超音波による温度ならびに構造物の欠陥の測定方法

2022.07.20 By 日本原子力研究開発機構

土木・建築

技術概要

液体中に挿入した一定長に切り欠きを入れた金属棒に超音波を伝搬させて、液体の温度分布ならびに構造物に生じた欠陥を同時に計測する方法です。

用途・応用

温度測定

背景

一般に、液体、固体を問わず、遠隔位置あるいは狭隘部の温度を測定する場合には、超音波センサによって液体あるいは固体中に超音波を伝播させ、その反射波の戻り時間を測定し、基準音速との対比を行い、速度の変化から液体の温度を測定する方法が用いられている。(特許文献1)
また、遠隔位置あるいは狭隘部の温度を測定する場合には、光ファイバなどを利用して、遠隔位置あるいは狭隘部での超音波センサによる超音波伝播を実現し、その反射波の戻り時間を測定し、基準音速との対比を行い、超音波の速度の変化から液体の温度を測定する方法が用いられている。(特許文献2)
さらに、超音波を利用した一般的な温度測定の原理は数多く紹介されているが、基本原理的な技術紹介であり、実用に即した測定方法とするためには種々の工夫が必要とされる。
(非特許文献1)
 しかしながら、これらは、超音波センサが正常に稼働できる比較的低温の環境に限られたものである。

 一方、福島第一原子力発電所の事故に見られるように、過酷事故における原子炉内の温度測定の重要度が再認識され、一方で原子炉内に挿架されるセンサは、過酷環境によって破損し、その機能を果たさなかった。主たる課題は、温度、放射線にあった。また、このような高温、高放射線環境下での測定要求は、原子炉施設の事故に限らず、再処理施設のガラス固化体処理プロセスなどに例示されるように、測定を不可あるいは困難にしていた。

 また、事故などに限らず、原子炉施設では安全上重要な機器や設備に対する健全性維持が要求される。ただ、これを実現するためには、原子炉施設の容器の蓋を開放するなどの必要が生じ、施設の稼働中に検査を行うことができず、やむを得ず施設を停止した時に検査を行うことで対処している。このやり方では、施設を停止するによって本来の稼働中の状況測定が困難となっていた。

 すなわち、高温、高放射線環境下においても環境温度の測定を可能とする測定方法の実現が要求されるようになってきた。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2013-178127号公報
【特許文献2】特開2009-210395号公報
【非特許文献】
【 非 特 許 文 献 1 】 「 超 音 波 を 用 い た 新 規 な 非 破 壊 ・ 非 接 触 モ ニ タ リ ン グ 手 法 」 長 岡 技 術科学大学工学部機械系 井原郁夫准教授

課題

 本発明は、従来技術で記載した問題点に鑑み、高温、高放射線環境下の過酷な環境においても精度良く環境温度の測定ができる技術を提供することを課題とする。

手段

 本発明の第1の発明は、測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用の測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、欠陥の測定方法であって、前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段と、からなる超音波による温度、欠陥の測定方法である。

 本発明の第2の発明は、第1の発明に付加して、前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒の複数位置に設けた超音波による温度、欠陥の測定方法である 。

 本発明の第3の発明は、第1乃至第2の発明に付加して、前記金属棒は、測定環境の高温ならびに、放射線環境下に耐える高融点材料である超音波による温度、欠陥の測定方法。

 本発明の第4の発明は、測定環境に、超音波の伝搬媒体となる金属棒に、測定用切込みを対にして設け、該金属棒を測定環境に挿入し、超音波センサによって前記金属棒に超音波を伝播させ、前記金属棒の測定用切込みならびに金属棒先端部からの反射波を解析することによって測定環境の温度と測定環境内にある構造物の欠陥の有無とを測定する超音波による温度、欠陥の測定装置であって、前記超音波センサから発信する超音波を制御する超音波発信制御手段と、超音波センサが受信した超音波を制御する超音波受信制御手段と、前記超音波発信制御手段の情報と前記超音波受信手段の情報から、前記測定環境の温度を解析する温度解析手段と、前記金属棒先端部から反射された超音波を基に前記金属先端部近傍の構造物の欠陥を探傷する探傷手段とからなる超音波による温度、欠陥の測定装置である。

 本発明の第5の発明は、第4の発明に付加して、前記対となる測定用切込みは、測定点の位置に合わせて前記金属棒の複数位置に設けた超音波による温度、欠陥の測定装置である 。

 本発明の第6の発明は、第4乃至第5の発明に付加して、前記金属棒は、測定環境の高温ならびに放射線環境下に耐える高融点材料である超音波による温度、欠陥の測定装置である。

効果

本発明によれば、
 まず、温度測定用の超音波センサが測定環境外あるいは遠隔に設けることができるため、測定環境の高温ならびに放射線環境下に耐える温度測定を実現できる。また、特別の環境温度対応の構造が不要であり、安価に製造することができる。

 また、測定環境内に挿入する超音波の伝搬媒体となる金属棒が、高温ならびに放射線環境下に耐える材料であるため、測定環境内の遠隔部ならびに狭隘部に挿入することができ、許容される測定範囲を大きく確保することができる。このため、何らかの災害などで破壊された測定環境構造物に測定段階で挿入することができる。一方、挿入する金属棒が剛体であり、予め測定環境内、例えば、測定環境構造物の建造時に予め金属棒を組み込んでおくことも可能である。

 また、温度測定が予め設けられた対となる測定用切込みの温度による間隔の変化を音速に置き換えて測定するものであり、温度測定精度を高度に達成、維持することができる。

 また、超音波は、超音波の伝播媒体である金属棒ならびに測定用切込みなどによる減衰が少ないため、複数の測定環境で、かつ、同時測定が可能となり、スピーデイな測定による測定効率を向上させることができる。

 一方、超音波の伝播媒体である金属棒の先端部からの反射波を解析することによって、金属棒の先端部近傍の欠陥を探傷することができ、温度測定と同時に欠陥の探傷を実現でき、測定効率を向上することができる。

 さらに、高温ならびに放射線環境下の測定環境に晒されるものが、超音波の伝搬媒体となる金属棒であることから、測定対象となる施設などが稼働中、停止中に係らず温度ならびに欠陥を探傷することができ、モニタリング装置として常時利用することも可能となる。

問い合わせ・詳細資料閲覧

特許情報詳細や資料のダウンロード等については無料会員登録後に閲覧していただけます。

本研究に関するご質問や、話を聞いてみたいなどご興味をお持ちになりましたら、是非お気軽に以下のフォームにお問い合わせください。

特許情報

特許第6217021号

JPA 2015102481-000000