リン吸着用多孔質膜およびその製造方法

2022.09.16 By 中央大学

環境

技術概要

ポリマー100質量部に対して、ジルコニウム化合物が、ジルコニウム基準で2.5~12.5質量部添加されてなる。

用途・応用

環境

背景

 食糧需要の高まりと資源の乱獲により、近年、農作物の育成に不可欠とされているリン鉱石の枯渇が懸念されている。日本はリン資源のほぼ全量を輸入に頼っており、戦略資源としてその確保は喫緊の課題であるといえる。一方、輸入されたリンの約15%は下水等の生活排水に流入しており、これにより、川や海の富栄養化が引き起こされ、赤潮等の原因になっている。このような状況の中、今日、下水に含まれるリンを回収し、再利用する技術が注目を集めている。代表的なリン回収技術としては、ヒドロキシアパタイト(HAP)法やリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)法が挙げられる。

 しかしながら、HAP法は、反応速度が遅いため、巨大な反応層が必要になること、および、回収した結晶粒子のリン含有率が低いことから、その実用に応じては多大なコストを要することが課題になっている。また、MAP法は、回収したMAPがリンとアンモニアを等量ずつ含んでいるため、利用がリン酸アンモニウム系肥料の原料として用いる方法に限定されてしまい、これがMAP法の普及を妨げる原因となっている。

 近年、新しいリン吸着剤としてジルコニウムが注目されている。例えば、特許文献1では、ジルコニウムを多孔構造に成形したジルコニウムメゾ構造体を用いた、高効率でのリンの溶出を可能にしたリン回収方法およびリン回収システムが提案されている。具体的には、廃水に凝集剤を添加して生成した凝集汚泥からリンを溶出させるリン溶解槽と、溶出したリン溶液にジルコニウムメゾ構造体を添加して、このジルコニウム構造体にリンを吸着させるリン吸着反応槽と、ジルコニウムメゾ構造体からリンを溶出させるリン溶出槽と、リン酸カルシウムとして回収するリン回収槽とを有し、リン溶解槽では、凝集汚泥にクエン酸を添加してリンを溶出させる。また、ジルコニウムメゾ構造体を添加してこのジルコニウムメゾ構造体にリンを吸着させた後に、残ったクエン酸溶液を再び凝集汚泥に添加してリンを溶出させている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2009-61416号公報

課題

 特許文献1で提案されているジルコニウムメゾ構造体を用いたリンの回収方法は、HAP法やMAP法と比較して、低濃度域でリンの吸着性能に優れ、非常に高い吸着量、かつ、吸着速度を示す。しかしながら、ジルコニウムメゾ構造体は微粒子状のため、実使用時にはカラム化等の固定化が必要となる。また、ジルコニウムメゾ構造体を、下水のような有機性汚濁物質の多い廃水へ適用する場合、ジルコニウムメゾ構造体の孔部に汚濁物質が詰まってしまうため、リンの吸着能がすぐに低下してしまう。また、ジルコニウムメゾ構造体を再生利用するためには洗浄が必要であるが、洗浄の作業性が悪く、再生利用には不向きであるという問題を有している。

 そこで、本発明の目的は、透水性とリンの回収性に優れ、かつ、容易に再生利用が可能な多孔質膜およびその製造方法を提供することにある。

手段

 本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、粒子状のジルコニウム化合物を多孔質膜に分散させることによって、上記課題を解消できることを見出した。本発明者は、かかる知見を基にさらに鋭意検討した結果、ポリマーにジルコニウム化合物を分散させるにあたって、膜原液に添加剤および溶剤を加え、非溶媒誘起相分離法を用いて膜を形成することで、リンの吸着に優れた多孔質膜が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。

 すなわち、本発明のリン吸着用多孔質膜は、ジルコニウム化合物が添加されてなるポリマーからなるリン吸着用多孔質膜であって、前記ポリマー100質量部に対して、前記ジルコニウム化合物が、ジルコニウム基準で2.5~12.5質量部添加されてなることを特徴とするものである。

 本発明のリン吸着用多孔質膜においては、前記ポリマーは、耐塩基性を有する高分子重合体であることが好ましく、好適にはポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種である。

効果

 本発明によれば、透水性とリンの回収性に優れ、かつ、容易に再生利用が可能な多孔質膜およびその製造方法を提供することができる。

問い合わせ・詳細資料閲覧

特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。

本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。

特許情報

特許第6592306号

JPB 006592306-000000