光応答性酸素吸着材料

2022.10.20 By 東京電機大学

環境

技術概要

空気から酸素を濃縮する方法であり、本提案材料は、従来の酸素吸着材料に、可逆的な光応答性が付与されており、照射光には分子劣化を抑制できる低エネルギーの可視光を用いることができる。光照射の繰り返しにより低コストで酸素濃縮が可能である。

用途・応用

・化石燃料の燃焼における高効率化
・燃焼におけるNOxの低減化
・医療機関における安全な酸素利用

背景

 太陽電池や燃料電池などを利用した新しいエネルギーが開発されているが、これらの実用化及び普及を待つ間、引き続き化石燃料の利用を余儀なくされている。例えば火力発電では石油・石炭・天然ガス等の化石燃料を燃焼して電気エネルギーを得ているが、これによる大気汚染問題は依然として深刻である。この解決策の一つに気体中の酸素富化による燃焼効率の向上が挙げられる。酸素は大気中に21%含有され、この濃度を上げれば、被燃焼物を完全燃焼できる。

 酸素分子を可逆的に脱離・吸着できる酸素運搬体の例として、ヘモグロビン中のヘムのような、ポルフィリン-金属イオン錯体が挙げられる。例えば、特許文献1には、生体内で酸素を吸着及び脱離できるポルフィリン構造を有する金属錯体とアルブミンとの複合体の製造方法が提案されている。

 しかし、ポルフィリン-金属イオン錯体は、使用できる錯体の種類が限られ、また製造方法、使用方法が煩雑であった。

 ポ ル フ ィ リ ン 以 外 の 錯 体 で は 、 サ レ ー ン の コ バ ル ト 錯 体 で あ る N,N´ ビ ス (サ リ チ リ デ ン)‑エ チ レ ン ジ ア ミ ノ コ バ ル ト ( 以 下 、 サ ル コ ミ ン と い う 。 ) が 酸 素 分 子 を 可 逆 的 に 吸 着 及び脱離する。特に、サルコミン内のコバルトの第五配座に、ピリジン、イミダゾール等の適当な軸塩基性化合物が配位すると、酸素分子が空の第六配座へ結合することが知られている。この酸素分子の結合は特異的かつ可逆的であり、軸塩基の例えばピリジン内窒素等の非共有電子対に由来する塩基性が高いほど、結合能は増大する。

 例えば、サルコミンのモノピリジン化物を多孔性物質に担持させた酸素吸着分離剤、及びそれを用いた圧力変動式吸着分離法(PSA法)による空気中の酸素の吸着分離方法が、特許文献2で提案されている。
【特許文献1】特開2005-097290公報
【特許文献2】特開平5-007771号公報

課題

 しかし、上記のようなサルコミン系酸素吸着分離剤及び分離方法では、吸着分離剤を担持させる多孔性物質と、酸素分子を吸着分離剤から分離するための減圧装置とが必要であった。また、酸素分子の吸着及び脱離は酸素分圧による平衡反応を利用しているため、さらに効率と作業性の良い酸素分子の吸着及び脱離方法が望まれていた。

 そこで、本発明者は、光の照射に応答して可逆的に塩基性の強度が変化する光応答性の軸塩基性化合物に着目し、この化合物とサルコミンのような金属サレーン錯体との間の相互作用により、酸素分子の吸着及び脱離を制御できることを見出し、本発明に至った。 

手段

 すなわち、本発明は以下の(1)~(7)に関する。

(1) 軸塩基性配位子の有無により可逆的に酸素分子の吸着及び脱離の転移を示す金属サレーン錯体類(a)、及び前記金属サレーン錯体類と配位結合する軸塩基性部位を有し、光照射により可逆的に異性化を示し、前記配位結合に対する立体障害の度合いと、軸塩基性部位の塩基性との少なくとも一方が、前記異性化による異性体同士で異なり、かつ、軸塩基性部位の金属サレーン錯体類への配位能が、前記異性体同士で異なる光応答性化合物(b)を含むことを特徴とする光応答性酸素吸着材料。

(2) 軸塩基性部位がスチルバゾール構造である前記(1)記載の光応答性酸素吸着材料 。

(3) 金属サレーン錯体の中心金属がコバルトである前記(1)または(2)記載の光応答性酸素吸着材料。

(4) 光応答性化合物が、軸塩基性部位を含む側鎖と、炭素数2以上の有機基である側鎖とを有する共重合体である前記(1)~(3)のいずれか記載の光応答性酸素吸着材料。

(5) 炭素数2以上の有機基が炭素数4~15の脂肪族炭化水素基を含む前記(4)記載の光応答性酸素吸着材料。

(6) 前記共重合体が、アルキル(メタ)アクリレートと、スチルバゾール(メタ)アクリレートとの共重合体である前記(4)または(5)記載の光応答性酸素吸着材料。

(7) 前記(1)~(6)のいずれか記載の光応答性酸素吸着材料へ光照射して、光応答性化合物を軸塩基性部位の金属サレーン錯体類への配位能が高い異性体へ異性化する工程と、酸素分子を含有する酸素分子吸着用の環境下で、酸素分子を前記配位能が高い異性体へ異性化された吸着材料中の金属サレーン錯体類へ結合させる工程と、前記酸素分子が結合している光応答性酸素吸着材料を、酸素分子吸着用の環境から、酸素分子脱離用の環境へ移動する工程と前記酸素分子が結合している光応答性酸素吸着材料へ、酸素分子脱離用の環境下で光照射して軸塩基性部位の金属サレーン錯体類への配位能が低い異性体へ異性化して、酸素分子を金属サレーン錯体類から脱離させる工程とを含む酸素分子濃度の調整方法。

効果

 本発明の吸着材料は、光照射のみで空気中の酸素分子の吸着及び脱離を制御できるため、この吸着材料を用いる酸素吸着及び脱離システムを簡便化できる。例えば、肺疾患の患者が利用する、従来は重い酸素ボンベを引いて携帯していた酸素供給装置等の軽量化、小型化に有効に用いられる。

 また、本発明によれば、火力発電等において、空気中の酸素を富化した高酸素濃度下で化石燃料を燃焼できるため、不完全燃焼比率が減少する。これにより、従来と同等のエネルギーを少ない化石燃料で獲得できる。また使用燃料量が減るため、放出される二酸化炭素量や窒素酸化物NO x 量も減少する。 

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特許情報

特許第4780496号

JPB 004780496-000000