アンモニア含有廃水の処理方法および処理装置

2024.08.08 By 東洋大学

環境

技術概要

アンモニアを高濃度に含有する廃水について、担体に硝化細菌を高濃度に付着増殖させることができ、常時安定した良好な処理水を得ることができる。

用途・応用

下水や産業排水処理

背景

 食品工場や化学工場などでは、低濃度から高濃度のアンモニアが排出される。これらの
アンモニア廃液は、水域の富栄養化や溶存酸素の低下などの原因となり、処理の必要が強
く望まれている。

 一般に、中高濃度アンモニア処理では生物処理が多く行われており、微生物を用いた硝
化反応と脱窒反応で窒素ガスに変換している。アンモニアは、硝化細菌による硝化反応により、亜硝酸や硝酸に酸化され、亜硝酸と硝酸は脱窒菌により脱窒され除去される。これらの反応においては硝化反応が律速となるため、硝化反応の効率化が検討されている。処理槽内の硝化細菌を高濃度に維持することで硝化反応の効率化が図れ、高濃度に維持するために、担体投入法による硝化細菌の高濃度化、用いる担体の生物膜法や包括固定化法の検討などが行われている。

 硝化反応における高速処理としては、例えば、下記の非特許文献1に硝化速度1.1k
g−N/m 3 /dayで処理できることが記載されている。また、非特許文献2には、1.2kg−N/(m 3 ・日)の亜硝酸化速度が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】

【非特許文献1】三宅將貴ら、外3名、硝化脱窒グラニュールの形成による高速窒素処理
、第47回日本水環境学会年会講演集、2013年、p.266
【非特許文献2】中村安宏、外9名、嫌気性アンモニア酸化を用いた汚泥脱水分離液から
の窒素除去、第47回日本水環境学会年会講演集、2013年、p.156

課題

近年、さらに早い速度で硝化処理を行うことが望まれている。しかしながら、担体の硝
化細菌保持量には限界があり、アンモニアの高負荷運転では、処理水が極端に悪化し、良
好な処理が全く進行しないのが現状である。非特許文献1、2に記載されている処理方法
においても、充分な処理速度は得られていなかった。このため、下水処理の設計では、硝
化速度0.2〜0.3kg−N/m 3 /day程度(担体充填率10%相当、硝化速度417mg−N/h/L−担体)であった。

 このように、従来の硝化処理では、硝化細菌の高濃度化に限界があり、アンモニアの高負荷運転においては、アンモニアが処理水に残存し、十分な処理性能が得られていなかっ
た 。

 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、硝化細菌を高濃度化すること
ができ、常時安定した良好な処理水を得ることができるアンモニア含有廃水の処理方法お
よび処理装置を提供することを目的とする。

手段

 本発明は前記目的を達成するために、アンモニア性窒素濃度が200mg/L以上10
00mg/L以下の液を用いて、硝化細菌を担体の存在下で馴養することにより、担体に
硝化細菌を付着、増殖させ固定化担体を形成し、固定化担体を有する廃水処理槽において
、硝化速度1.0kg−N/m 3 /day以上2.0kg−N/m 3 /day以下で廃水を処理するアンモニア含有廃水の処理方法を提供する。

 本発明によれば、アンモニア性窒素濃度を高濃度で含有する液を用いて、硝化細菌を担
体の存在下で馴養することで、担体に高活性な硝化細菌を高濃度に付着、増殖させること
ができ、硝化速度1.0〜2.0kg−N/m 3 /dayの高い硝化速度で、アンモニア含有廃水の処理を行うことができる。

 アンモニア性窒素濃度を高濃度で含有する液を用いて馴養を行うことにより、馴養に必
要な栄養成分である基質成分の拡散律速が低下し、硝化細菌を高濃度化することができる

 本発明の別の態様においては、固定化担体に付着、増殖させた硝化細菌の菌体量が、リ
アルタイムPCR法により測定した値で、2×10 1 0 コピー/g−担体以上であることが好ましい。

 この態様によれば、固定化担体に付着する菌体量をリアルタイムPCR法により測定し
た値で、2×10 1 0 コピー/g−担体以上としているので、高い硝化速度を得ることができる。

 本発明の別の態様においては、担体がポリビニルアルコールおよびその誘導体であるこ
とが好ましい。

 この態様によれば、担体にポリビニルアルコールおよびその誘導体を用いており、ポリ
ビニルアルコールおよびその誘導体は、多孔性であり硝化細菌を多く付着させることがで
きる。また、ポリビニルアルコールおよびその誘導体は、硝化細菌との親和性も良いので
、硝化細菌を高濃度化することができ、硝化速度を向上させることができる。

 本発明の別の態様においては、馴養前の担体が充填されている廃水処理槽に、馴養済み
の固定化担体を、担体と固定化担体の総量に対して、5%以上30%以下の割合で混合し
、廃水の処理の立ち上げを行うことが好ましい。

 この態様によれば、廃水処理の立ち上げ時において、馴養済みの担体と馴養前の担体を
混合して用いることで、立ち上げ時間を短縮することができる。

 本発明は前記目的を達成するために、アンモニア性窒素濃度が200mg/L以上10
00mg/L以下の液を用いて、硝化細菌を担体の存在下で馴養することにより、担体に
硝化細菌を付着、増殖させ固定化担体を形成する前処理槽と、前処理槽で形成した固定化
担体を担体総量の5%以上30%以下で含み、他の担体が馴養前の無生物担体である担体を投入し、硝化速度1.0kg−N/m 3 /day以上2.0kg−N/m 3 /day以下で処理する廃水処理槽と、を備えるアンモニア含有廃水の処理装置を提供する。

 本発明によれば、前処理槽において、アンモニア性窒素濃度が200mg/L以上10
00mg/L以下の高濃度でアンモニア性窒素を含有する液を用いて、硝化細菌を担体の
存在下で馴養することで、硝化細菌を担体に高濃度で付着増殖させることができる。そし
て、この担体を担体総量の5%以上30%以下の量で含む担体を用いて、硝化処理を行う
ことにより、処理装置の立ち上げ時の時間を短縮することができ、1.0kg−N/m 3
/day以上2.0kg−N/m 3 /day以下の硝化速度でアンモニア含有廃水の処理を行うことができる。

 本発明の別の態様においては、固定化担体に付着、増殖させた硝化細菌の担体の菌体量
が、リアルタイムPCR法により測定した値で、2×10 1 0 コピー/g−担体以上であることが好ましい。

 この態様によれば、担体に付着する菌体量をリアルタイムPCR法により測定した値で
、2×10 1 0 コピー/g−担体以上としているので、高い硝化速度を得ることができる。

 本発明の別の態様においては、担体がポリビニルアルコールおよびその誘導体であるこ
とが好ましい。

 この態様によれば、担体にポリビニルアルコールおよびその誘導体を用いており、ポリ
ビニルアルコールおよびその誘導体は、多孔性であり硝化細菌を多く付着させることがで
きるので、硝化速度を向上させることができる。

効果

本発明のアンモニア含有廃水の処理方法および処理装置によれば、アンモニアを高濃度
に含有する廃水について、担体に硝化細菌を高濃度に付着増殖させることができ、常時安
定した良好な処理水を得ることができる。

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特許情報

特許第6530196号

JPB 006530196-000000