有機薄膜の成膜方法とそれを用いて形成した太陽電池

2022.08.03 By 埼玉大学

化学

技術概要

有機物の前駆体の液滴を帯電させて静電力で加速して基板に衝突させ有機物の初期段階薄膜を形成する工程を有する成膜方法により、塗膜しにくい有機物の均一な薄膜を形成することができ、太陽電池を簡単で、安全に製造することができる。

用途・応用

液体または他の流動性材料を表面に適用する方法

背景

 太陽電池は、光電変換層にシリコンを使用する「シリコン系太陽電池」、シリコン以外の無機化合物を使用する「無機化合物系太陽電池」、有機半導体を使用する「有機系太陽電池」に大別できる。下 記 特 許 文 献 1 に は 、 シ リ コ ン 単 結 晶 と (水 素 化 )ア モ ル フ ァ ス シ リ コ ン と の ヘ テ ロ 接 合を有するシリコン系太陽電池が記載されている。この太陽電池は、図8に示すように、N型の単結晶シリコン基板10の一方の面にI型アモルファスシリコン層11及びP型アモルファスシリコン層12が形成され、他方の面にI型アモルファスシリコン層11及びN型アモルファスシリコン層13が形成され、さらに、両面のアモルファスシリコン層の上に、透明導電膜14と集電極15とが形成されており、表裏対称構造を有している。
 
このアモルファスシリコン層は、プラズマCVDにより形成されている。

 また、下記特許文献2には、この種の太陽電池において、入射光を有効利用するため、図9に示すように、I/Pアモルファスシリコン層11、12やI/Nアモルファスシリコン層11、13が形成されるシリコン単結晶基板10の表面を凹凸形状(テクスチャ構造)に加工することが記載されている。テクスチャ構造は、「光閉じ込め効果」をもたらし、変換効率が向上する。

 シリコン単結晶とアモルファスシリコンとのヘテロ接合を備える太陽電池は、高い変換効率を有しており、広く利用されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2002-299658号公報
【特許文献2】特開2003-282905号公報

課題

 しかし、この種の太陽電池は、アモルファスシリコン層の形成にコストが掛かり、また、透明導電膜の形成時に有害物質対策が必要になる等の課題を有している。
 
 本発明者等は、これらの点を考慮して、単結晶シリコン基板と有機半導体薄膜とのヘテロ接合を有する太陽電池について検討してきた。有機半導体膜は、スピンコート法などで簡単、且つ、安全に形成できるためである。

 しかしながら、テクスチャ構造の結晶シリコン基板にスピンコート法で有機半導体膜を形成しても、高い変換効率の太陽電池は得られなかった。

 図10は、テクスチャ構造の結晶シリコン基板に、直接、スピンコート法で有機半導体薄膜を形成した太陽電池の電流-電圧特性を示している。横軸は開放電圧、縦軸は短絡電流を表している。また、図11は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結晶シリコン基板のテクスチャ構造を示している。このテクスチャ構造は、清浄化した結晶シリコン基板の表面をエッチングして形成されている。なお、ここでは、有機半導体として導電性が高 い P E D O T : P S S ( poly(3,4‑ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonae))を使用し、PEDOT:PSS水分散液を結晶シリコン基板上にスピンコートした後、乾燥のために120~150℃、10~30分間の加熱処理を施してPEDOT:PSS薄膜を形成している。

 図10の特性は、多くのシリコン系太陽電池の特性と比べて、かなり劣っている。

 この原因は、テクスチャの斜面に有機半導体膜が形成されていないことに在る。図12は、スピンコート法で有機半導体膜を形成したテクスチャ構造の結晶シリコン基板を真上から撮った顕微鏡写真である。有機半導体は、テクスチャ構造の谷の部分に溜まっており、テクスチャの斜面には膜が形成されていない。

 これは、結晶シリコン基板の表面の自然酸化膜を除去して清浄化すると、水素終端表面が形成されて、基板表面が疎水性となるためであり、有機半導体膜は、テクスチャの斜面に止まることができず、テクスチャ構造の谷の部分に凝集する。

 疎水性のシリコン基板表面では、基板表面が平坦であっても、スピンコートした有機半導体膜は凝集し、均一な膜は得られない。

 こうした知見から、単結晶シリコン基板と有機半導体薄膜とのヘテロ接合を有する太陽電池を得るためには、有機物薄膜の載り難い基板に対して均一な有機薄膜を形成する基礎技術が必要なことが明らかになった。

 本発明は、こうした事情に基づいて創案したものであり、基板に均一な有機薄膜を形成する成膜方法を提供し、また、その方法を用い た 太陽電池 の 製 造 方 法 を提供することを目的としている。

手段

 本発明は、基板上に有機物薄膜を形成する成膜方法であって、有機物の前躯体の液滴を帯電させて静電力で加速し、基板に衝突させて基板上に有機物の初期段階の薄膜を形成する第1の成膜ステップと、初期段階の薄膜が形成された基板に有機物の溶液を塗布して有機物の塗膜を形成する第2の成膜ステップと、を備えることを特徴とする。

 このように、二段階の成膜を行うことにより、基板上に均一な有機物薄膜を形成することができる。

効果

 本発明の成膜方法を用いれば、有機物の塗膜が載り難い基板の上にも、均一な有機物薄膜を形成することができる。

 また、この方法を太陽電池に適用することで、太陽電池を簡単、且つ、安全に製造することができる。

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特許情報

特許第5945379

JPB 005945379-000000