17 By 静岡大学

数理科学

技術概要

弾性表面波を用いた液滴搬送機能と計測機能を集積化したデジタル式マイクロ流体システム(DMFS)を提案。DMFS上での液滴位置だけでなく、液滴の物性や量の検知も可能であることが明らかになった。

用途・応用

液滴位置制御、液滴量計測、液滴を用いた音響特性測定

背景・課題

 従来から、弾性表面波を利用して液滴などの被搬送物質を搬送する弾性波デバイスがある。被搬送物質を搬送する弾性波デバイスは、例えば、下記特許文献1に示されるように、圧電効果により弾性表面波を発生する圧電基板に同弾性表面波を励振するための励振電極を配置して構成されている。そして、励振電極に高周波信号を印加することにより圧電基板上に弾性表面波を発生させて、圧電基板上に配置した被搬送物質を変位させる。なお、 弾 性 表 面 波 ( Surface Acoustic W ave: S A W ) と は 、 弾 性 体 の 表 面 を 伝 播 す る 縦 波 と横波からなる波である。また、圧電効果とは、水晶などの結晶に力または電場を加えると、応力または電場に応じた電圧または歪が生じる現象である。
【特許文献1】特開2006-248751号公報

 しかしながら、このような被搬送物質を搬送する弾性波デバイスにおいては、圧電基板上に被搬送物質を配置して搬送するため、被搬送物質の搬送ごとに被搬送物質が搬送される搬送経路を洗浄する必要がある。特に、被搬送物質が液体の場合においては、搬送経路上に搬送した被搬送物質の一部が残存し易いため、洗浄作業が煩雑である。このため、被搬送物質を弾性デバイスによって搬送する作業全体の効率が悪いという問題があった。また、圧電基板を劣化または損傷させる性質を有する被搬送物質の搬送が困難であり、実質的に被搬送物質の選択の幅が制限されるという問題あった。

 さらに、従来の弾性波デバイスにおいては、弾性表面波の伝播方向に沿って物理的に離れて存在する2つ以上の被搬送物質を同時に搬送することができない。これは、弾性表面波が伝播する上流側に位置する被搬送物質によって弾性表面波が減衰するためと考えられる。このため、弾性波デバイスの適用範囲・適応分野が制限されるという問題もあった。

 なお、搬送経路の洗浄作業の煩雑性を解消するため、下記特許文献2には、圧電基板上における被搬送物質の搬送経路上に同被搬送物質の物理量を検出するセンシング領域を設けるとともに、同搬送経路およびセンシング領域に洗浄液を供給するための励振電極を備えた弾性波デバイスが提案されている。しかしながら、搬送経路およびセンシング領域に洗浄液を通過させるのみでは充分な洗浄効果が発揮されないことがあるとともに、搬送経路およびセンシング領域に残存した洗浄液を除去する作業が必要であり、洗浄作業の煩雑性を解消する解決手法としては不十分である。
【特許文献2】特開2006-226942号公報

手段・効果

 本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、圧電基板の洗浄作業を不要として被搬送物質の搬送作業の効率を向上させることができるとともに、幅広い種類の被搬送物質を取り扱うことができ、かつ弾性表面波の伝播方向に沿って物理的に離れて存在する2つ以上の被搬送物質を同時に搬送可能とすることで弾性波デバイスの適用範囲・適応分野を拡大することができる弾性波デバイスを提供することにある。

 上記目的を達成するため、本発明の特徴は、圧電効果により弾性表面波を発生する圧電基板と、圧電基板の表面に弾性表面波を励振する励振電極と、励振電極により圧電基板の表面に発生した弾性表面波を用いて被搬送物質を搬送する弾性波デバイスにおいて、被搬送物質の搬送路を構成する搬送路プレートを、圧電基板の表面に発生した弾性表面波が伝播する伝播面に液層を介して配置したことにある。

 この場合、前記弾性波デバイスにおいて、前記液層は、例えば、数μm以上ないし数十μm以下の厚さで形成するとよい。また、前記液層は、揮発し難い非圧縮性流体、例えば、水で構成するとよい。この場合、非圧縮性流体とは、圧縮率が15℃の雰囲気中において概ね2×10 - 9 (1/N/m 2 )以下の流体である。なお、圧縮率とは体積歪/圧力(1/N/m 2 )であり、体積歪は圧縮による流体の体積変化/流体の圧縮前の体積である。また、水の圧縮率は、15℃で雰囲気中において5×10 - 1 0 (1/N/m 2 ) である。

 このように構成した本発明の特徴によれば、被搬送物質の搬送路を構成する搬送路プレートを弾性表面波が伝播する伝播面上に液層を介して配置している。これによれば、圧電基板の表面に発生させた弾性表面波は、液層を介して搬送路プレートに伝播して同搬送路プレート上の被搬送物質を変位させる。この場合、搬送路プレートは、液層の表面張力によって伝播面上に固定されているだけである。すなわち、伝播面上に対する搬送路プレートの脱着は極めて容易である。したがって、複数の被搬送物質を順次搬送する場合においては、被搬送物質の搬送ごとに新たな搬送路プレートに取り替えることによって新たな搬送路を容易に形成することができる。また、被搬送物質の特性に応じて搬送プレートを用意することができるため、従来のように圧電基板を劣化・損傷させる物質であっても搬送することができる。この結果、圧電基板の洗浄作業が不要となり被搬送物質の搬送作業の効率が向上するとともに、幅広い種類の被搬送物質を取り扱うことができる。

問い合わせ・詳細資料閲覧

特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。

本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。

特許情報

特願2009-531109

JPB 005283232-000000