下水からのりん回収技術開発

2022.10.03 By 東洋大学

環境

技術概要

従来、下水や産業廃水に含まれるリンは、主に凝集剤添加による凝集処理で除去されています。リン蓄積菌を包括固定化した固定化微生物担体を用いたリン回収技術を検討し、優れたリン除去・回収能力を有する固体化微生物担体を開発しました。

用途・応用

下水や産業排水処理

背景

 下水や産業廃水中に含有されるリンを生物学的に除去する方法としては、リン蓄積菌を用いた嫌気・好気法(AO法)や循環式嫌気・無酸素・好気法(A 2 O法)などが知られている。即ち、嫌気性槽でリン蓄積菌からリンを放出させ、好気性槽においてリン蓄積菌が放出したリン量以上を過剰摂取することで処理水のリン濃度を減少させる方法である。リン蓄積菌を使用したリン除去方法としては、例えば特許文献1がある。

 しかし、リン蓄積菌を使用した現行のリン除去方法は、流入する廃水の水質(基質)や水量などの変動により、リン除去効率が不安定になり易いという問題がある。これにより、処理水のリン濃度を目標の3mg/L以下に安定除去することができない。

 このことから、リンを除去する廃水処理装置は、生物学的な除去方法に化学的な除去方法である金属塩凝集沈殿法を併用することで、安定的なリン除去を行っているのが現状である。

 下水処理の金属塩凝集沈殿法に使用される無機凝集剤には、一般的にポリ塩化アルミニウム(以下、PAC)が用いられており、リン除去率として80%以上を期待できる。

 しかし、化学的方法を併用することは、発生汚泥量が増加する問題、PACの添加により処理水のpHが放流基準以下になる問題、凝集能力を上げるために大きな反応槽が必要になる問題、過剰な凝集剤の添加によって硝化反応を阻害する問題、アルミ含有汚泥は農地への還元ができない問題等がある。

 このような背景から、化学的方法を併用しないでも、リン蓄積菌による生物学的除去のみで廃水中のリンを十分に除去できる新規な生物学的な廃水処理装置が要望されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開平11-57771号公報

課題

 しかしながら、生物学的にリンを除去する従来の廃水処理装置は、嫌気槽・好気槽、あるいは嫌気槽・無酸素槽・好気槽の間で廃水を流しながら硝化菌、脱窒菌、リン蓄積菌を含有する汚泥全体の代謝として、リンを除去する。即ち、廃水の本流ライン中でリンを除去するため、本流の水質(基質)変化や水量変動、汚泥中のリン蓄積菌濃度の変動、更には嫌気槽や無酸素槽への好気槽からの酸素の持ち込み等の諸要因によって、リン除去性能が不安定になる。

 したがって、生物学的な方法のみでリン除去を行う廃水処理装置が未だ確立されていないのが実情である。

 また、生物学的なリン除去を安定的に行うには、リン除去処理を行う廃水処理装置の槽内に、リン蓄積菌を如何に高濃度に維持できるかが重要になり、リン蓄積菌を包括固定化又は付着固定化することが考えられる。特に、包括固定化は付着固定化に比べて固定化材料に適切な濃度のリン蓄積菌を安定的に維持し易いことから一層好ましい。

 このことから、出願人は、生物学的な方法のみでリン除去を行うための対策の一つとして、リン蓄積菌を包括固定化することによりリン蓄積菌を高濃度化することを検討してきた 。

 しかしながら、リン蓄積菌群を包括固定化することによりポリリン酸蓄積菌群(PAOs)がグリコーゲン蓄積菌群(GAOs)に変化してしまい、リン除去活性が低下するという問題がある。

 したがって、リン蓄積菌群の包括固定化担体を使用してリン除去を行う場合、リン蓄積菌群を包括固定化した後もリン蓄積菌群がPAOs状態を維持することが重要になる。

 本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、生物学的なリン除去のみで効率的にリンを除去することができるので、処理水中のリン濃度を低濃度に安定維持することができ、合わせてリンの濃縮回収をも行うことができる廃水処理装置を提供することを目的とする。

 更に本発明は、リン蓄積菌を固定化材料に包括固定化した後も高いリン除去活性を維持できる包括固定化担体を提供することを目的とする。

手段

 前記目的を達成するために、本発明に係る廃水処理装置は、少なくともリンを含有する廃水を生物学的に処理する廃水処理装置において、前記廃水の本流ラインに設けられ、前記廃水と、リン蓄積菌がPAOs状態で包括固定化又は付着固定化されている固定化担体とを好気条件下で接触させて前記リン蓄積菌内に廃水中のリンを摂取することにより前記廃水からリンを除去する廃水処理槽と、前記本流ラインとは別に設けられ、前記リンを摂取した固定化担体と有機酸含有水とを接触させて前記リン蓄積菌から前記摂取したリンを放出させるリン放出槽と、前記廃水処理槽から前記固定化担体を前記リン放出槽に引き抜く担体引抜手段と、前記引き抜いた固定化担体を前記リン放出槽から前記廃水処理槽に戻す担体戻し手段と、前記リン放出槽におけるリン放出によって濃縮したリン濃縮液を前記リン放出槽から排出するリン濃縮液排出手段と、を備えたことを特徴とする。

 ここで廃水の本流ラインとは、目的の処理(例えばリン除去処理)を行うために廃水が流れる経路を言う。 

 従来の廃水処理装置のリン除去方法は、従来技術で述べたように、嫌気性槽でリン蓄積菌からリンを放出させ、好気性槽においてリン蓄積菌が放出したリン量以上を過剰摂取することで処理水のリン濃度を減少させる方法であり、リン蓄積菌が放出したリンは廃水の本流ライン中に放出される。

効果

 本発明の廃水処理装置によれば、生物学的なリン除去のみで効率的にリンを除去することができるので、処理水中のリン濃度を低濃度に安定維持することができ、合わせてリンの濃縮回収をも行うことができる。

 また、本発明の包括固定化担体によれば、リン蓄積菌を固定化材料に包括固定化した後も高いリン除去活性を維持できる。

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特許情報

特許第6245744号

JPB 006245744-000000