表面増強ラマン分光用基板の応用③:食品中成分・添加物の迅速検出

2022.09.27 By 東洋大学

化学

技術概要

食品中等、夾雑物存在下における特定成分・添加物の迅速ラマン分析に適した一体化TLC-SERS 基板を提供。野菜ジュース等のサンプルを基板に滴下し、展開直後のin situ SERS 評価の全工程を5 分以内で完了。

用途・応用

ラマン分光、SERS、分析

背景

 近年、表面増強効果を利用した光による分析方法が注目を集めている。金属や誘電体、あるいは半導体の微粒子の物理化学的特性は、微粒子の厚さ、サイズ、形状等に大きく依存する。例えば、サイズ100nm以下の金、銀、プラチナ等のナノ粒子に光を照射すると、ナノ粒子近傍に近接場と呼ばれる局在した強力な光の場が発生する。測定対象である分子ないしは薄膜状のサンプルを貴金属ナノ粒子でコーティングされた基板に展開して光学的手法にて分析することより、信号が数十倍(蛍光法および赤外分光法)から100万倍(ラマン分光法)増大されることが知られている。

 光の表面増強効果を利用したデバイスとして、例えば、表面増強効果によって生じる表面 プ ラ ズ モ ン 共 鳴 ( S P R : S u r f a c e P l a s m o n R e s o n a n c e ) と 呼ばれる現象を利用したバイオセンサ等がある。

 これらの方法の要は、基板上に形成した固相化金属微粒子の作製にあり、適切なサイズ、厚さ、形状等の貴金属ナノ粒子を高密度かつ均一に形成することである。従来の作製方法としては、非特許文献1に示されるように、金属コロイドを基板上に固定する方法、真空蒸着された金属を加熱によりアイランド化する方法、リソグラフィーにより金属をパターニングする方法がある。また、特許文献1に示されるように、基板に吸着させたポリスチレン球上に、真空蒸着により、金属層を形成する方法が提案されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開平11-1703号公報
【非特許文献】
【 非 特 許 文 献 1 】 Ralph A. Tripp et al., nanotoday JUN‑AUG 2008 VOLUM E3 NUM BER3‑4" Novel nanostructures for SERS biosensing"

課題

 ところで、上記のように表面増強効果を利用した光学的手法で分析する場合には、使用する光の波長が分析方法によって異なる。したがって、固相化金属微粒子の組成、厚さ、サイズ、形状等を調整し、用いられる光の波長に合わせる必要がある。例えば、あるサンプルをラマン分光法と蛍光分光法の2種類の分光法により分析する場合には、使用する光の波長が異なるため、異なる金属微粒子が形成された分析用基板を2枚用意する必要がある 。

 この場合、液体もしくは粉末状の分析対象物(サンプル)が大量にある場合には問題ではないが、サンプル量が非常に微量な場合には、両方の分析方法による測定結果が十分なものではなくなる可能性がある。また、組織切片等のように一つのサンプルを2次元マッピングする場合には、どちらかの分析方法を選択しなければならなかった。 

手段

 上記目的を達成するために、本発明の分析用基板は、金属が付着した固相化微粒子が基板上に形成された表面増強効果を有する分析用基板であって、前記固相化微粒子が形成された領域は、光学的分析方法の種類に対応して 、 前 記 金 属 の 種 類 が 異 な る 領 域 の 同 一 の 組み 合 わ せ が 複 数 形 成 さ れ た 第 1 の 範 囲 、 前 記 金 属 の 付 着 量 が 異 な る 領 域 の 同 一 の 組 み 合 わせ が 複 数 形 成 さ れ た 第 2 の 範 囲 、 前 記 金 属 の 種 類 及 び 前 記 金 属 の 付 着 量 が 異 な る 領 域 の 同一 の 組 み 合 わ せ が 複 数 形 成 さ れ た 第 3 の 範 囲 の い ず れ か 1 つ の 範 囲 を 少 な く と も 含 む こ とを主要な特徴とする。

 また、本発明の分析用基板の製造方法は、基板上に微粒子を固相化する第1の工程と、表面増強効果を利用した光学的分析方法の種類に対応して、前記微粒子の上に付着させる金属量 又 は 金 属 の 種 類 を前記微粒子の固相化領域毎に変える第2の工程とを備え 、 前 記第 2 の 工 程 は 、 金 属 付 着 工 程 を 複 数 回 行 い 、 所 定 形 状 の 開 口 部 が 複 数 形 成 さ れ た マ ス ク を前 記 複 数 回 行 わ れ る 金 属 付 着 工 程 毎 に 配 置 位 置 を 変 え て 用 い る 工 程 又 は 前 記 マ ス ク を 前 記金 属 付 着 工 程 時 に 取 り 除 く 工 程 を 含 む ことを主要な特徴とする。

効果

 本発明によれば、微量又は唯一無二のサンプルを複数の異なる分析方法により分析することが可能となる。例えば、がん治療における腫瘍部位の診断において、摘出切片中の標的バイオマーカーと化学分析を同時に行うことができれば、より的確な判定が可能になる。

 また、腫瘍切片のように、二次元マッピングが必要な場合においては、同一領域を異なる分析方法で解析することによる情報の高精度化を行えることが有効となる。測定対象が微量でも貴重でもない場合においても、分析手法毎に試料を準備する必要がなくなり、測定の手間を省くことができる。さらに品質管理のような応用においては、分析のスループット向上につながり、全量検査も可能となる。

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特許情報

特許第5494954号

JPB 005494954-000000