表面増強ラマン分光用基板の応用①:固体表面の化学物質in situ検出

2022.09.27 By 東洋大学

化学

技術概要

固体表面に吸着した化質の迅速同定に有効な表面増強ラマン分光法(SERS)用デバイスを提供。分析したい表面にデバイスを押し付け、レーザー光を照射することにより吸着物質のin situ 同定が可能。

用途・応用

ラマン分光、SERS、分析

背景

 化学物質の同定に広く用いられている分析方法の一つとしてラマン分光法が挙げられる。収束されたレーザー光を光源として用いることにより微小領域の分析が可能であるが、散乱断面積、すなわち散乱光強度が極めて低いといった欠点を有する。そこで、貴金属ナノ 粒 子 に よ る 表 面 増 強 ラ マ ン 効 果 ( Surface Enhanced Raman Spectroscopy: SERS) を 用いた測定方法が研究されている。

 測定に際して、上記貴金属ナノ粒子は、液体中に懸濁されていたり基板に吸着されていたりするのが一般的である。分析用基板に吸着された貴金属ナノ粒子を用いて、表面増強ラマン効果による測定を行う場合は、例えば、図7(a・以下図は詳細資料に記載)に示されるように、基板52の表面に吸着された貴金属ナノ粒子51の領域に、測定対象となる分子53が懸濁された液体を滴下し、図7(c)に示されるように、分子53を貴金属ナノ粒子51上に乾固してから測定する。

 ここで、図7(b)は、図7(a)の50に示される領域を拡大したものであり、基板52の表面に貴金属ナノ粒子51が形成されている状態を示している。また、図7(d)に示されるように、測定対象の物質の粉末54を貴金属ナノ粒子51に接触させて測定する場合もある。

 一方、固体及び固体表面に吸着した物質の分子等の検体を測定する場合には、固体表面を削り、それを分析用基板上に形成された貴金属ナノ粒子上に散布して測定を行ったり、又は、貴金属ナノ粒子を固体表面の測定対象物質に散布して測定を行っていた。しかし、この方法では、貴金属ナノ粒子に接触しない検体が多く発生し、測定の精度が悪くなる。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【 非 特 許 文 献 1 】 G. Lu et al. Nanoparticle‑coated PDM S elastomers for enhancement of Raman scattering; Chem.Commun., 2011, 47, 8560‑8562

課題

 そこで、検体が吸着している固体の表面を貴金属ナノ粒子が吸着された分析用基板に直接押し付けて測定する方法が考えられる。例えば、図8(a)のように、固体65の凹凸のある表面に検体64が吸着している場合に、貴金属ナノ粒子61が形成された基板60を用いて表面増強ラマン分光測定を行う場合、図8(b)のように固体65の表面を基板60に直接押し付けても、固体65の表面に凹凸が存在するため、測定対象の検体64の一部70が貴金属ナノ粒子61に接触するのみで、すべての検体64が接触できるわけではなく、極限られた検体からの信号しか増強されない。

 また、例え、固体66の表面が数10nmのスケールで平滑であっても、図7(c)に示されるように、基板60が傾いて押し付けられれば、図7(b)の場合と同じ問題が発生し、極限られた検体からの信号しか増強されない。

 上記のような方法は、簡便な測定方法であると言えず、定性的なデータを取得することは 困 難 で あ る 。 一 方 、 非 特 許 文 献 1 に 示 さ れ る よ う に 、 チ ッ プ 増 強 ラ マ ン 分 光 法 ( Tip‑enhanced Raman Spectroscopy: TERS) に お い て は 、 貴 金 属 ナ ノ 粒 子 が 形 成 さ れ た P D M S等の弾性体を固体表面に取り付けて、固体表面のサンプルと貴金属ナノ粒子を接触させることで、信号を得る方法も提案されている。しかし、チップ増強ラマン分光法では、ナノレベルの金属の探針を用いて測定するため、信号強度は、探針が押し付ける力に依存し、凹凸を有する表面に対しては圧力を一定にする必要があるが、それは困難である。

 本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、凹凸を有する固体表面に吸着した物質のラマンスペクトルを定性的に測定することができるラマン分光測定法及びラマン分光測定器を提供することを目的とする。

手段

 上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、弾性体からなる基板の表面に貴金属ナノ粒子が形成されたラマン分光基板を用い、固体に吸着した被検体と前記貴金属ナノ粒子が対向するように前記ラマン分光基板を配置し、前記貴金属ナノ粒子が形成された領域全体に所定の圧力を加えて前記ラマン分光基板を前記固体に押し付けながら、又は、前記ラマン分光基板を前記固体に押し付けた後に表面ラマン増強分光測定を行うことを特徴とするラマン分光測定法である。

効果

 本発明によれば、弾性体からなる基板の表面に貴金属ナノ粒子が形成されたラマン分光基板を用いており、貴金属ナノ粒子が形成された領域全体に所定の圧力を加えてラマン分光基板を固体に押し付けながら、又は、ラマン分光基板を固体に押し付けた後に表面ラマン増強分光測定を行っているので、固体表面に凹凸が存在し、その凹凸部分に被検体が吸着していたとしても、貴金属ナノ粒子を大半の被検体に接触させることができ、精度の良い表面増強ラマン分光測定が行うことができ、定性的な測定を行うことができる。

 また、ラマン分光法が広い分野で利用されるようになる。増強効果による信号強度の増大と、前処理を必要としない簡便な方法を組み合わせる利点が大きい。特に、野外での測定対象物に対しては、測定対象の表面から微量サンプルを剥離してラボに持ち帰る必要がなくなり、その場での測定が可能となる。その他、法医学、製造現場で利用することができる。また、農作物表面の農薬量も畑や果樹園で直接かつ簡便に測定することが可能になり、食の安全に貢献することが期待できる。

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特許情報

特許第6368516号

JPB 006368516-000000