可塑性の固体電解質を用いた全固体型蓄電デバイスの開発

2022.08.03 By 上智大学

化学

技術概要

中間相の一種である柔粘性結晶相を示す有機イオン性化合物を用いて、従来の無機や高分子電解質にはない柔らかさを有する固体電解質を開発した。それら可塑性の固体電解質を用いて、安定性に優れる蓄電デバイスを作製した。

用途・応用

蓄電デバイスの開発

背景

 近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの電気化学デバイスの開発が盛んに行われている。

 モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。

 リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。

 リチウムイオン二次電池では、航続距離を伸ばすために、貯蔵するエネルギー量がさらに増大する傾向にある。そのため、従来のガソリン車と同等の商品性を兼ね備えたEVの実現には、高いエネルギー容量の保持が必要となり、そのため電池は高性能を備えつつ、高い技術水準で安全性を確保することも求められている。

 これまでのリチウムイオン二次電池では、電解質として主に液体電解質またはゲル電解質が用いられている。これらの電解質を用いる場合、電解質層に由来する電解液が漏れだすことにより、異なる単電池(セル)の電極間で短絡(液絡)が発生する虞がある。

 そこで、電解質を固体化することで、液漏れを防止することが試みられてきている。また、電解液自身に不燃性の特性を持たせることで、電気化学デバイス自体の安全性を向上する試みがなされている。固体化された電解質の例としては、ポリマー電解質、イオンゲル電解質、無機系電解質、柔粘性結晶等が例示される。

 ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシドなどエーテル系ポリマーを媒体とし、これにLi塩をドープすることでイオン伝導性を備えたポリマー電解質が代表的なものとして挙げられる。イオン伝導性は、ポリマー自身の分子運動性に相関することから、イオン伝導性の温度依存性が極めて強く、特にポリマー鎖のセグメント運動が抑制される低温条件では低いイオン伝導性が問題となる。

 イオンゲル電解質は、イオン液体をゲル化したものであり、イオン伝導性は良好であるものの、実用に適したイオン液体は少ないと言える。

 無機系電解質は、セラミックス電解質、ガラス電解質が例示され、セラミックス電解質は、NASICON型、ペロブスカイト型セラミックスが代表的である。しかしながら、活物質自身が固体であることから、活物質と電解質との界面の密着が困難であるという問題がある。ガラス電解質は、硫化リチウム(Li 2 S)やP 2 S 5 などが代表例となるが、硫黄を含む電解質が多く、水と接触すると硫化水素を発生する問題がある。

 上記で示した固体化された電解質の問題点を鑑み、近年、固体(結晶)と液体との中間の状態である柔粘性結晶を固体電解質として用いる検討がなされている。

 例えば、非特許文献1では、ピロリジニウムカチオンとビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド(TFSI)アニオンとから構成される柔粘性結晶がリチウムイオン二次電池用電解質として適用できることが開示されている。また、特許文献1では、第四級アンモニウムカチオンとトリフルオロメチルトリフルオロボレートアニオンとからなる柔粘性結晶を固体電解質として用いる電気化学デバイスが開示されている。さらに、特許文献2では、少なくとも、(A)窒素、酸素、燐及び硫黄原子の群から選ばれる原子を1~3個含有する電子供与性有機化合物、または(B)窒素、燐及び硫黄原子の群から選ばれる原子を少なくとも1個含有する環状構造を有するアニオン、のいずれか1種を含有する、イオン伝導性固体電解質が開示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許第4997610号公報
【特許文献2】特開2013-214510号公報
【非特許文献】
【非特許文献1】Douglas R. MacFarlane et al, Nature, Vol.402, 16, December, 1999, p792 

課題

 しかしながら、上記特許文献および非特許文献に記載の柔粘性結晶は、柔粘性結晶としの特性を発揮することができる温度領域が狭く、イオン伝導性に関しても実用性が求められるレベルと比較すると不十分であるという問題があった。

 そこで、本発明は、広い温度領域で柔粘性結晶としての特性を発揮することができ、かつ高いイオン伝導性を発揮することができる柔粘性結晶を含む固体電解質を提供することを目的とする。

手段

 本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、特定の構造を有する柔粘性結晶を含むイオン伝導性を有する固体電解質により、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。

効果

 本発明によれば、広い温度領域で柔粘性結晶としての特性を発揮することができ、かつ高いイオン伝導性を発揮することができる柔粘性結晶を含むイオン伝導性を有する固体電解質が提供される。

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